引用:アプリの虎
2017年7月18日、東京・千代田区 紀尾井タワーにてイベント「アプリの虎」が開催されました !
アプリ運用に積極的に取り組む3企業から、アプリリリースまでの企画や開発の苦労話、これまでに得た学びが語られました。
アパラボ編集部も現地に赴き取材した、今回のレポート記事。アプリ導入を検討段階や運用に悩む企業の皆様、必見です !
目次
成功する原因は様々。しかし、失敗する原因は絞られる。
イベント開始に先立ち、今回イベント主催企業によるイントロダクションが行われました。
モバイルアプリ解析ツール「Repro」を提供する、Repro株式会社平田代表からは「成功する原因は様々。しかし、失敗する原因は絞られる。」
とアプリ開発・運用でありがちな失敗例を3つ紹介されました。
▼アプリ開発・運用でありがちな失敗例
- アプリである必要性がない・・・webサイトで表現すれば十分なコンテンツ
- 既存の事業と提携していない・・・既存事業のPR等につながらない、立ちどころが不明確なコンテンツ
- 機能の詰め込みすぎ・・・企業側が良いと思ったものを全部盛り込み、ユーザー側のニーズは捉えられていないコンテンツ
これを踏まえ、早々に「本日の結論」として語られた、アプリ運用のポイントがコチラ!
▼アプリ運用 3つのポイント
- 本業とのシナジーを意識し、アプリの役割は1つに絞る →本来の事業とアプリを組み合わせることでより大きな成果を出す。そして、アプリが果たす役割は一つに限定することが大事。その役割としては①プロモーション ②セールス ③CRM この3つが適している。
- リリース時はとにかくシンプルに →初期に機能を盛り込みすぎず、今後のアップデートでユーザーニーズに沿った機能を追加すべき。
- 改善やアップデートの費用を確保する →予算担当者は初期開発費用だけでなく、今後の改善・アップデートにかかる費用も計算に入れておかなけらばならない。
『UNITED ARROWS』 社是「店はお客様のためにある」を実現するべく、UXに向き合う
株式会社ユナイテッドアローズの安藤氏からは「アプリで実現するカスタマーユーザーエクスペリエンス」について語られました。
ユナイテッドアローズには現在18のストアブランドが存在。統合型マーケティング・コミュニケーションという実店舗とECサイトの連携を試みており、その中でアプリを活用しているとのこと。
ポイント管理とEC、2つのアプリを統合
引用:UNITED ARROWS LTD. 公式アプリ
2016年8月にユナイテッドアローズでは、それまで2つ存在した公式アプリを1つに統合。
1つは、実店舗でのポイント付与・利用等のための会員サービスアプリ。もう1つは、オンラインストアアプリでした。
この統合はカスタマーエクスペリエンスの向上を目的に行われ、実店舗とECで別に管理・運用していた会員サービスを一元管理することに。
結果として、ダウンロード数は306%超・アクティブユーザーは370%も向上したとのこと !
パーソナライズ/カスタマイズ化の重要性
アプリ統合には、利便性の向上とともに「パーソナライズ化とカスタマイズ化」というコンセプトがあったそう。
パーソナライズ化とは、ユーザーの好みにあったコンテンツや機能を ”ユーザーに作業させることなく” 提供すること。
一方カスタマイズ化とは、”ユーザー自身”がレイアウトや機能を変更することで、自分の求めるものに近づけること。
「特にカスタマイズ化は、自分が作った料理が特別美味しいと感じるように、ユーザー自らの意思でのアウトプットになるため大きな価値を感じる」と安藤氏。ただし全ての機能をカスタマイズ化するのではなく、2つの使い分けをうまく考えることが重要であるそう。
アプリ運用で大事なこと
安藤氏はまとめとして、自身の経験から見えたアプリ運用での大事な5つのポイントを挙げました。
- 目的:アプリで達成したいこと
- 戦略と戦術:目的に対して、どう達成するかという具体的な方法
- 組織:誰がどの作業を行うか役割を明確化すること
- ロードマップ:最終形の共有・合意が必要。
- PDCA:ユーザーが一度アンインストールしたアプリが再インストールされる可能性は低いため、すぐに改善する必要がある。
『JALカード』 327万人の会員コミュニケーション拡大にアプリで取り組む
株式会社JALカードの鳥海氏からは、『JALカードアプリ』を通してのカード会員のコミュニケーションの拡大について語られました。
JALマイレージバンクにクレジット機能を追加したJALカードは、総会員数は327万人にのぼるとのこと。
利用額も大きく、日本のクレジットカード全体利用額における約6%の3兆円がJALカードによる支払だということです。
苦労の多かったアプリ開発
アプリ導入の構想が始まったのは2012年6月。当時はNFC決済(非接触型クレジット決済)を構想の中心に据えるも、思ったよりもNFCは普及せず転換を求められることに。
新構想として、JALカード特約店の検索性向上とクーポンでの送客、メルマガとは別チャネルであるプッシュ通知での情報発信が盛り込まれました。
アプリ開発・運用フェーズに入っても、利用規約の作成やアプリストアでの申請・更新等に四苦八苦。初めてのアプリへの取り組みは困難が多く立ちはだかったそうです。
ゲーム性のあるコンテンツで会員を惹きつける
引用:JALカードアプリ
JALカードアプリでは、ゲーム要素を盛り込んだお楽しみコンテンツも提供。
「JALカードスクラッチ」「JALカードフライト」の2種類があり、それぞれ毎日1回のマイルを獲得するチャンスが与えられます。
非会員のユーザーはプレイできず、会員を集める狙いでコンテンツ提供を行っているとのこと。コンテンツ利用者数は右肩上がりになっており、それに伴いアプリ利用者も増加しているそう。
位置情報を利用した機能改善
最近では、ある一定圏内に入ると通知を送るというジオフェンス機能をアプリに追加。
5大空港(羽田、伊丹、新千歳、福岡、那覇)で、特約店のおすすめ情報をプッシュ通知で提供しているとのこと。
また、インバウンド向けにマツモトキヨシ銀座店に近づくと同様にプッシュ通知を配信。その数は1日2000通にも及ぶそう。
「これからもこのようなGPS情報を機能に活かしていきたい。」と鳥海氏は語りました。
『LOHACO』 時代とユーザーを意識した、アプリ改善
株式会社アスクルからは土屋氏(写真左)、田中氏(写真右)の2人が登壇。「小売がアプリを作った3つのワケ」という主題のもと、個人向け通販サービスLOHACOの公式アプリについて語られました。
変化する時代の価値観を汲み取ったアプリ導入
引用:ロハコアプリ
LOHACOは2012年10月にサービスリリース。ユーザーは380万人を数え、公式アプリ「ロハコアプリ」のダウンロード数は160万を超えるとのこと。
アプリ導入に踏み切った理由は、2013-2014年頃から大手ECサイト「楽天市場」「amazon」がスマホアプリをリリースし、これからの購買活動はスマホへシフトすると見越したこと。
お買い物を楽しんでもらうことをコンセプトにリリースしたアプリ戦略は功を奏し、全体におけるアプリの売上比率は4倍に増加。利用者へのインタビューから割り出した購買スタイルを活かした、デザインやサービスの改善にも熱心に取り組んでいます。
アプリ事業は社内向けの施策も重要
「いざアプリ導入となっても、社内でのアプリ・モバイル化への意識が低いため苦労することが多かった。」と語った田中氏。
そこで、社内資料のスクリーンキャプチャをすべてスマートデバイス画面で共有するというルールの新設、外部の識者を呼んでの勉強会の開催といった施策を打ち、社内全体の意識改善に取り組んだそう。
その他にもダウンロード数をアップするための広告予算が確保できないという問題もあったが、アプリの位置づけを優良顧客に対する販売施策とすることで施策を転換していったそうです。
ユーザーとの距離を縮めるアプリを通したコミュニケーション
ロハコアプリでは、ユーザーのセグメント分けを細かく行いプッシュ通知を行っているそうです。
曜日や天気に合わせたメッセージを配信し、金曜日の「お疲れ様です。」というメッセージに癒されたとSNSで投稿するユーザーもいたとのこと。
「Happy on time」という一時間単位での時間指定配達サービスも提供しており、荷物配送の直前にプッシュ通知を行うことで不在率が20.0%から2.5%まで減少するという驚くべき改善を見せています。
まとめ
今回のイベント「アプリの虎」は、アプリ開発・運用について失敗談や苦労話も包み隠さず生の声が各社の担当者から聞けるという非常に貴重な機会でした。
今後も様々なイベントが開催されるそうなので、アプリ開発者だけでなく、これからアプリ導入を考える企業やグロースハック・マーケティングに興味ある方も是非参加してみてはいかがでしょうか。
イベント情報はこちらからご確認頂けます。