ZOZOTOWNを中心とするアパレルECの成長で「服をネットで買う」ことは、消費者にとっても自然な文化として定着しました。コロナ禍の影響などもあり「ECサイトの立ち上げ」を考えているアパレル店舗・企業のオーナーさん、担当者さんも多く見えるでしょう。
そのようにアパレルECの立ち上げを考えたとき、「どんな方法があるのか」「どの方法がウチには一番合っているのか」という点が気になるかと思います。今回はその疑問にお答えするため、下記の2点を解説します。
- アパレルでECサイトを構築する5つの方法
- それぞれの選択肢の特徴(どのような企業・店舗に向いているか)
まず方法を絞り込むことで、具体的に利用するサービスの比較も、しやすくなるでしょう。
目次
アパレルのECサイトを立ち上げる方法は5通り
アパレルのECサイト構築の方法は、大別して下の5種類です。簡単なものから順番に並べています。
種類 | 簡単さ | 自由度 |
---|---|---|
ECモール | ⭐⭐⭐⭐⭐ | ⭐ |
インスタントEC | ⭐⭐⭐⭐ | ⭐⭐ |
ECカート | ⭐⭐⭐ | ⭐⭐⭐ |
オープンソースCMS | ⭐⭐ | ⭐⭐⭐⭐ |
フルスクラッチ | ⭐ | ⭐⭐⭐⭐⭐ |
見てのとおり、簡単さと自由度のどちらをとるかという選択になります。まず「簡単さ」について、それぞれの特性をまとめると下のとおりです。
種類 | 特性 |
---|---|
ECモール | 出品するだけ |
インスタントEC | 簡単にショップをデザインできる |
ECカート | 操作はインスタントECと同じ。有料テンプレートの価格が高い |
オープンソースCMS | ワードプレスなどのカスタマイズが必要 |
フルスクラッチ | ワードプレスのようなシステムもなく、完全にゼロから制作する |
続いて「自由度」について特性をまとめると、下のようになります。
種類 | 特性 |
---|---|
ECモール | まったくデザインできない |
インスタントEC | 主にテンプレートの枠組みの中で制作する |
ECカート | インスタントECと同じだが、テンプレートのレベルが高い |
オープンソースCMS | 技術さえあれば、ほとんどのことができる |
フルスクラッチ | CMSではどうしてもできないこと、逆に複雑になる高度な作業もすべてできる |
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
①ECモール:ZOZOやヤフーなどへの出品
出典:ZOZOTOWN
ECモールとは、Web上の仮想的な商店街のことです。「Amazonや楽天」というと、わかりやすいでしょう。アパレル業界では、Yahoo!ショッピングやZOZOTOWNがよく用いられます。
ECモールは、もっとも始めやすいものです。サービスによっては即日スタートもできます。集客の必要もなく、配送やカスタマー対応などのサポートも受けられます。
逆にデメリットとなるのは、手数料がかかること。サービス全体の利用料だけでなく、商品を1個販売するごとに手数料を取られるという形式です。
これに加えて、モールの規約に従う必要がある、デザインが制限されるためブランディングに向かないなどのデメリットもあります。
手数料はどのくらいかかるのか
Yahoo!ショッピングの場合、大体100万円売ると5.5万円程度の手数料がかかります。料率にすると5%前後というイメージです(あくまでおおよその目安です)。
上記のとおり、基本的な設定でシミュレーションをした場合、100万円の売上で、税込み58,701円という手数料になりました。「5~6%程度なら安い」と感じる方もいるかもしれません。
なお、ZOZOの販売手数料は公表されていません。しかし、一般的には20~40%とされています。
Yahoo!ショッピングの手数料と比較すると高い設定です。しかし、後述するようにブルガリなどのハイブランドも出店しているため、ブランドイメージは保ちやすくなります。
ブランディングに向かない
ECモールには、基本的にハイブランドが出品しません。例外はZOZOで、上の画像のLOEWE(ロエベ)を含み、下記のハイブランドが出店しています。
- ロエベ
- ステラ マッカートニー
- マルニ
- ブルガリ(1カ月限定)
このような出店はあるものの、ブルガリが1カ月限定となっているように、ブランドの知名度が高いほど、ECモールには出品したがらないことが見てとれるでしょう。上記のブランドがZOZOに出店したのは2020年ですが、
- ZOZOが4~5年かけて交渉していた
- 新型コロナの影響で、各ブランドがZOZOに出店した
という背景もあります。それだけ「ハイブランドがECモールに出品するのは珍しい」のです。
このため、ハイレベルなブランディングをしたいのであれば、ECモールは不向きです、制限なく自由にデザインできる「フルスクラッチやECカート」等を使用するとよいでしょう。
ECモールは誰におすすめか
ECモールがおすすめなのは、下記のケースです。
- 早く出店したい
- ECを試してみたい
- 集客で苦労したくない
- ブランディングがさほど必要ない
最後のブランディングについては、ZOZOであれば多くのブランドにとってはマイナスにはならないといえます。オンワード樫山もZOZOに再出店しているほどです。
参考オンワード保元社長が再びZOZOと組んだ理由 老舗は「デジタル流通企業」に変われるか|WWD
②インスタントEC:自社ECサイトを簡単に制作できるサービス
出典:カラーミーショップ
インスタントECは、名前どおり「簡単にECサイトを開設できるサービス」です。後に説明するECカートの簡易版、といえます。代表的なサービスでは、BASEやShopifyなどが挙げられます。
「ECカートの簡易版」であるため、インスタントECとECカートは「同義語」とされることもあります。BASEやShopifyも、ECカートに分類されることはしばしばあります。
デザインが簡単にできる
インスタントECのメリットの1つは、デザインが簡単にできること。たとえばBASEの場合、まずは多彩なテンプレートからイメージに合うものを選択します。
出典:デザイン|BASE
テンプレートを選んだら、下のようなデザインパーツを組み合わせていきます。
出典:同上
さらに上のデザイン編集をしたくなったら、HTML編集も可能です。
出典:HTML編集|BASE
この他、後述する(ECカートとの比較で説明する)有料テンプレートを用いた「簡単かつ高度なデザイン」も可能です。
インスタントECは誰におすすめか
インスタントECがおすすめなのは、下記のような店舗・企業です。
- ある程度自由にサイトをデザインしたい
- 初期費用・制作費用はできるだけ抑えたい
- ECモールより難しくてもいいが、できるだけ簡単に開設したい
上記の条件であれば、インスタントECが最適といえます。
③ECカート(ASP):インスタントECより高度な制作をできるサービス
ECカートとは、「futureshopやカラーミーショップ」に代表される、Webで商品を販売するためのシステムです。インスタントECと似ておりテンプレート等が用意されていることに変わりはありませんが、より高度で自由な制作をできる分、難易度はやや高くなります。
簡単にいうと、アパレル関係者が「ECサイトを立ち上げる」と聞いて連想する形は、ECカートであるといえます。「ECサイトの立ち上げ」と聞いて「ヤフーへの出品」を想像する人はあまりいないでしょう。「自社で、独立したサイトを作る」というイメージを持つかと思います。その「独立したサイト」を作るのに必要なのが、ECカートです。
たとえば下の画像はGAPの商品ページですが「バッグ(カート)に入れる」というボタンがなければ、ただ値段が書かれただけの「写真集」です。
出典:GAP
ECを「サイト」にするには、カートが必要なのです。そのためECサイトの構築でもっとも重要なサービスは、ECカートとなります。
デザインで差別化しやすい
ZOZOTOWNなどのECモールでは、ショップのデザインがほとんどできません。インスタントECではある程度のデザインをできますが、選択肢はECカートの方がより豊富になります。
たとえばカラーミーショップの場合、下記のような有料テンプレートが豊富に用意されています。
35,000円や28,000円など、決して安くない金額です。しかし、高い分他の店舗が安易に導入できないので差別化しやすいというメリットがあるわけです。もちろん、金額に見合ったおしゃれさ、使いやすさとなっています。
アパレルに使えるテンプレートでは、例えば下のようなものがあります。『One plate』というテンプレートで、28,704円です。
【インスタントECには有料テンプレートはない?】
ECカートの簡易版であるインスタントECにも、有料のテンプレートはあります。たとえばBASEの場合、下のようなものが提供されています。
カラーミーショップとの違いは価格帯です。BASEの有料テンプレートは、高いもので1万3,000円、一番多い価格帯は5,000円前後となっています。
カラーミーショップと比較すると、およそ3分の1~5分の1という水準です。導入しやすい分「差別化しにくくなる」といえます。この点が、デザイン面でのECカートとインスタントECの違いです。
ECカートは誰におすすめか
ECカートは下のような企業・店舗様におすすめです。
- できるだけ簡単にECを立ち上げたい
- 簡易サービス(インスタントEC)よりも、レベルが高いサイトにしたい
- ワードプレスなどを自前でカスタマイズするほどは、こだわっていない
上記に該当する場合、カラーミーショップやfutureshopなどのECカート(ASPカート)を試していただくといいでしょう。
④オープンソースCMS:ワードプレスなどのカスタマイズ
ECカートが「より自由に作れて、より制作技術が必要」な方法です。具体的には、ワードプレスやWixなどを用いてECサイトを構築します。
ワードプレスでどうECサイトを立ち上げるのか?
ワードプレスは、すでに自社ブログ・オウンドメディアなどで利用している企業・店舗も多いでしょう。しかし「ワードプレスはブログ用ではないのか?」「どうやってECサイトにするのか?」と思うかもしれません。
実は、ワードプレスにはEC用のテーマ(テンプレート)があります。下記は『SPORTA』というテーマのデモページです。
出典:SPORTA
見てのとおり「完全なネットショップ」ですが、ワードプレスで構築されています。下記のページから無料でダウンロードできます。
Wixで、どうECサイトを立ち上げるのか
こちらはワードプレスより簡単で有料プランを使うだけとなります。「費用はかかるが簡単」というのが、ワードプレスとの違いです。
まず、Wixは無料版でも、下記のようにネットショップのテンプレートとが多く用意されています。
セレクトショップ・呉服店・植物店・トートバッグストアなど、細かく業種別・タイプ別でテンプレートが用意されています。このため、サイト自体は無料で制作できます。
そこからカート機能を導入するのに、有料プランが必要です。プランは下の3通りです(出典のページを見るには会員登録が必要です)。
3通りのプランのいずれでも、黄色でマークしているとおり「安全なオンライン決済」が利用できます。これがECサイトの機能です。
一番安い「ビジネス」以外のプラン(プラスとVIP)では、以下のような機能も使えます。
- サブスクリプション設定(お客さまに対する月額課金)
- 複数通貨対応
- 消費税計算の自動化
- ドロップシッピング
- 商品レビュー機能導入
2番目に高い「ビジネスプラス」の場合、月額は2,600円です。この金額で、上記のように本格的なEC運用が、Wixでもできるということです。
オープンソースは誰におすすめか
これはWix系(簡単なもの)とワードプレス系(高度なもの)で異なります。
Wix系 | Wixなどのサービスで、自社サイト・ブログを運営している。同じ要領でECサイトを運営したい |
ワードプレス系 | できるだけ「完全オリジナルなECサイト」に近づけたい |
技術の有無については、Wix系は「技術がない」場合におすすめ、ワードプレス系は「技術がある」場合におすすめです。もちろん、技術については制作会社やクリエイターの力を借りることも可能です。
⑤フルスクラッチ:完全なゼロから自前での制作
フルスクラッチとは「全てのシステムをゼロから自前で制作する」ことです。他の方法と比較して、下のメリットがあります。
- 理想的なECサイトを構築できる
- 自社で制作する場合、技術が蓄積される
逆にデメリットとなるのは下の点です。
- 制作会社に依頼する場合、ある程度高額な費用がかかる
- 自社制作の場合、高い技術力が必要
オープンソースのカスタマイズとの違い
フルスクラッチは、ワードプレスのカスタマイズと似ている部分もあります。ワードプレスは根本のプログラムであるPHPをいじることで、かなりのレベルまでフルスクラッチに近づきます。
ただ、やはり「ワードプレス」という世界共通のシステムの中で動かす以上、最低限の制約があります。カスタマイズのレベルが一定を超えると、下記のようになります。
- フルスクラッチでなければできない
- ワードプレスでもできるが、フルスクラッチの方が楽である
希望するカスタマイズのレベルがこの水準に達したときに、フルスクラッチを検討するといいわけです。ECモールの項目でも触れましたが、細かな表現等をデザインしきれるため高度なブランディングに向いているからです。
フルスクラッチは、誰におすすめか
フルスクラッチがおすすめなのは、主に規模の大きいアパレル企業です。単純な企業規模だけでなく、実際にECで売買する量がどれだけあるかにもよります(ECをほとんど使わないのであれば、大きな企業でもフルスクラッチは不要です)。
ECサイト以外にも、企業のホームページ(コーポレートサイト)等でも、大きな企業であれば自前で構築・運用されるケースが増えています。
【まとめ】ECサイトの効率的な運用には、高機能なクラウドが不可欠
ECサイトは「立ち上げて終わり」ではありません。言うまでもなく「その後の運用」が必要です。
そして、特に実店舗とECサイトを効率的に連携させることを考えると、高機能なクラウドシステムの導入は欠かせません。クラウドシステムの中でも、特にアパレル業務に特化したものは、よりスムーズに、高いレベルでECと店舗の業務を連携させられます。
そのような「アパレル特化型の高機能クラウドシステム」として、弊社が提供しているのが『アパレル管理自動くん』です。実店舗も経営されている企業様の場合、同じくアパレル特化型のPOSである『アパレル管理自動くんPOSレジ』と連携させることで、より効率的な販売管理が可能となります。
『アパレル管理自動くん』と『アパレル管理自動くんPOSレジ』の詳細は、それぞれ下記ボタンのリンク先でわかりやすくお伝えしています。資料も無料でご請求いただけますので、ECサイトの構築をお考えのマネージャー様・担当者様は、ぜひ一度サービスの詳細をご覧いただけたらと思います。
アパレル企業のためのクラウドPOSレジ