アパレル店舗のマネージャー様や経営者様、あるいはアパレル企業の事業責任者であれば、さまざまな分析を日々行う必要があります。また、店舗スタッフ様も経営会議に参加することになれば「基礎的な分析手法を理解しておきたい」ということが多いでしょう。
アパレルの経営でも用いられる分析手法は、主に12種類あります。これらの手法は、主に下の3種類に分類できます。
この記事では、上記3つのカテゴリに分け、14の分析手法の概要を解説します。それぞれの詳細は、さらに別記事でまとめています。
この記事を読むことで、アパレルの分析手法の全体像と、必要な手法についての詳しい情報を、的確に得ていただけるでしょう。
目次
【総合】汎用的な分析手法・4選
まず理解すべき手法は、総合的・汎用的なものです。顧客や環境など特定のターゲットの分析ではなく「あらゆる場面で使える」手法を指します。
こうした汎用的な手法では、主に下の4つが挙げられます。
分析名 | 内容 |
---|---|
クラスター分析 | グループ分けして分析 |
ABC分析 | レベルを3段階に分けて大まかに分析 |
トレンド分析 | 時間による変化を分析 |
クロス分析 | 2、3の項目で対象を絞り込んで分析 |
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
クラスター分析
クラスター分析とは「グループ分け」による分析手法です。グループといっても、たとえば「年齢・性別」などの決まりきったグループでは分類しません。
全体を見て「こういうグループ分けをできそうだ」という共通点を探し出します。そして、その共通点でグループ分けした後、各グループ(クラスター)に見られる傾向を分析します。
たとえばこの記事でいうと、分析手法を「総合・顧客・環境」という3つのクラスターに分類しています。これは年齢などのように「誰が見ても同じ分類」ではなく「こうした分類をできるのではないか」と、分析者がそれぞれで考えるものです。
アパレルでの分析事例
後述の論文では、消費者のファッションのスタイルを、下記の8つのクラスターに分類しています。
クラスター | 特徴 |
---|---|
クラシック | 流行に左右されない |
エレガンス | 優雅で女性らしい |
ロマンチック | 甘くてかわいい |
エスニック | 民族調 |
カントリー | 動植物などの自然な色合い |
アクティブ | 活発で機能性を重視 |
マニッシュ | 男性的な印象 |
モダン | 知的で未来的なイメージ |
参考アパレル (商品企画) のための消費者クラスター分析の試み|繊維製品消費科学
こうしてクラスターに分けた後、各クラスターの年齢層やファッションに使う金額、職業など、あらゆる傾向を探り出すわけです。
ABC分析
ABC分析は、1つの指標で、対象を3つのレベルに分けて分析する手法です。たとえば「値段」を指標とするなら「高・中・低」となります。サイズの「大・中・小」なども同じ分け方です。
こうして分けた上で「高価格帯の商品にはどんな傾向が見られるか」「サイズ大の服では、どんなものが売れているか」などを分析します。この「3つに分けて分析する」という手法は、誰もが無意識に行っているものです。
たとえば店頭で商品を比較するとき、以下のようなことを誰もが考えるでしょう。
- 「一番高いレベルだと、このくらいのクオリティか」
- 「一番安いとこのレベルか」
- 「中間をとると、大体このくらいか」
これがまさにABC分析で「高・中・低」の各価格帯に共通して見られる傾向(ここでは品質の特徴)を分析しているわけです。ABCという3分類は、日本でも古来から「松竹梅」の分類で、なじみのあるものです。なお、ABC分析は「重点分析」とも呼ばれます
トレンド分析
トレンド分析とは、データの時間的変化に注目する分析手法です。「トレンドは時期によって変わる」ことは、誰もが知っていますが、その「時期」という要素を最重視して、データを分析する手法です。辞書では下のように定義されています。
①データの分布よりは時系列変化を重視して、データの傾向を分析する手法。
②あるパラメータの時間的な変化に注目し、その変化の原因となる事象を推測する分析手法のこと。
引用:トレンド分析|コトバンク
ファッション業界に関していえば、一時期までは「トレンドは分析するものではなく、メディアの力で自ら生み出すもの」という考え方も、根強くありました(今でもある程度残っています)。
そのようにトレンドを牽引する要とされる人物が、オピニオンリーダーです。オピニオンリーダーについては、下の記事で詳しく解説しています。
クロス分析
クロス分析とは、資料やデータを2、3の項目でしぼり、それらに該当する人やモノの特性を分析する手法です。クロス集計とも呼ばれます。
クロスとは「複数にわたること」の意味です。たとえば「男性、30代、大阪府」という条件で顧客を絞り込み、この層に共通して見られる特徴などを分析します。逆に「男性」など1つだけの項目を集計する手法は「単一集計」といいます。
弊社の基幹システム「アパレル管理自動くん」では、以下のようにデータ集計や出力を行うことができます。抽出したい条件を詳しく指定し、クロス分析に活かしていただけます。
【顧客】顧客を分析する手法・5選
顧客の特性や動向を分析する手法では、主に下の5つが挙げられます。
デシル分析 | 売上順に10等分して分析 |
RFM分析 | 顧客をランク付けする分析 |
関連購買分析 | 関連して買われるものを分析 |
バスケット分析 | 一緒に買われるものを分析(関連があるとは限らない) |
LAND分析 | 使用経験、使用意向を分析 |
それぞれの手法について、詳しく解説していきます。
デシル分析
デシル分析とは、顧客を購買金額の高い順に10等分する分析手法です。辞書では下のように説明されています。
顧客の購買歴の分析方法の一。顧客を累積購買額の多い順に並べ、10等分し、10のグループに分けたもの。
引用:デシル分析|goo国語辞書
10のグループに分けて何を分析するかというと、たとえば1つのグループが、売り上げ全体の何パーセントに貢献しているかという構成比などです。
デシル分析は、しばしばABC分析とも比較されます。両者の違いは下のとおりです。
デシル分析 | 10段階に分ける |
ABC分析 | 3段階に分ける |
簡単にいうと、デシル分析はABC分析より、さらに細かく分けて分析するものといえます。
RFM分析
RFM分析とは顧客を3つの指標によってランク付けする手法です。3つの指標(RFM)の意味は下のようになります。
Recency | 最近の購入日 |
Frequency | 来店頻度 |
Monetary | 購入金額ボリューム |
この分析を行うことで、どの顧客を大事にすべきかがわかります。RFM分析の詳しいやり方や、アパレル業界での成功事例などは、下の記事で詳しくまとめています。
また、特にエクセルを用いたやり方については、下の記事で詳しく解説しています。
参考エクセルでのRFM分析のやり方~RFMの各値を抽出する方法~
関連購買分析
関連購買分析とは、顧客の関連購買を分析する手法です。関連購買とは、関連する商品を一緒に購買することです。
顧客が「何と何を一緒に買っているか」を分析するのが関連購買分析といえます。この分析を行うことで、
- 何と何を一緒に陳列すべきか
- 売場の動線をどうすべきか
- 新たにどんな商品を仕入れるべきか
などの判断を行えます。関連購買分析については、下の記事の「関連購買分析とは?やり方の例」の段落で詳しく解説しています。
バスケット分析
出典:OSCO DRUG PHARMACISTS JOIN TEAMSTERS
バスケット分析とは「何と何が一緒に買われているか」を分析する手法です。「同じバスケットの中に入っているものを調べる」という意味で、この名前が付いています。
「一緒に買われるものの分析」という点では、関連購買分析とも似ています。関連購買分析とバスケット分析の違いは、バスケット分析で一緒に買われているものは、必ずしも関連するとは限らないということです。
有名な例に「おむつとビール」があります。これは、1992年、アメリカのスーパーチェーン「Osco Drugs」の調査から得られたデータです。
同チェーンは23店舗、120万件のデータを解析し「おむつとビールが一緒に購入されている」ことを明らかにしました。この理由は「おむつを買いに行かされた父親が、ついでに自分のビールを購入しているため」と推測されます。
なお、上の解析は世界のレジシステムのリーディングカンパニーである、NCR社が行った調査です。現代のPOSレジでも同様にバスケット分析ができ、重要なデータを得られます。
LAND分析
LAND分析(Loyalty Ability Non Decay Analysis)とは、商品やサービスに関する顧客の使用経験と、使用意向を分析する手法です。「LAND」の意味は、それぞれ下の通りです。
Loyalty | 使用継続層 |
Ability | 新規に使用する可能性がある層 |
Non | 未経験や使用したことのない層 |
Decay | 使用意向のない層 |
上記を、より簡単に表現すると下のようになります。
Loyalty | 使い続けてくれている |
Abilty | 使ってくれそう |
Non | まだわからない |
Decay | 使ってくれない |
たとえばDecay層に対しては、下のようなアプローチが考えられます。
- どうせ何をしても使ってくれないので、労力を割かない
- 逆に「使わない理由」に、重要な意味がある可能性もあるため、原因のリサーチを行う
もちろん、Decay層以外の層も明確になることで、それぞれへのアプローチの方法が明確になります。
【環境】マーケティング環境を分析する手法・5選
市場や競合など、マーケティングの環境を分析する手法では、主に下の5種類が挙げられます。
4P分析 | 「何を、いくらで、どこで、どのように」売るべきかの分析 |
SWOT分析 | 強み・弱み・機会・脅威 |
3C分析 | 「自社・競合・市場」の3つを分析 |
PEST分析 | 政治・経済・社会 |
競合分析 | 上記のすべて、あるいは一部を用いて分析 |
それぞれ詳しく解説していきます。
4P分析
4P分析とは、何を、いくらで、どこで、どのように売るかを分析する手法。「マーケティングミックス」とも呼ばれます。4つのPの意味は、それぞれ以下のとおりです。
Product | 製品 |
Price | 価格 |
Place | 流通 |
Promotion | 販売促進 |
「何を、いくらで~」という分析は、そのまま企業の方針決定にもなるものです。この方針決定で成功したアパレルブランドの代表に「GU」が挙げられます。
GUの戦略に4P分析を当てはめるとどうなるかは、下の記事で詳しく解説しています。
SWOT分析
SWOT分析 (スウォット分析)とは、企業や事業の現状を把握するためのフレームワークです。SWOTの意味は、それぞれ下のようになっています。
Strategy | 強み(自社の) |
Weakness | 弱み(自社の) |
Opportunity | 機会(自社にとっての) |
Threat | 脅威(自社にとっての) |
たとえばユニクロの場合、現状でのSWOTは下のように分析できます。
強み | SPA(製造小売業)による価格競争力 |
弱み | 高価格帯で売れない、デザイン性で劣る |
機会 | 海外での知名度向上(中国、東南アジアなど) |
脅威 | インフレによる人件費上昇 |
SWOT分析については、下の記事でも詳しく解説しています。
3C分析
3C分析とは、マーケティング環境を「市場・競合・自社」の3つの要素から分析する手法です。3つのCの意味は、それぞれ下のようになります。
Customer | 市場 |
Competitor | 競合 |
Company | 自社 |
たとえば「無印良品」の3C分析を行うと、下のようになります。
市場 | 安くても品質が良く、統一感のある服やインテリアを求める人々 |
自社 | 質素な製品でも「統一感」を出すことで、華やかさの演出に成功している |
競合 | いない(家具でいえばニトリやイケヤ、ファッションならユニクロなど) |
3C分析については、下の記事でも詳しく説明しています。
PEST分析
PEST分析とは、マクロ環境を分析する手法です。マクロ環境とは、政治や経済など「企業が制御できない外部環境」です。
PESTの意味は「政治・経済・社会・技術」です。それぞれ下記の単語の頭文字をとっています。
Politics | 政治 |
Economy | 経済 |
Society | 社会 |
Technology | 技術 |
今のアパレル業界全体に共通して、今後影響が生じる可能性がある要素は、下のようなものです。
政治 | 外国人雇用の法規制 |
経済 | 日本全体の景気後退 |
社会 | 日本人の人口減少 |
技術 | 糸・生地などの新素材の開発 |
特に2021年1月現在でいうと、コロナ収束がいつになるかが、最も重要な社会的要因といえます。コロナは典型的な例ですが、このようにPEST分析の対象となるマクロ要因は、企業が自力でコントロールできないものです。
競合分析
競合分析とはそのままの意味で「競合を分析すること」です。ここまで紹介したすべて、あるいは一部の手法を用います。
具体的に分析する競合のデータとしては、下のようなものが挙げられます。
- バリューチェーン
- 技術・ノウハウ
- 財務状況
- シェア
- 商品ラインナップ
競合の分析は「ライバルだけを見る」ことではありません。ライバルを見ることで、お客様が欲していても、まだ得られていないサービスや商品を見つけられます。
そのような「競争以外の目的」のためにも、競合分析は必要なものです。
【現場】アパレル実店舗で使用される分析手法活用
本社オフィスなどの経営会議ではなく、現場の実店舗で行われる分析も多くあります。特に多く用いられる手法は下記のもので、内容はそれぞれ、ここまで説明してきたとおりです。
トレンド分析については、ZARAの各店舗での分析が有名です。ZARAは店頭での分析で売れ筋をキャッチし、最短2週間でデザインから店頭への陳列までを完了させるというスピード体制で知られています。
世界中のZARAで「この店ではこんな服が売れる」という情報をストアマネジャーと共有し、デザイン画を描けば約2週間で出荷されます。
引用:AmazonやZARAが実現している「ありえない効率化」(3ページ目)|ITmediaエンタープライズ
このような実店舗での分析は、主にPOSレジの売上データを起点として行われるほか、消費者と常に接している店員の肌感覚での違憲とのすり合わせも重要です。アパレルのPOSデータを用いた分析方法については、下の記事でも詳しく解説しています。
【まとめ】アパレルの分析では高機能なクラウド&POSシステムが不可欠
今回紹介したいずれの分析手法も、まずはデータを正確に集める必要があります。
そして、集めたデータをあらゆる手法で効率的に分類するには、売上などのデータから分析に必要な項目を抽出できる「高機能なクラウドシステム」が必要です。
高機能なクラウドシステムは多くありますが、アパレル業務の分析に用いるのであれば「アパレルに特化したシステム」が特に役立つもの。弊社が提供する『アパレル管理自動くん』は、まさにアパレル業務に特化した高機能なクラウドシステムです。同じくアパレル業務に特化したPOSレジシステムである『アパレル管理自動くんPOSレジ』と連携できることも特徴で、店舗をはじめとした各販売チャネルでの売上や粗利を画面上で比較することもできます。
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