まとめ

アパレル企業にブランドコンセプトはなぜ重要?作り方や事例も紹介

アパレル業界において、より多くの人に長く愛されるブランドを作るためには「ブランドコンセプト」の設計が欠かせません。しかし、中には以下のような疑問・不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

  • そもそも「ブランドコンセプト」ってなに?
  • アパレル業界ではなぜブランドコンセプトが重要なの?
  • アパレル×ブランドコンセプトの事例を知りたい

そこで本記事では、アパレル業界におけるブランドコンセプトの重要性を解説するとともに、ブランドコンセプトの作り方や事例、ポイントなどを紹介します。ブランディングに注力して認知度アップや売上向上を目指したいというアパレルブランド運営者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

「ブランドコンセプト」とは

「ブランドコンセプト」とは、その企業が提供する商品やサービスの特徴や価値を明確にし、顧客に対してどのような印象や感情を伝えるかを定義する概念のこと。

有名なブランドコンセプトとしては、ディズニーランドの「夢と魔法の王国」や大手牛丼屋チェーン吉野家の「うまい、やすい、はやい」などが挙げられるでしょう。これらは、企業のアイデンティティやポジショニングを表現し、顧客との結びつきを深めるための指針となります。

さまざまな業界でブランドコンセプトが重要視されていますが、アパレル業界も例外ではありません。毎年、毎月のように新しいファッションブランドが生まれる中、顧客に選んでもらうためにはブランドコンセプトを明確に定め、唯一無二の存在であることを示す必要があるのです。

ブランドコンセプトを作る目的

では、なぜアパレル業界ではブランドコンセプトが重要視されているのでしょうか。ファッションブランドがブランドコンセプトを作る目的は、主に以下の3つです。

  • 認知度アップ
  • 他社との差別化
  • 顧客ロイヤルティの向上

それぞれ詳しく見ていきましょう。

認知度アップ

アパレル企業がブランドコンセプトを作る主な目的の1つは、店舗や企業の認知度を向上させることです。

競争の激しいアパレル業界においてブランドが生き残るためには、多くの選択肢の中から消費者に商品やブランドを選んでもらう必要があります。そんな中、ブランドコンセプトは企業の独自性とアイデンティティを強調する手段となり、きちんと固まっていれば、消費者の心に残る印象を与えます。

顧客がブランドコンセプトを理解し共感することで、そのブランドが提供する商品やサービスに対する関心を高めることができるのです。

他社との差別化

アパレル業界では、毎月のように新しいブランドが生まれたり、海外のブランドが日本に上陸したりしています。そんな中、ブランドコンセプトが固まっていなかったらどうでしょうか。消費者はブランドを選ぶ基準がなく、「安いから」「家が近いから」などというシンプルな理由で買い物をするでしょう。

ブランドコンセプトは、競合他社との一線を引くための要素となります。オリジナルのブランドコンセプトを持つことで、他社との違いが生まれ、消費者に選んでもらいやすくなるのです。

差別化されたコンセプトは、競争環境での存在感を高め、他の企業と比較されずに済む独自のポジションを築くのに役立ちます。

顧客ロイヤルティの向上

ブランドコンセプトは、顧客ロイヤルティの向上にも役立ちます。顧客ロイヤルティとは、企業やブランドに対する信頼や愛着心のこと。顧客ロイヤルティが高い顧客ほど、そのブランドで頻繁に買い物をしたり単価が高かったりする傾向にあります。

市場が激化しているアパレル業界においては、単に一度の購買だけでなく、長期的な顧客関係を築くことも欠かせません。ブランドコンセプトは、顧客がブランドに対して感情的なつながりを感じるきっかけとなります。

ブランドコンセプトを定めることは、顧客に長期間にわたってそのブランドを選び続けてもらうために必要不可欠なのです。

ブランドコンセプトの作り方・手順

アパレル企業のブランドコンセプトは、一般的に以下の手順で作られます。

  1. 市場・競合の調査
  2. ターゲット・ペルソナの設定
  3. 独自の価値やメリットの検討
  4. ブランドストーリーの作成
  5. ブランドコンセプトの言語化

それぞれのステップの詳細、ポイントを解説します。

1.市場・競合の調査

まず、アパレル業界全体の市場トレンドや競合他社の動向を調査します。

この手順により、どのようなニーズやトレンドが存在しているかを理解し、競合他社の強みや弱みを洞察することができます。自社のポジショニングや差別化のポイントを見つけることができるでしょう。

当たり前ですが、すでに市場にあるコンセプトや価値では、ユーザーの心に響くことはありません。これまでにない独自のコンセプトを作り出すために、市場や競合の調査は欠かせないステップです。

2.ターゲット・ペルソナの設定

次に、自社の商品やサービスを利用するであろう顧客層、いわゆるターゲット・ペルソナを特定します。以下の項目に沿って、「どんなユーザーに商品を利用してもらいたいのか」を明確にしましょう。

  • 年齢
  • 性別
  • 住んでいる地域
  • 仕事
  • 勤務地
  • 年収
  • 家族構成
  • ライフスタイル
  • 価値観
  • 悩み

例えば、「A」という架空のブランドを例に挙げて考えてみましょう。「A」をサステナブルかつ少し大人な雰囲気のブランドにしたいと考えている場合、ターゲットを「都市で活動的なライフスタイルを持つ30代の独身男性で、多少高くても良いものを長く使いたいという価値観を持ち、ファッションを楽しみながらも環境への配慮を大切にする人」と定めます。

「できるだけ幅広い層に利用してもらいたい」という気持ちもわかりますが、ターゲット・ペルソナが広くなればなるほどブランドコンセプトは曖昧になってしまいます。できるだけ具体的に、細かく設定するのがポイントです。

3.独自の価値やメリットの検討

ターゲットが決まったら、自社の商品やサービスが顧客に提供する独自の価値やメリット(ブランドプロミス)を考えます。

何が他社と異なるのか、顧客にどのような価値を提供できるのかを洗い出していきましょう。例えば、上の「A」というブランドであれば、「持続可能な素材と洗練された都市的デザインを融合させたファッションアイテムの提供」「品質とスタイルを兼ね備えつつ、環境に配慮した商品を通じてファッションを楽しめること」などになります。

独自の価値やメリットを明確にすることは、消費者がブランドに興味を示すきっかけになります。

4.ブランドストーリーの作成

ブランドストーリーは、企業の歴史、背景、ビジョン、ミッションなどを組み合わせて、魅力的な物語としてまとめるもの。ブランドのアイデンティティや人間味を伝えるための重要な要素です。

「A」の場合、サステナブル(持続可能)というのがキーワードになります。「都市の躍動感と持続可能な未来への思いを胸に、ファッションを通じて人々にエネルギーを届けたいというビジョンを持っている」「都市の生活と環境への意識を両立させ、ファッションがポジティブな変化をもたらす力を信じている」などのようなブランドストーリーが考えられます。

長期的に顧客にブランドを選んでもらうためには、企業やブランドへの「共感」が欠かせません。ブランドストーリーは、顧客がブランドとのつながりを感じ、共感するきっかけとなります。

5.ブランドコンセプトの言語化

最後に、前のステップで収集した情報や考えを元に、具体的なブランドコンセプトを言語化します。これは、ブランドのビジョン、ターゲット・ペルソナ、独自の価値、そしてブランドストーリーを統合したものです。

Aの場合、「エコロジカル・アーバンファッション」「ファッションでつながる未来」などが挙げられます。

コンセプトは簡潔かつ明確に表現することが重要です。長すぎず短すぎず、端的な言葉でまとめるようにしましょう。また、この作業はさまざまな視点からのアイデアを必要とするため、1人ではなく複数人で行うのがおすすめです。

【事例】アパレル企業のブランドコンセプト5選

より具体的にイメージするため、アパレル企業のブランドコンセプトの事例を4つ紹介します。

ユニクロ「LifeWear(ライフウェア)」

今や知らない人はいないといえるほどのファッションブランド「UNIQLO(ユニクロ)」。

ブランドコンセプト「LifeWear(ライフウェア)」は、シンプルでありながら機能的で、人々の日常生活に寄り添う服、すなわち「究極の普段着」を提供することを示しています。高品質な基本アイテムを通じて、誰もが快適に、自分らしさを表現しながら暮らすことができるファッションを提供するというコンセプトです。

ブランドコンセプトの影響はもちろん、誰もが着られるベーシックなデザインも相まって、ユニクロは世界中で愛されているブランドに成長しています。

SOSUSOU「新しい日本文化の創造」

SOUSOU」は、和柄の衣服やファションアイテムを販売している国内のアパレルブランドです。若者を中心に幅広い世代から人気を集めています。

SOUSOUのブランドコンセプトは、「新しい日本文化の創造」。日本の伝統的な美意識と現代のクリエイティビティを融合させることで、西洋文化の浸透によって衰退した和装文化を復活させ、新しい日本文化を創造することを目指しています。

日本の粋や風土を尊重しつつ、斬新なデザインや素材を通じて、独自のスタイルとアイデンティティを表現するブランドです。

Theory「さりげなく流行を取り入れたNew Basic」

1997年に設立された「Theory」は、よりよい暮らしを提供したいというシンプルな発想に基づいて設立されたファッションブランドです。

そんな「Theory」のブランドコンセプトは、「さりげなく流行を取り入れたNew Basic」。シンプルでありながらも洗練されたデザインによって、さりげなく最新のトレンドを取り入れた新しい価値を提供することを目指しています。

日常的なアイテムに新たなエッセンスを加えることで、洗練されたスタイルとクオリティを楽しむことができるブランドとして位置付けられています。

ルイヴィトン「旅を楽しみ、人生を楽しむモノづくり」

ハイブランドの代表ともいえる「ルイヴィトン」。もともとは旅行カバン専門店として設立されたブランドです。

ルイヴィトンは、そんな歴史的なストーリーを大切にし、「旅を楽しみ、人生を楽しむモノづくり」をブランドコンセプトとして掲げています。ラグジュアリーな商品を通じて、旅を楽しむ心地よさや人生を楽しむ喜びを提供することが表現されています。

長い歴史を通じてデザイナーが変わったりラインナップが増えたりする中、創業時から「旅」というコンセプトを変えずにブランドイメージを確立させた事例です。

CHOCOA「妊娠前と変わらないオシャレが楽しめる」

CHOCOA」は、「妊娠前と変わらないオシャレが楽しめる」をコンセプトに、妊娠中・授乳中の女性をターゲットにしたウィメンズD2Cブランド。2019年、石川・金沢を拠点にスタートしました。

マタニティウェアは時期を過ぎたら着なくなってしまうこと、そしてデザインが限られてしまうことを創業者自身が体験し、それを活かした服作りを行っています。

ターゲットを明確にしたこと、そしてそのターゲットに徹底的に向き合いニーズをしっかりと把握して商品作りに活かしたことで、ブランド創業からわずか2年で売上高は(同社他ブランドも合わせて)10億円を達成。知名度がゼロの状態から店舗を持たないECブランドとして運営し、2021年には東京・表参道の一等地に実店舗をオープンしました。

【解説】「魅力的」なブランドコンセプトとは?

アパレル企業がブランドコンセプトを決める際は、以下を満たしているかどうかを基準にするようにしましょう。

  • 潜在的なニーズにアプローチできている
  • キャッチーかつ分かりやすく言語化されている
  • 独自性がある

これらのポイントを意識することで、より魅力的なブランドコンセプトにすることができます。

潜在的なニーズにアプローチできている

ブランドコンセプトは、顧客の潜在的なニーズや欲求にアプローチすることが重要です。消費者が求めている価値やメリットをコンセプトに組み込むことで、顧客はそのブランドが自分にとって魅力的であると感じるでしょう。

反対に、いくらブランド側に伝えたい想いがあっても、顧客のニーズを満たしていなければ、好印象を与えることはほとんどできません。また、顕在ニーズだけを取り入れても、競合他社の中に埋もれてしまい、ブランドを確立することは難しいでしょう。

市場や競合の調査をもとに、ブランドコンセプトには顧客の心に響く要素を取り入れることが大切です。

キャッチーかつ分かりやすく言語化されている

ブランドコンセプトは簡潔で、かつ記憶に残るものであるべきです。短く端的に、同時に分かりやすい言葉で表現することで、顧客は瞬時にそのブランドの特徴や価値を理解しやすくなります。

ブランドコンセプトを見た際、一見おしゃれなように見えても、意味が通じなければ共感を生むことは難しいです。また、長々と表現しても意味が伝わりにくい上、消費者の記憶に残りにくくなってしまいます。

複雑な言葉遣いや専門的な用語は避け、キャッチーかつ広く理解される表現を心がけましょう。

独自性がある

魅力的なブランドコンセプトにするためには、他の競合ブランドと差別化される独自の要素を含むことが重要です。コンセプトが他にはない独自性を持ち、顧客がそのブランドだけで満たされる特別な価値を感じられるようにすることが欠かせません。

独自性を含めるためには、ブランドコンセプトを作る際に5W1Hを活用するのがおすすめです。

  • 「誰」のためのブランドなのか
  • 「何」を扱うブランドなのか
  • 「どこ」にあるブランドなのか
  • 「いつ」からあるブランドなのか
  • 「なぜ」ブランドを展開しているのか
  • 「どのように」ブランドを展開していくのか

これらの要素を全てブランドコンセプトに含める必要はありませんが、これらの要素に沿って独自の視点やアプローチを取り入れ、ブランドの特徴を際立たせることが大切です。

【まとめ】コンセプトを明確にして魅力的なアパレルブランドを目指そう

本記事では、アパレル業界におけるブランドコンセプトの重要性を解説するとともに、ブランドコンセプトの作り方や事例、ポイントなどを解説しました。

企業やブランドの価値・概念を伝えるためのブランドコンセプト。アパレル業界においても、認知度アップや他社との差別化、顧客ロイヤルティの向上のためにはこのブランドコンセプト作りが欠かせません。

アパレルブランドのコンセプト作りを行う際のポイントは、潜在的なニーズにアプローチすること、キャッチーかつ分かりやすい表現にすること、そして独自性を持たせることです。オリジナルのブランドコンセプトを作り、魅力あるアパレルブランドを目指しましょう。

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