「二次卸」「二次問屋」とは、一次卸から仕入れを行う卸業者のことです。二次卸について、多くの人が知りたいのは下のようなポイントでしょう。
- 一次卸とどう違うのか
- 二次卸はなぜ必要なのか
- 二次卸のメリットやデメリットは何か
この記事では、上記の3つを中心に二次卸について総合的にまとめます。二次卸という単語から、卸についての理解を深める上で、きっと役立てていただけるでしょう。
目次
【概要】二次卸とは
二次卸とは、上の図のように「一次卸から仕入れて、小売店に売る」業者です。または、小売店ではなく、次の卸業者である「三次卸」に対して卸すこともあります。
経産省の定義では、下記のように「中間卸」となっています。
二次卸とは、商品を卸売業者から仕入れ、次段階の卸売業者に販売する中間卸をいう。
流通段階別構造の推移|経済産業省
上記の意味が一般的ですが、辞書では別の意味もあります。
別の意味
下の辞書では、メーカーが地方の問屋(小規模な卸業者)に直接売ることと説明されています。
メーカーが卸売商を経由することなく,地方の問屋 (消費地にあって小売商に配給する) に直接売ることをいう。メーカーの側からいう言葉。これに対し,メーカー問屋 (卸売商) に商品を売ることを1次卸と呼ぶ。
2次卸|コトバンク
大規模な卸売商(大元の問屋)ではなく、小規模な卸売商(地方の問屋)に直接卸すということです。このような意味もありますが、一般的には上記の「中間卸」という定義で使われています。
二次卸の英語
二次卸は英語で、secondary wholesaler(セカンダリ・ウォールセラー)といいます。例文は下のとおりです。
当店では商品を二次卸から仕入れている。
Our store get its goods from a secondary wholesaler.
二次卸|Weblio英語例文
別の表現で「re-distributor」もあります。
【比較】一次卸・二次卸・三次卸・製造卸の違い(卸の仕組み)
卸の仕組みは簡単に書くと、上の図のとおりです。メーカー、卸、小売、顧客という順番になっています。その卸が一次・二次・三次などと分かれることがあるわけです。
一次・二次・三次の卸に加え、製造卸という単語もあります。これらの違いは下のとおりです。
一次卸 | メーカーから仕入れる |
二次卸 | 一次卸から仕入れる |
三次卸 | 二次卸から仕入れる |
製造卸 | メーカーが自ら卸す |
それぞれ簡単に解説していきます。
一次卸:メーカーから仕入れる
一次卸はメーカーから直接仕入れる業者を指します。仕入れた商品は、二次卸か小売業者に販売します。
卸売業者のうち、メーカーから直接に商品を仕入れる業者をいう。仕入れた商品はさらに2次卸などの卸業者あるいは小売業者に販売する。
1次卸|コトバンク
一次卸には、直卸、元卸という別名もあります(下記参照)。
一次卸とは、生産業者又は海外から商品を直接仕入れ、小売業者、産業用使用者又は海外に直接販売する直卸と次段階の卸売業者に販売する元卸をいう。
流通段階別構造の推移|経済産業省
同じ一次卸でも、直卸と元卸は「販売相手」が違うものです。それぞれの販売相手をまとめると、下のとおりです。
種類 | 誰に販売するか |
---|---|
直卸 | 小売業者、産業用使用者(町工場など)、海外 |
元卸 | 二次卸 |
なお、多くの人が知っているとおり、卸が「二次店」として直接消費者に商品を売ることもあり、この形態を「卸直売」といいます。
三次卸とは
三次卸は、二次卸から商品を仕入れる卸業者です。「最終卸・小卸」ともいいます。
「最終卸」という用語は、経産省が用いています。
三次卸とは、商品を卸売業者から仕入れ、小売業者、産業用使用者又は海外に直接販売する最終卸をいう。
流通段階別構造の推移|経済産業省
「小卸」という定義は、下の辞書で用いられています。
一次卸(大卸)・二次卸(中卸)・三次卸(小卸)
自己卸売業|コトバンク
経産省が「最終卸」と表現しているのは、三次卸より先の「四次卸」が登場することは滅多にないためです。
製造卸とは
製造卸とは、製造業と卸売業を兼ねた業態です。「作った会社がそのまま卸売もする」ということです。
消費者に直接売るわけではないので、製造小売(SPA)とは異なります。製造卸売と製造小売の違いは、下のとおりです。
製造卸売 | 自分で作って、小売店に売る |
製造小売 | 自分で作って、消費者に売る |
製造小売はユニクロやZARAが代表的です。
製造卸は、特定の産業が発展していく途中で見られる現象です。最初のうちは、自分で作って、自分で小売店に持ち込む(卸す)しかないためです。
しかし、やがて産業自体が成長すると、製造業と卸売業に分離されていきます。
【事例】国内の有力企業2社のケース
二次卸の事業を手がける国内の有力企業の例としては、下のような会社が存在します。
藤田金屬 | 鉄の総合商社 |
ユアサ・フナショク | 地域密着型の総合商社 |
それぞれの会社が、事業説明の中でどのように二次卸(二次問屋)という表現を用いているかを、ご紹介します。
藤田金屬:鉄の総合商社
出典:藤田金屬
「鉄の総合商社」である藤田金屬株式会社は、下記のように「二次問屋」という表現を用いています。
一次問屋としての商社機能、鉄鋼の切断加工や在庫機能を持ち合わせるコイルセンター及び加工センター機能、二次問屋としての特約店(鉄鋼メーカーから販売権を与えられた販売代理店)の役割まで担います。
藤田金屬の役割|藤田金屬株式会社
二次問屋について「特約店」という表現が用いられていますが、大阪府の資料も鉄鋼業界では二次卸のことを「特約店」と呼ぶことを記しています。
一方、二次卸は、「特約店」と呼ばれ、一次卸や地域の中小鉄鋼メーカーから仕入れ、ユーザーに販売している。
鉄鋼製品卸売業|大阪府
藤田金屬は二次問屋に専念しているわけではなく、一次問屋としての機能、コイルセンターや加工センターとしての機能も持っており、オールラウンドなマルチプレイヤーというべき企業です。
ユアサ・フナショク:地域密着型の総合商社
出典:ユアサ・フナショク
ユアサ・フナショクは、首都圏を基盤とした地域密着型の総合商社です。同社の事業案内では、下記のように二次問屋の事業も手掛けていることが記されています。
わたしたちユアサ・フナショクは、量販店・スーパー・二次問屋・小売店・食品メーカーへの卸売<商事部門>を中心に、ビジネスホテル事業<ホテル部門>を併営する総合食品商社です。
事業案内|ユアサ・フナショク株式会社
同社も藤田金屬と同様、二次問屋以外の事業も幅広く手掛けており、ホテル部門まで展開しています。こちらも総合食品商社というキャッチフレーズに相応しい、幅の広い事業内容です。
食品業界の二次卸
食品業界では、二次卸の比率が高い業種・低い業種のデータがあります。昭和43年(1968年)とやや古いデータですが、当時の三菱銀行による調査をご覧ください。
その調査によれば、二次卸の比率が高かった業種は下のとおりです。
業種 | 比率 |
---|---|
米麦 | 65.6% |
乾物 | 58.2% |
茶類 | 56.9% |
缶詰・瓶詰 | 50.4% |
生鮮魚介 | 49.9% |
逆に二次卸の比率が低かった業種は、下のとおりです。
業種 | 比率 |
---|---|
酒類 | 10.6% |
清涼飲料 | 11.5% |
農畜・水産物 | 14.9% |
味噌・醤油 | 20.1% |
菓子・パン | 21.1% |
約50年前のデータであるため、現代では比率も変動しているはずです。しかし「当時なぜこの結果が出たのか」「当時、二次卸がどのように研究の対象になっていたか」がわかる点で、参考になる資料です。
具体的には「保存度が高いもの / より鮮度が重視されるもの」といった具合に二分されており、対象となる商材の特性によって、二次卸の必要性が変わることが分かります。
参考流通革新と清酒
【メリット】二次卸はなぜ必要なのか
二次卸のメリットは、一次卸だけではカバーできない流通をカバーできることです。この意味は「そもそも卸がなぜあるのか」を考えるとわかりやすくなります。
多くの場合、一次卸だけでは流通全体に手が回らず、その役割を補完するために各地で卸が発展したという経緯があります。
卸はなぜあるのか | まとめ役が必要だから |
二次卸はなぜあるのか | 一次卸だけではまとめ役が足りないケースがあるから |
二次卸はどう登場したのか | ビール業界では、キリンビールの一次卸だった明治屋だけでは手が回らなくなった(1900年頃) |
それぞれ詳しく解説していきます。
卸はなぜあるのか
卸がある理由は、まとめ役が必要だからです。世の中には、
- 膨大な数の生産者
- 膨大な数の販売者
が存在します。このうち、生産者は「たくさんの販売者に商品を売ってほしい」と思っています。しかし、すべての販売者を把握するのも、毎回連絡するのも非常に困難です。
これは販売者も同じです。販売者も「できるだけ多くの生産者から商品を探したい」と思っています。しかし、自力で探して毎回それぞれに発注するのは、非常に骨が折れるわけです。
卸があれば生産者も販売者も、すべての流通のやり取りを「卸一社に連絡するだけ」でできます。このような「集結点・連絡点」になるのが卸の存在価値です。
二次卸はなぜあるのか
上の段落の理由で、まず「一次卸」が発生します。しかし、生産者と販売者の数が増えれば、一次卸だけでは足りなくなります。
わかりやすくいうと、全国規模の一次卸なら各都道府県に支社・支店を持とうとするでしょう。しかし、新たに支社や支店を設立するのが負担になることもあります。
この場合「その地域にある地場の会社」に卸を代行してもらう方がいいのです。このように、エリアの広がりとともに二次卸が増えていくというのが1つのパターンです。
その他のパターンは、同じエリアでも「単純に業務が多くなった」というものが多く見られます。業務が多くなれば組織がピラミッド化していくのは、どの業態でも同じです。
同じ理由で、二次卸で不足したら三次卸が登場します。
二次卸はどう登場したのか
出典:【1890年】ビール(明治23年)「キリンビール」の総販売代理店だった「明治屋」の広告|ジャパンアーカイブズ
二次卸は、経済や業界が発達するとともに見られるようになります。たとえば、初期のキリンビールは、明治屋がすべて卸していました。一次卸しか存在しない状態です。
しかし、やがてビールが普及して販売網が広がると、明治屋1社では足りなくなります。明治屋は、自社の支店や支社を各地に作ることも当然考えます。
それでも管理が追いつかなくなると、やがて地方の業者と契約して、彼らに二次卸として働いてもらう方がいいと考えます。また、明治屋が提案しなくても、業者の方から提案して契約することもあります。
こうして、二次卸という業態が発生したのです。このケースの場合、
一次卸 | 明治屋 | 総販売代理店 |
---|---|---|
二次卸 | 各地の卸業者 | 販売代理店(もしくは特約店) |
上記のような位置づけになります。
参考日本の卸売業の特性と取引制度問題|東京経済大学学術機関リポジトリ
【デメリット】 中抜きが進行する理由
流通にかかわる業者にとって、二次卸などの卸業者を通すことのデメリットは、下のものが挙げられます。
いずれも、特にメーカーや小売店など「卸に関わる業者」にとって大きなデメリットがあるといえます。それぞれ詳しく説明していきます。
中間マージンが高くなる
卸業者の数が増えるほど、中間マージンが高くなっていきます。これは、
- 消費者にとっては、値段が高くなる
- 生産者にとっては、値段のせいで商品が売れないことがある
という点で、消費者・生産者の双方にとってマイナスです。近年で問題視されている卸の中抜きも、この原因でしょう。
近年では、IT環境の進化や、物流効率の向上により、卸売りの中抜き現象が起こっている。卸売業者の立場から見ると、従来の単純な口銭ビジネスは成立しにくい環境だといえる。
卸売業者|グロービス経営大学院
上の説明では「IT環境と物流効率の進化」が理由として挙げられています。この2つの変化は、両方が組み合わさって初めて可能になるものです。
たとえば、アップルは公式オンラインストアで、直接消費者の注文を受けています。ここまでは、ITの進化だけでできます。
しかし、そこから「発送する」となると、従来の物流では難しかったのです。物流もIT技術などのおかげで昔より進化しているため、メーカーから直接の発送もできるようになりました。
このような環境のため「不要な中間マージン」という卸のデメリットが、より顕在化してきています。
消費者と生産者の距離ができる
消費者と生産者の中間に入る業者が多いほど、両者の距離ができてしまいます。つまり、生産者にとって「消費者の顔が見えにくくなる」ことがあります。
ただし、卸業者が的確に情報を集め、生産者に伝えることで、むしろ距離が縮まる場合もあります。販売に不慣れが生産者が直接販売するより、卸業者を使って広範囲に売る方が、より多くのデータが集まるからです。
卸への依存比率が上がる
小売への販売を卸に依存していると、メーカーにとっては「卸なしでは事業を継続できない」状態になってしまいます。こう書くと、下のような疑問を持つ人もいるでしょう。
- 卸の立場はそんなに強いのか?
- 良心的な卸業者を選べばよいのではないか?
確かに、近年では上のように卸の立場がやや弱くなっています。しかし、昔は社会のネットワークが限られていた昔では、卸が非常に強い時代がありました。これは下の一文でわかります。
そのような取引制度改定が行われる場合もあるが,メーカーの対卸売業交渉力が弱い場合などは,そうできずに終わることも相当あった。
日本の卸売業の特性と取引制度問題|東京経済大学学術機関リポジトリ
このように、一次卸の中抜きが分かっていても、メーカーから一次卸にマージンを払っていたことが書かれています。
- メーカーが一次卸を中抜きするようになった
- 有力な二次卸に直接商品を卸すようになった
- つまり、一次卸は仕事をしていない
- それでも、メーカーは一次卸にマージンを払っていた
「なぜ?」と思うでしょう。実際、上の論文でも「こういうケースでは契約を見直すのが当然だが…」という内容が書かれています。
それでも、下の理由でメーカーは一次卸を切れなかったのです。
- まだ完全に、二次卸とのネットワークができたわけではない
- 一次卸に依存している部分がある
- 彼らを怒らせたら、大半の販売ができなくなる
- だから、契約を変更できない
上記のように、昔は卸の力が強く「メーカーが卸に依存する」という状況がしばしば見られたのです。メーカーといっても、パナソニックやソニーのような大手ばかりではなく、小規模な町工場もあることを考えると、これは納得しやすいでしょう。
最近こそ卸の力は弱くなってきましたが、一部の場合では「卸を利用するほど、卸への依存度が上がってしまう」ということです。
【禁止行為】独占禁止法との関わり
二次卸に対して、メーカーや一次卸が下記のことを行うのは禁止されています。
- 価格設定に対する不当な強制
- 不当な取引の拒絶
- リベート供与などの差別的取り扱い
- そもそも二次卸という行為自体を禁じる(例外あり)
1つ目の「価格に対する強制」は、下の記述でわかります。
(前略)メーカーが直接の取引先に対して行う場合のみならず、メーカーが間接の取引先である小売業者や二次卸等に対し、卸売業者を通じて、あるいは自ら直接に、その販売価格を拘束する場合にも当てはまる(後略)
「流通・取引慣行ガイドライン」をめぐる家電業界の現状とガイドライン見直しに関する要望|内閣府
その他の内容は、下の図でわかります。図には先ほどの4つ以上の内容が書かれていますが、先ほどは特に重要な4つのみを抜粋しました。
出典:「流通・取引慣行ガイドライン」をめぐる家電業界の現状とガイドライン見直しに関する要望|内閣府
ここまで書いたルールは、主に独占禁止法・第2条9項4号などで規定されているものです。条文は下のものです。
自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
独占禁止法・第2条9項4号|e-Gov法令検索
上の条文の後に「禁止する内容」が続きます。
まとめ ~卸売業務の管理には高機能なクラウドシステムの導入が有効~
二次卸を含めた卸売の事業では、流通を的確に管理することが特に重要なタスクとなります。その管理を行う上で、すぐれたクラウドシステムを導入することは、必要不可欠といえます。
特にアパレル業界の卸売業であれば、アパレル事業に特化したシステムを導入していただくのがベストといえるでしょう。弊社が提供する『アパレル管理自動くん』は、アパレル事業に特化した高機能クラウドシステムであり、アパレル特有の管理項目などが豊富に盛り込まれています。
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