マーケティングの最重要単語の一つである、サプライチェーンマネジメント(SCM)。
- 聞いたことはあるけど、意味はわからない
- 何となくわかるけど、正確な説明はできない
- 説明はできるけど、事例は知らない
など、理解度のレベルは人それぞれでしょう。実はSCMとは「流通の効率化」のことであり、決して特別な努力ではありません。
根本的には「当たり前のことをする」のですが、
- 当たり前のことを、
- できるだけ小さな労力で、
- どれだけ完璧に実行するか
という点で、大企業も含めた各社がしのぎを削っています。この記事では、そうした大企業の成功事例も含めて「SCMとは何か」をわかりやすくまとめました。
「初心者」の方から「上級者」の方まで参考にしていただける内容になっています。「SCMについてざっと理解したい」「自社での導入前に、成功事例を学びたい」という方に、役立てていただけたら幸いです。
なお、弊社はアパレルのSCMを支える特化型クラウドシステム「アパレル管理自動くん」を提供しております。アパレル業界の方で、
- SCMの意味は大体わかっている
- 早めに自店・自社で導入したい
- アパレルに特化したシステムを探している
という担当者の方も見えるでしょう。そのような方や店舗様には、弊社のアパレル管理自動くんがお役に立てるかと思います。
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目次
サプライチェーンマネジメント(SCM)とは
まず、概要を表にまとめると下のとおりです。
意味 | 調達から販売までの流れを一元管理する手法 |
辞書の定義 | 受発注や社内業務を、システムで統合管理する手法 |
日本語 | 供給連鎖管理 |
歴史 | 1983年にブーズ・アレン・ハミルトンが初めて用いる |
それぞれの項目について解説します。
意味:調達から販売までの流れを一元管理する手法
サプライチェーンマネジメントは、経営手法の一つです。サプライチェーンとは「調達から販売までの流れ」です。それを一元管理(マネジメント)する手法を指します。
あえて短くいうと「流通管理」ともいえます。
辞書の定義:受発注や社内業務を、システムで統合管理する手法
『大辞林 第三版』では、下のように定義されています。
サプライチェーンにおいて、取引先との受発注や社内部門の業務をコンピューターを使い統合管理する経営手法。
サプライチェーンマネジメント| コトバンク
「コンピュータを使う」という部分は絶対的な定義ではないため、そこを省くと「調達から販売までの流れを一元管理する手法」という、先ほどの説明になります。
日本語:供給連鎖管理
SCMは、日本語では「供給連鎖管理」といいます。
サプライチェーン | 供給連鎖 |
マネジメント | 管理 |
上記のように、言葉を直訳したものです。なお、英語では「Supply Chain Management」であり、その略称として「SCM」が用いられます。
歴史:1983年にブーズ・アレン・ハミルトンが初めて用いる
SCMは、1980年代に普及し始めました。この頃には初期のパソコン(パーソナルコンピュータ)も登場し、SCMが物理的にやりやすくなったことが理由の一つです。
主な流れを年表でまとめると、下記のようになります。
1983年 | コンサルティング会社「ブーズ・アレン・ハミルトン」が初めて言葉として用いる |
1996年 | 各社のSCMを共通評価するNPO法人・サプライチェーンカウンシル(SCC)が米国で設立される |
1998年 | 米国のロジスティクスの業界団体が「ロジスティクスはSMCの一部である」と定義する |
参考Wikipedia「サプライチェーンマネジメント」の「歴史」の段落
最後のできごとを簡単に説明すると、下のとおりです。
- ロジスティクスは「物流合理化」である
- SCMより歴史のある概念
- 意味はよく似ている
- しかし、ロジスティクスは「物資」の意味が強い
- SCMは社内業務など「物資以外」の意味も含む
という理由で、ロジスティクスの団体が「SCMの方が大きい概念である」と定義したわけです。
サプライチェーンマネジメントを導入する4つのメリット
サプライチェーンマネジメントの導入には、主に下の4つのメリットがあります。
それぞれ詳しく説明していきます。
在庫をコントロールしやすい
SCMに成功すると、在庫を「より完璧に」コントロールできるようになります。
- 売れないものは、仕入れない
- 売れるものを、どんどん仕入れる
この「当たり前だけど難しい」ことを、実現できるわけです。各業界で成功した会社が、具体的にどのようなコントロールをしたのかは「事例」の段落で解説します。
コストを削減できる
主に下のようなコストを削減できます。
売れ残りコスト | 売れ残りが出ないので |
輸送コスト | ムダなものを運ばないので |
生産コスト | GAP・ユニクロなど「製造小売」まで発展した場合 |
最後のGAP・ユニクロの事例は、こちらの段落で解説します。この2社のSCMは「そもそもSCMの大部分を不要にした」という点で、抜本的なSCMといえます。
顧客満足度が高まる
「売れるものを確実に仕入れる」ことで、顧客にとっては「いつ来店しても、欲しい品物がある」状態となります。このため、顧客満足度が高まります。
アパレルでは、ワールドとZARAの2社が「生産から陳列まで2週間以内というスピード調達を、世界の各社に先駆けて実現しました(2000年代)。
人材を有効活用できる
物流のルートでは「物」だけでなく「人」も動いています。そのため、物流のムダがなくなれば「人間の動きもムダがなくなる」わけです。
このため、輸送スタッフから事務管理スタッフまで、すべての人材に「有意義な仕事だけ」をしてもらえます。
サプライチェーンマネジメントを導入する3つのデメリット
サプライチェーンマネジメントを導入するデメリットは、主に下の3点です。
それぞれ詳しく解説していきます。
コストがかかる
これは「初期費用がかかる」ということです。
- 長期的にはコストが減る
- しかし、最初は逆にコストがかかる
これは、たとえば花王の事例を見ると実感できます。膨大な配送車両と物流拠点を揃えていますが、その数字を見れば「初期投資が巨額であった」ことが実感できるでしょう。
人的労力がかかる
これも「コスト」と同じです(お金が人的労力に変わったということです)。
- 長期的には、労力が減る
- しかし、最初は大変
ということです。このため、業務が落ち着いていて「スタッフ全員に余裕がある」ときに導入するべきといえます。
過剰な効率化がマイナスになることもある
SCMは、一言でいうと「効率化」です。そして、効率化を過剰にすると「大切なムダ」までカットしてしまうことがあります。
具体的な例をあげると、下のようになります。
- あまり売れていない商品をカットした
- しかし、その商品は「他店舗では売っていない」ものだった
- 「その商品があるから」来ていたお客さんもいた
- そのお客さんたちがいなくなってしまった
もちろん、これが「数人」などの小規模であれば「そのくらいは仕方ない」と判断するべきでしょう。最終的に「自社・自店が目指すものは何か」という方向性が重要になります。
その方向性に一致した効率化ならいいのですが、結果として方向性とも逆の結果になってしまう(狙っていた顧客層まで減ってしまう)ということになると、問題があります。
サプライチェーンマネジメントの成功事例2選(トーハン・花王)
SCMの成功事例は多くありますが、特に有名なのはトーハンと花王のものです。
出版 | トーハン | 書店・出版社向けシステム「TONETS」 |
化粧品 | 花王 | 全国8万店に、1500アイテムを直接納品 |
それぞれの事例を詳しくご紹介します。
出版:トーハン「書店・出版社向けシステム TONETS」
トーハンは「取次会社」です。取次会社とは「書店と出版社の間に入る会社」です。
この「取次がなぜ必要か」という点が、そのままSCMにつながるため、まずその点から説明します。
取次はなぜ必要か
これは「書店も出版社も、その1社に連絡するだけで、書籍のやり取りをまとめてできる」ためです。たとえば、あなたが書店の店長だったと想像してください。
書店には「あらゆる出版社」の本を並べます。2016年時点で、日本には3,434社の出版社があります。
参考書店・出版社数の推移 2007年~2016年(日本著者販促センター)
ある程度メジャーな会社だけに絞っても、100社は余裕で超えるでしょう。その100社とあなたの書店が、直接やり取りするのは不可能なのです。
「やればできる」でしょうが、明らかに非効率的です。「どこかの取次会社が集約してくれる方がいい」と、誰もが感じるでしょう。そうすれば、100社どころか3,000社との取引もできます。
同じことは出版社も考えます。日本の書店数は、2017年時点で12,526店です。
参考書店数の推移 1999年~2017年(日本著者販促センター)
当然、これも「全ての店舗と直接のやり取り」などでできません。そのため「取次に全部の書店をまとめて管理してもらう」のです。
取次は、出版業界のサプライチェーンの要である
こうしてみると、出版業界の供給の流れ(サプライチェーン)で、取次が要であることがわかるでしょう。そして、その要となる会社には「徹底した供給のコントロール」が求められるわけです。
- 各書店の在庫を、リアルタイムで把握する
- 補充が必要な本は、すぐ出荷する
- 足りなくなったら、出版社から入荷する
- 各書店で常に売れ筋が確保されるようにする
という作業をします。当たり前の作業のようですが、これを「実際にやる」のは、どの業界でも難しいものです。
トーハンの情報管理システム
ここからが「具体的な事例」になります。上のような「徹底したコントロール」を実現するため、トーハンは「TONETS」(トーネッツ)というシステムを開発しました。
これは「書店向け・出版社向け」の2種類があり、それぞれ下のような名称です。
TONETS V | 書店向け |
TONET i | 出版社向け |
簡単にいうと、
- V:書店
- i:出版社
ということです。これで、商品の売れ行きの情報を、出版社の人も、書店の現場にいるかのように把握できます。
「こういう本が売れている」とわかるので、次の本の企画も立てやすくなるのです。
書店側のメリット
まず、出版社が「売れる本を考えやすくなる」こと自体がメリットです。売れる本の登場は、書店にとって何よりありがたいことです。
もちろん、それは「情報管理」だけで生まれるものではありません。「作家の才能やモチベーション」も当然必要でしょう。
ただ「読者が何を求めているか、データで伝わる」ことは、間違いなくプラスになります。「システムのおかげでベストセラーが生まれた!」というわかりやすい結果は出ないかもしれません。しかし「全体的に外れがなく、どの本も10%くらい売れやすくなった」ということは十分にあり得るでしょう。
化粧品:花王「全国8万店に、1500アイテムを直接納品」
上の取次(トーハン)の説明を読んで、下のように感じた人もいるでしょう。
- トーハンや取次の仕事が重要なのはわかる
- しかし「中間コスト」が発生するのは確か
- できれば、これはカットした方がいいのでは?
この疑問はもっともで、そのカットを実現したのが花王です。花王は、
- 全国8万の店舗に、
- 1500超のアイテムを、
- 24時間以内に、
- 直接納品する
のです。先ほど日本の書店数が「約12,000店」と紹介しましたが、花王はその7倍近い「80,000店」に、直接納品をしてしまうわけですね。
もちろん、ジャンルが違うので単純に「花王の方が出版各社より進んでいる」ということではありません。ただ、トーハンの事例で説明した「あまりに膨大で難しい在庫管理」を、花王が「本当に実現している」ということは、数字で実感できるでしょう。
花王はなぜこれをできたのか
理由はまず「輸送」の面で3つあります。↓
工場が全国に8つある | 生産拠点がそもそもあちこちにある |
物流拠点が21カ所 | ほぼ「2県に1つ」の拠点がある |
大量の車両を走らせる | 大型トレーラー500台、配送車1200台超 |
このように「拠点も車両も」大量に揃えているわけです。「要はお金があったんだろ」と思うかもしれません。しかし、こうした大規模な投資が失敗すれば経営破綻のリスクもあるわけです。
(実際、物量戦で一世を風靡したダイエーは破綻しました)
「すぐれたエンジニア集団」が花王の強み
花王のSCMが成功しているもう1つの理由に「エンジニア陣が優秀」という点があげられます。輸送も大事ですが、そもそも、
- 何をどこに、どれだけ運ぶのか
- その指示の大元の「販売戦略」は正しいのか
ということが何より重要です。軍師の戦略が間違っていたら、機動力のある騎馬隊をどれだけ動かしても徒労に終わるわけです。
花王はその「軍師の戦略」を立てるための情報収集システムが優れています。これは物流拠点の数のように数値化できる強みではありません。しかし、これがあるからこそ、上で書いた「膨大な拠点と配送車両」が効果を発揮するのです。
サプライチェーンマネジメント・3つの課題
どの業界でも共通するサプライチェーンマネジメントの課題は、主に下の3つです。
それぞれの課題について説明していきます。
顧客との親密性:ユーザーのためのSCMになっていない
これは、SCMに限らず「あらゆる企業努力で、よくあること」です。
- クーポンで割り引くのでなく、最初から割り引いておいてほしい
- 「ポイントカードお持ちですか?」と聞かれるのが面倒
買い物をしていて、上のような気持ちになった経験を持つ人は、少なくないでしょう。SCMでもこうした「ユーザーのためでない努力」を避ける必要があります。
リスク管理:グローバル化などの規模拡大で管理が困難
SCMは「完璧な管理」を目指すものですが、そもそもそれは「最初から大変」なもの。そして、現代ではグローバル化によって流通の規模が拡大し、「完璧な管理がさらに困難」になっています。
- 英語・中国語などの語学力
- 通関に関する法律知識
- 商習慣・文化の違い
このように、あらゆる要素を超えてリスクを管理する必要があります。難しいからこそ、成功したら「一人勝ちできる」わけですが、昔とは違う種類の努力が必要になっていることは確かです。
コストの肥大化:管理のためのコストがかかり過ぎている
SCMの実現にはコストがかかります。それが「利益に見合うもの」であればいいでしょう。
しかし「コストをかけた割には利益が出ていない」という企業も多くあります。「費用対効果が悪い」ということです。
この原因は多々ありますがトップが現場を見ていないことは、特に多い原因の一つです。ドラッカーは経営者の働き方について「間違っても机にしばりつけられるようなことがあってはならない」と説いています。
- 現場で顧客をよく見る
- スタッフとよくコミュニケーションを取る
ということです。これは原因や改善策のほんの一例ですが、最終的には「会社の体質自体の改善」が重要といえます。
サプライチェーンマネジメントの重要性・3つのポイント
80年代からある概念のサプライチェーンマネジメントが、なぜ今あらためて重要になったのか。その理由は下の3点です。
以下、それぞれの理由について解説します。
ITの進化で、今までにないSCM技術が登場している
特にクラウドと端末が進化したことで「今まではできなかったSCM」ができるようになりました。
クラウドの進化 | データの保存・共有がしやすい |
端末の進化 | 現場でのデータの入力・閲覧がしやすい(主にタブレットを活用) |
特に飲食店で「お客さんがタブレットを使って入力するシステム」は、お客さんが売上のデータ入力までしてくれるわけです。
これは「アイディア」だけではできず、あくまで「ITの進化があって」初めてできるようになったのです。
少子化・人手不足により、人材の有効活用が必要
少子化により、どの業界でも「人手不足」が深刻になっています。2020年1月には、人手不足倒産が過去最高を記録したことが各メディアで報じられました。
参考2019年の「人手不足倒産」、過去最多 過去7年で最も倒産が多かった業種は? | ITmediaビジネス
この年度だけでなく「4年連続で過去最高を更新」しているため、今後さらに悪化する恐れがあります。こうした状況で「人材の有効活用」がますます必要になっているのです。
情報化で顧客の好みが多様化した
あらゆる分野で情報が豊富に入るようになり、顧客の好みが多様化しました。たとえば音楽では、90年代は「皆が同じCDを買っていた」ので、ダブルミリオンやトリプルミリオンすら、ひんぱんに発生していたものです。
しかし、今では見る影もないくらい、CDの売上が激減しました。配信に移ったこともありますが「皆、それぞれ好きな音楽を聴くようになった」ためです。
「メガヒット」は生まれにくくなりましたが、代わりに「ニッチなアーティスト」が売れるようになりました。これは文化的に良いことですが、トレンドの予測をしにくいという企業側の課題も生んでいます。
- 予測ができないなら、状況に素早く適応するしかない
- そのためのシステムが必要
ということで、あらためてSCMが注目されているわけです。
アパレルのサプライチェーンマネジメント・3つの事例
アパレル業界でもSCMの成功事例は多くあります。また、現在進行系で発達しているSCMもあります。ここではその両者を下の表のように紹介します。
ワールド&ZARA | 00年代前半に「2週間補充」の体制を実現 |
GAP&ユニクロ | 製造小売業(自社の工程が広がるほど完璧に管理しやすい) |
アパレルPOS | アパレル特有の機能でSCMがより効率的に |
以下、それぞれの詳しい説明です。
ワールド&ZARA:00年代前半に「2週間補充」の体制を実現
東証1部上場で日本のアパレル最大手の1社・ワールド。そして、スペイン発の世界的ブランドのZARA。
この2社のSCMは、世界的アパレルメーカーの大部分が模範としたものでした。理由は、2000年代前半の時点で、
- 2週間以内に、
- 生産から店頭陳列までこなす
というスピードを実現していたのは、この2社しかなかったためです。2週間で生産からこなせれば「人気で品切れになった服を、シーズン中に追加投入できる」ということです。
なぜ2社はこれを実現できたか
これは長年ハーバードなどの研究材料にもなっていて、全部書くと長くなります。しかし、部分的なわかりやすい説明を、ハーバードビジネススクール教授のアナンス・ラマン氏が、下の記事で語られています。
参考アパレルの常識を変えたワールドとZARA、なぜ明暗が分かれたのか(ダイヤモンド・オンライン)
あくまで「SCMに成功した理由の一部分」という前提で、要約してご紹介します。
ワールドの「アキュレート・レスポンス」
「アキュレート・レスポンス」とは「正しく応える」という意味です。アキュレート(accurate)は「正確」という意味です。
ワールドは市場のニーズに「正確に応えた」わけです。その「応え方」の具体例を、ラマン教授が下のように説明しています。
- ある服が品切れになった
- 追加で生産したい
- しかし、その服に使う「黒いボタン」がない
- 「じゃあ、グレーのボタンで行こう」と代替案を出す
- そして「完璧でなくても」スピーディーに応える
一見「当たり前」のようですが、これは決して当たり前ではありません。というのは、グレーのボタンに変えても同じように売れるのかという判断が必要だからです。
「グレーのボタン」程度なら、まだ簡単かもしれません。しかし、これがもっと大きな変更になったとき、どこまで担当者が決断を下せるか―。
と考えると「かなり難しい」ということがわかるでしょう。
決断を下すために必要な要素
具体的には、以下の要素を満たせば決断をできます。
- 責任者がデザインに精通している
- そもそも、その人が決断していい「社内ルール」になっている
- 現場のその材料を「すぐ確認できる」ようになっている
特に「2つ目が難しい」と考える社会人は少なくないでしょう。「絶対にやった方がいいとわかっていた」ことを、社内ルールでできなかった、という経験は、誰でも多少はあるかと思います。
3つ目の「材料の確認」ですが、たとえばボタンであれば「サンプルを全て、責任者の手元に揃えておく」などです。
いずれも発想としては、それほど難しくありません。そのため、現在ではワールド以外でもアキュレート・レスポンスに成功している会社は多くあります。そして、ワールドは一時期業績不振にあえぎましたが、現在では見事に復活しています。
参考アパレル大手ワールド、大リストラの次の宿題は?(ダイヤモンド・オンライン)
GAP・ユニクロ:製造小売業(自社の工程が広がるほど完璧に管理しやすい)
製造小売業は、今ではすっかり「元々あった言葉」にように定着しました。しかし、もともと発明したのはGAPとされます。
1986年に同社が自らの事業を「speciality store retailer of private label apparel」と説明したのです。日本語に訳すと、「独自のアパレルブランドの販売に特化した小売店」となります。
独自ブランドを「製造」しているので、短縮して「製造小売」というわけです。本来別々である「製造業」と「小売業」が、合体したわけですね。
製造小売は「商売の基本」である
実は、製造小売自体は商売の基本です。
- 和菓子屋さんが、
- 店の奥で製造して、
- 店頭で小売をする
という姿を想像するとわかりやすいでしょう。紀元前のローマのパン屋さんなど、大部分の商売は「本来、製造小売」だったのです。
つまり、GAPの発想は実は「原点回帰」なんですね。ただの原点回帰でなく「一段上の形で戻ってきた」のです。
- 一回りして「戻ってきた」けど、
- 実は「一段上」にいる
ということで、このような進化を「らせん的発展」といいます。哲学者ヘーゲルが説いた「事物のらせん的発展の法則」です。
参考ビジネスアイデアには「らせん的発展の法則」を!| GLOBIS知見録
製造小売がどうSCMになるのか?
ここからが本題です。製造小売について「コストダウンになる」ことは理解しやすいでしょう。ユニクロがこれで成功したことは、学生でも知っています。
では「SCM」にはどうつながるのか。これは、全工程を自社で手がければ、完璧に管理しやすいためです。
たとえば、出版取次のトーハンの事例がわかりやすいものです。トーハンのシステムは非常に優れています。しかし、
- 3,000社超の出版社
- 12,000店超の書店
- これらが関わるだけで複雑になる
というのは言うまでもないでしょう。たとえば書店であれば、集英社が「うちの本はうちで売ればよくね?」といって、「集英社書店」という書店を作ってもいいのです。
- 集英社の本しかない
- 代わりに、集英社の本はそこでしか買えない
- 集英社は、書店とも取次ともやり取りしなくて良くなる
ということです。「意外と行けるんじゃないか?」と思う人もいるでしょう。会社の規模を「意図的に小さく」すれば、成功する可能性もあります。
実際、ユニクロはそれで見事に「アパレルのトップ」に立ったわけです。それも世界トップレベルの企業です。
「SCMの作業自体をなくす」というSCM
ユニクロが実践したこと(上の集英社書店の例)は、間違いなくSCMです。しかし、そもそもSCMの作業自体をなくすという根本的なSCMなのです。
これは、移動手段でいうなら「新幹線の速度を向上させる」のではなく「リニアを発明する」のに似ています。東京―名古屋間を40分で移動するのは、新幹線では「どれだけ努力しても無理」なのです。「根本的なやり方を変えないといけない」わけですね。
ユニクロ(そしてGAP)のSCMは、そのように「根っこの部分に着手したSCM」といえるでしょう。
アパレルPOS:アパレル特有の機能でSCMがより効率的に
店舗のスタッフがそのまま「在庫のデータ入力・管理」をできるPOSは、どの業界でも急速に広まっています。それと同時に、全業界共通のPOSは使いにくいということにも、気づいている店舗さんが多いでしょう。
このため、アパレル業界でも「アパレルPOS」と呼ばれる、特化型のPOSが登場しています。弊社の「アパレル管理自動くん」もその一つです。
アパレルPOSだからできること
これは多くありますが、一例をご紹介します。たとえば、POSの主な機能である「マスタ登録」です。
これは「ジャンルによって商品を分類する」ものです。アパレルPOSの場合、最初から下のようなジャンルが用意されており、ワンタッチで分類できます。
- ブランド
- シーズン
- アイテム
- カラー
特にブランドとアイテムは「アパレルならではの固有名詞」が大量に登場します。それが最初からすべて用意されているのです。
これはほんの一例であり「アパレルPOSだから簡単にできるSCM」が多くあります。もちろん簡単なだけでなく、特化している分、レベルも自然に高くなります。
このような「アパレル特有のSCM技術」は、他業界とアパレル業界のSCMの違いの一つです(もちろん、それぞれの業界にやはり固有の技術があります)。
まとめ:サプライチェーンマネジメントの成功には、情報収集システムが不可欠
サプライチェーンマネジメントを成功させるには、何よりも「情報収集」が鍵となります。そのためには、花王が優秀なエンジニア陣を揃えているように「システムの構築・導入」が必要です。
アパレル店舗の場合、花王のように大規模な体制は当然必要ありません。アパレル店舗の運営に特化した、シンプルなアパレルPOSを導入するのがおすすめです。
そのようなアパレルPOSの中でも、特に高機能で簡単に操作できるのが、弊社の提供する「アパレル管理自動くん」です。
- 販売管理
- 在庫集計
- データ分析
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