まとめ

グローサラントとは?イオン・成城石井・ヤオコーの成功事例を解説!

2020/2/26

フードコート

飲食業界で新たなムーブメントとなっているグローサラント。

などの疑問を持っている方も多いでしょう。この記事では上の疑問に答えつつ、グローサラントの概要を解説します。また、アパレル業界の方に向けて「アパレル分野にグローサラントがどう影響するか」も解説します。

アパレル業界の方にも、それ以外の業界の方にも、グローサラントの概要をスムーズに理解していただけるでしょう。

グローサラントとは?

カフェ

グローサラントとは、簡単にいうと「スーパーとレストランが融合したもの」です。詳しい意味や語源などをまとめると、下のとおりです。

意味スーパー店内で、売場の食材を用いた料理を提供する業態
語源グローサリー(食料品店)とレストランの融合
現状イオン・成城石井・ヤオコーなどが展開

それぞれ詳しく説明していきます。

意味:スーパー店内で、売場の食材を用いた料理を提供する業態

調理

グローサラントの正確な意味は、

  1. 「スーパー店内」で、
  2. 「売場の食材」を用いて、
  3. 「料理を提供する」業態

です。この3つの条件が揃うとグローサラントになります。辞書の説明は下のとおりです。

スーパーマーケットの店内に飲食スペースを設け、売り場にある食材を用いた料理を提供する業態。
コトバンク「グローサラント」

ここで気になるのは、イートインやフードコートとの違いでしょう。これらの類義語との違いはこちらの段落でまとめています。

語源:グローサリー(食料品店)とレストランの融合

メニュー

グローサラントの語源・由来は下の2語です。

groceryグローサリー(食料品店)
restaurantレストラン

上の2つの単語を組み合わせた造語です。

参考グローサラント | goo辞書

現状:イオン・成城石井・ヤオコーなどが展開

現状の日本では、イオン・成城石井・ヤオコーの3社が下のような取り組みをしています。

イオン「ここdeデリ」展開。規模的に最も成功している
成城石井高級感で他スーパーと差別化
ヤオコー既存のデリカを強化する非完全型スタイル

それぞれの取り組みの詳細は、上の表のリンク先の段落で解説しています。

グローサラントと類義語の違い

グローサラントと似た言葉の違いをまとめると、下のようになります。

イートインとの違いその場で調理する(出来合いではない)
レストランとの違い売場のスーパーの食材を使う、食材がわかる
フードコートとの違い飲食店がスーパーの直営

それぞれ簡単に補足していきます。

イートインとの違い:その場で調理する(出来合いではない)

イートイン

グローサラントは、注文を受けてその場で調理します。レストランと同じです。

イートインは、調理をしません。すでに出来上がっているパンやおにぎりなどを、椅子に座って食べるだけです。

レストランとの違い:売場のスーパーの食材を使う、食材がわかる

グローサラントの料理は「そのスーパーの食品売り場の食材」を使います。そのため、同じ料理を自宅で再現しやすくなっています。

「あの売場のあのお肉を使えば、この料理ができる」というのがわかるのです。成城石井のグローサラントでは、レシピも提供しています。

フードコートとの違い:飲食店がスーパーの直営

フードコート

フードコートの各店舗は、スーパーの直営ではありません。スーパーは場所を貸しているだけです。

たとえばフードコートにマクドナルドが入っている場合、そのマックの店舗はマックが管理しているのです。これに対して、グローサラントの店舗はスーパーが直接経営しています。

つまり、スーパーが飲食業にも進出することになり、難易度は高いといえます。カスミ(茨城県のスーパーマーケットチェーン)の石井俊樹社長も「実質的な新規事業ともいえるもので、グローサラントについては慎重に検討している」と発言されています。

参考グローサラント/スーパーマーケットとレストランの運営手法の違いが課題 | 流通ニュース

イオン:「ここdeデリ」展開。規模的に最も成功

ここdeデリ出典:ここdeデリ(イオン)

イオンのグローサラントの取り組みのポイントは、主に下の3点です。

それぞれ詳しく説明していきます。

サンドイッチの具は「売場の惣菜をパンに挟む」やり方

イオンのグローサラントでは「売場の惣菜をパンに挟んだサンドイッチ」を売っています。全店舗ではなく、千葉県の「イオンスタイル新浦安MONA」で展開する「Sandwich shop」で、このやり方を実践しています。

お客さんは、このサンドイッチを美味しいと思ったら「売場の惣菜&普通の食パン」を買って帰り、自宅でも再現できるのです。「挟むだけで再現できる」ということで、料理が苦手な人や忙しい人にもグローサラントのメリットを実感しやすいでしょう。

参考イオンの「グローサラント」型店舗が楽しすぎ! その理由とは?

バルでは売場のワインやビールを持ち込める

バー

イオン新浦安店には「新浦安バル」というバーがあります。ここは、近くの売場(リカーコーナー)で売られているワインやビールを購入し、持ち込んでカウンターで飲むことも可能です。

この仕組みはイートインそのもので「本格ワインをその場で飲める、高級なイートイン」といえるでしょう。もちろん、ただのイートインではなく、シンプルなおつまみ用料理を出してくれる、サーバーで生ビールを注いでもらえるということで、通常のバルのスタイルも維持しています。

わかりやすくいうと「イートインとグローサラントの中間」です。

海鮮丼・ステーキなど多ジャンルの専門店を出店

ここdeデリはジャンルが豊富な点も特徴です。下のようにあらゆるジャンルでグローサラントに取り組んでいます。

ジャンル店舗名
海鮮丼魚魚菜(ととさい)
ステーキ・ハンバーグ店ガブリングステーキ
パスタペルグラーノ
ジューススタンドDepot de sante(デポデサンテ)
チョップドサラダ専門店サラダビッツ
サンドイッチショップdeli Sand(デリサンド)

あらゆるジャンルに取り組むことで、さまざまな料理が好きな層に対して「イオンのグローサラント」をアピールできます。また、ジャンルごとのデータを取ることも可能です。

参考「イオンの即食戦略」の大きな可能性(商業界)

イオンスタイルumieは300席で大規模展開

フードコート

イオンのグローサラントの取り組みで、特に大規模なのは「イオンスタイルumie」のもの。

  • イオン最大級の食品売り場である
  • イートインスペースが約300席ある

上の2つのデータでも、非常に大規模というのが実感できるでしょう。グローサラントに取り組んでいる企業自体が少ないため、おそらくこれが「今日本で最大のグローサラント」になるはずです(2020年2月時点)。

参考イオン/イオンスタイル、G.Gストアにグローサラントを導入 | 流通ニュース

成城石井:高級感で他スーパーと差別化

成城石井出典:グローサラント業態開発プロジェクト

成城石井のグローサラントの特徴をまとめると、主に下の3点となります。

それぞれの特徴について解説していきます。

イオン・ヤオコーより高級志向が強いのが特徴

成城石井はもともと「高級スーパーの代名詞」です。そのため、グローサラントも自然に「イオンやヤオコーより高級志向」となります。

2020年2月時点では、展開されているのはトリエ京王調布店・アトレ新浦安店の2店舗で、まだ実験の段階といえます。

レシピカードで食材がわかる。9割は売場で買える

成城石井のグローサラントでは「レシピカード」が提供されています。ここに食材と作り方が書かれているため、料理が気に入ったら同じ食材を売場で買い、家で作ることが可能です。

食材の9割は成城石井の売場にあるため、ほぼ同じ料理を再現できます。

参考『成城石井』が本気を出した! レストラン&スーパー融合型の「グローサラント」が今年早くも注目株(dressing)getnavi運営

アトレ新浦安店は「駅ナカ」の小規模スペースで挑戦

駅ナカ

成城石井のグローサラント2号店は、アトレ新浦安にオープンしています。これは「駅ナカ」の店舗で、スペースが非常に小さいのが特徴です。グローサラントは、

  • お客さんが食べるスペース
  • スタッフが調理するスペース

の両方が必要であるため、スペースの小さい場所で展開するのはもともと難しい業態です。それに挑戦しているのが、成城石井のグローサラント2号店のユニークな部分といえます。

自家製惣菜工場・セントラルキッチンをフル活用

上に書いた2号店は、スペースの問題を解決するため「調理スペース」をなくしました。「お客さんが食べるスペース」だけにしたのです。

代わりに、調理は成城石井の惣菜工場であるセントラルキッチンで行います。グローサラントは原則「その場で調理する」のですが、この成城石井の例では「柔軟に対処している」ということです。

次で説明するヤオコーも同じですが、グローサラントは必ずしも「辞書の定義どおりに完全な形で導入しなければいけない」というものではありません。

参考「成城石井 アトレ新浦安店」でスタートする、新“小型”グローサラント!(成城石井)

ヤオコー:既存のデリカを強化する非完全型スタイル

ヤオコー出典:ヤオコー

ヤオコーのグローサラントの取り組みは、以下の点がポイントです。

それぞれのポイントについて説明していきます。

完全なグローサラントでなく、既存のデリカ(惣菜部門)を強化する

ヤオコーはまず、南古谷店でグローサラントに近い業態を試しました。バイオーダー型という「注文を受けてから調理する方式」のイートインスペースです。

そして、試した結果以下の結論に達しました。

  • その場で調理する方式は、相当な売上がないと利益が出ない
  • そのため、既存のデリカ(惣菜部門)を強化する方が有効

この結論から、今後導入可能な店舗で「20席程度のイートインスペース」を増やしていく計画です。

参考ヤオコー/目標年商18億円、埼玉県東松山市に標準店進化型の旗艦店(流通ニュース)

既存のイートインを拡大した「ヤオコーカフェ」を展開

ヤオコー出典:ヤオコー・公式Facebook

「デリカを強化する」というのは、具体的に何をするのか―。取り組みの一つが「ヤオコーカフェ」の展開です。

上の写真のように、おしゃれなカフェ風の豪華なイートインスペースを提供しています。

全部その場で調理はしない「臨機応変」のスタイル

ヤオコーカフェで主に食べられるものは「パン」です。そして、このパンを提供するベーカリーは、他のスーパーと同様「ほとんどを店内で焼く」ものです。

ただ、ヤオコーは「全て店内で調理する」というスタイルにはこだわっていません。一部店舗外で焼成したパンをい持ち込むことで、運営を効率化しています。

この点は、成城石井が2号店で「セントラルキッチンを活用した」ことと共通します。

グローサラントに見るアパレル事業のヒント・3つ

女性スタッフ

グローサラントという飲食業界の新しい流れから、アパレル業界は何を学ぶべきか―。特にヒントとなる点は下の3つです。

それぞれ詳しく説明していきます。

実店舗のライブ感で通販と勝負する

アパレルの実店舗を経営される方々、働かれているスタッフの方々にとって、アパレル通販の存在はやはり脅威でしょう。2019年に何かと話題を振りまいたZOZOさんも、まさにアパレルネット通販の企業です。

もちろん「自分たちもネットで販路を広げる」という選択肢はあります。しかし、実店舗を構えてコストを支払っている以上、やはり実店舗でも利益を出したいものです。

その点で、グローサラントの着眼点は参考になるでしょう。「実店舗のライブ感で通販と勝負する」という着眼点です。

これだけはゾゾスーツのような試みが成功して、自宅で試着をできるようになったとしても、実店舗が通販に永遠に負けない部分です。実際、CDが売れなくなった音楽業界でも、ライブの売上は昔より伸びています。

スーパーがグローサラントによって「ライブで勝負する方針」については、下の@DIMEの記事でも詳しく考察されています。

参考急増する「グローサラント」はスーパー業界の救世主となるか?

スーパーの客層変化によりアパレル出店先も変化する

スーパー

グローサラントによって、スーパーの食料品売場はこれまでよりオシャレになります。ただのイートインがレストランに変わるため、必然的にグレードが上がります。

そうなると、自然にスーパーの客層も変化します。今までよりもオシャレな客層、つまり「ファッション感度の高い客層」が増えるでしょう。

スーパーが「ブランディング」に乗り出す可能性も

さらに、スーパーの側がアパレル店舗と組んで「ブランディング」を始める可能性もあります。簡単にいうと、グローサラントの周りにおしゃれな店舗がある方がいいわけです。

もちろん、グローサラントの近くには「食料品売場」が必要です。これは大前提ですが、その周辺のエリアに持ってくる店舗が、これまでとは変わるはずです。

現状では、1Fの食料品売場周辺には、以下のような「実用系」の店舗が多くなっています。

  • クリーニング
  • 靴修理
  • スマートフォン修理
  • 合鍵製造
  • 1000円カット
  • 花屋さん
  • 薬局

オシャレな店舗はすべて2階から上だったわけです。しかし、今後は若い女性に人気のアパレル店舗が「1階の食品売り場正面」に来る可能性もあります。

新業態を「完璧でなく柔軟に」取り入れるスタイル

今回紹介した3社は、いずれもグローサラントを「完璧でなく柔軟に」取り入れています。

イオン新浦安バルは半分イートインである(持ち込み可)
成城石井2号店の調理はその場ではなく、セントラルキッチンでしている
ヤオコー既存のデリカとイートインを強化している

グローサラントという新しい業態が生まれても、それを「完璧な形で導入する」ことにこだわる必要はないのです。これはアパレルの店舗や企業が、新しい業態を試すときにも参考になる考え方でしょう。

まとめ:グローサラントに学び実店舗の強みを追究しよう

カフェ

アパレル業界に限らず、グローサラントから「実店舗の強み」を学ぶことは、店舗経営者・店舗スタッフにとって大きな意義があります。実店舗の強みを考えるにはアイディアも重要ですが、アイディアの元となるデータを正確に集計・分析することも欠かせません。

アパレル店舗でそのようなデータ分析を行うのであれば、高機能なクラウドシステムを導入するのがおすすめ。この分野でアパレルに特化した「アパレル管理自動くん」であれば、実店舗からECサイトまで、あらゆるデータを統合して収集・分析できます。

的確なデータ分析によって、自社・自店が持つ「実店舗の強み」を明確にし、さらに高いレベルに運んでいきましょう。

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