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バーチャルファッションとは?VRで実現するアパレルの新しい形

2019/11/6

昨今、さまざまな業界や企業でVRを活用した取り組みが行われています。アパレル業界においては「バーチャルファッション」という言葉が注目を浴びていますが、中には以下のような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。

  • そもそも「VR」「バーチャルファッション」ってなに?
  • アパレル業界でどのようにVRが活用されているの?
  • VRを活用したファッションブランドの成功事例を知りたい

そこで本記事では、「アパレル業界とVR」というテーマに焦点を当て、アパレル業界がVRを導入するメリットや具体的な方法、そしてファッション×VRの成功事例について紹介します。ファッションブランドを運営している方にとっては必見の内容ばかりですので、ぜひチェックしてみてください。

 

VR(バーチャルリアリティ)とは

VRとは「Virtual Reality(バーチャルリアリティ)」の略で、日本語では「仮想現実」やそれを作り出す技術のこと。一般的には、ヘッドマウントディスプレイやコントローラーなどのデバイスを使用し、ユーザーを仮想空間に没入させることで、リアルな体験を提供することを指します。

最近ではバーチャル体験ができるイベントが開催されたり個人で利用できるゲーム機器が発売されたりするなど、私たちの生活にも身近なものになりつつあります。

もともとはユーザーに対して仮想的に作られた空間を視聴させるものだったVRですが、最近では視聴に加えて参加型のVRも登場しています。映像の中を自由に動き回ったり、映像内のものを手にとって使ったりすることが可能なのです。

VR技術を活用すると「自宅にいながら旅行気分を味わう」「遠方の住宅でも気軽に見学する」「人と接触せずにライブやコンサートに行く」なんてことが可能になるため、すでにさまざまな業界での導入が進んでいます。

バーチャルファッションとは

さまざまな業界で注目・活用されているVRですが、アパレル業界も例外ではありません。アパレル業界においては、「バーチャルファッション」という言葉を通じてVRが広まってきています。

バーチャルファッションとは、仮想現実の世界で体験できるファッションのこと。VRを活用して仮想空間内で自分のアバターやキャラクターを作り出し、好みの洋服やアイテムを選んでその着こなしやスタイリングを楽しんだり、イベントやファッションショーに参加したりすることができます。

また、VRを活用すれば、予め人の体のラインを3Dでスキャンし、バーチャル上で試着と服の製作を行うことも可能になります。衣服の製作にかかる手間やコストを大幅にカットすることができるようにもなるのです。

バーチャルファッションは、ファッションの創造性とデジタル技術の融合により、新たなファッション体験を提供したり、生産者に大きなメリットをもたらしたりするものとして注目されています。

アパレル業界がVRを導入する具体的な3つの方法

バーチャルファッションとひとことにいっても、「具体的にどう活用できるのかが分からない」という方も多いでしょう。

ここからは、アパレル業界やファッションブランドがVRを活用する具体的な方法を解説していきます。

バーチャルファッションショー

ファッションブランドが新作コレクションやトレンドを発表するためのイベント、ファッションショーでVRは活躍します。

バーチャルファッションショーでは、仮想空間上でモデルがランウェイを歩き、ファッションアイテムを披露します。視聴者は自宅やオフィスからVRデバイスを使って参加し、360度映像や立体音響による臨場感を楽しむことができます。海外のショーでも気軽に参加できるのがメリットです。

また、使いようによっては、視聴者がアバターやキャラクターを通じて自分自身もファッションショーの一部として登場する、参加型のバーチャルファッションショーを開催することもできます。

バーチャル展示会

バーチャル展示会は、ファッションブランドの新製品やコレクションを発表するための仮想空間上での展示イベントのこと。VR技術を使用して、商品のディスプレイや展示ブースをリアルに再現し、視聴者は仮想空間内を自由に移動しながら商品を鑑賞することができます。

商品の詳細情報やカラーバリエーション、素材の質感なども仮想空間上で提供され、顧客は商品についてより深く理解し、購買意欲を高めることができます。

時間や場所、天候に左右されることがない上に、2020年以降、大規模な展示会が困難になった中でも大勢の招待客を招くことができる方法です。

バーチャル店舗

仮想空間上に作られたアパレル店舗、バーチャル店舗では、商品の陳列やディスプレイ、試着や組み合わせスタイリングなどがリアルな店舗と同様に再現されます。顧客は自宅にいながら商品を選ぶ、詳細情報を閲覧する、仮想で試着するなど、リアルなショッピング体験を楽しむことができます。

バーチャル店舗なら、実店舗や通販サイトでの買い物と比較して、より満足度の高い顧客体験を提供することができるようになります。

また、バーチャル店舗では実際の店舗のように場所やスタッフを用意する必要がないため、大幅なコストカットができるのもメリットです。

アパレル業界がVRを導入するメリット

アパレル業界やファッションブランド1つ1つがVRを導入すると、生産者や消費者に以下のようなメリットをもたらします。

  • リアル店舗と大差ない顧客体験の提供
  • 商品の魅力のリアル度向上
  • 実店舗を訪れない顧客層の獲得
  • 新たな収益源・ビジネスモデルの確保
  • ブランドのイメージアップ

それぞれ詳しく見ていきましょう。

リアル店舗と大差ない顧客体験の提供

VRを導入することで、顧客は仮想空間内でリアルな店舗体験をすることができるようになります。

これまでも、通販サイトやデジタルカタログの普及により、自宅や外出先にいながらファッションブランドの商品を見たり購入したりすることは可能でした。しかし、それはあくまでもスマホ上での体験でしかありません。

一方、VRでは店内を360度で視覚的に再現し、商品の陳列やディスプレイをリアルに再現できるため、オンライン上でも実際の店舗で買い物をしているかのような感覚が生まれます。顧客は商品を見たり触ったりすることができ、試着や複数のアイテムを組み合わせることも可能になるのです。

商品の魅力のリアル度向上

通常の通販サイトでは衣服やアイテムはモデルが着用していることが多く、イメージが湧きにくいというデメリットがありました。これにより、生産者にとっては、購入意欲の高い顧客を取り逃していた可能性も考えられるでしょう。

しかし、VRを使用すれば、顧客は実際に商品に近づいて見ることができます詳しい色合いやサイズ感を把握したり、他の商品と見比べたりすることができるようになり、顧客の購入意欲を妨げる要因を取り除くことができるのです。

実店舗を訪れない顧客層の獲得

実店舗に足を運ばない顧客層をターゲットにすることができるのも、VRを導入するメリットの1つ。

VRを導入すると。地理的な制約や時間の制約を気にせずインターネット上で仮想店舗を訪れることができるため、新たな顧客を取り込む機会が増えます。例えば、「自分がブランドの雰囲気に似合わない気がしてなんとなく店舗に行けない」「人との接触を控えるために普段は通販を利用している」という層も取り込むことが可能になります。

忙しい生活をする人が増える中でオンラインショッピングの需要が高まっている現代社会では、顧客が自分のペースでショッピング体験を楽しめることが重要です。

新たな収益源・ビジネスモデルの確保

VRを導入することで、新たな収益源やビジネスモデルを確保することができます。例えば、VR空間内での広告やスポンサーシップ、仮想アイテムの販売、仮想ファッションイベントの開催など、VR独自の収益化手段が存在します。仮想空間で使えるファッションアイテムをNFT(非代替性トークン・ブロックチェーンを基盤にして作成する代替不可能なデジタルデータのこと)の形式で販売するといったビジネスモデルも構築できます。

また、顧客の購買データや嗜好の情報を収集し、個別のマーケティングや商品開発に活用し、売上を伸ばすことも可能です。

ブランドのイメージアップ

VRを導入することで、ブランドのイメージを向上させることができます。革新的な技術を採用することでブランドの先駆性や創造性をアピールし、顧客に対してブランド価値の向上を図ることができるようになるでしょう。

また、VRを通じて提供される豊かなファッション体験や顧客サービスは、ブランドの印象を強化し、顧客ロイヤルティ(企業やブランドに対する信頼心・愛着心のこと)を高める助けとなります。

【成功事例】ファッション×VRを取り入れたブランド

最後に、VRを取り入れた取り組みを行っているアパレルブランドの事例を紹介します。

「バーチャルマーケット」:世界最大のバーチャルイベント

バーチャルマーケット」は、2018年から開催されている世界最大級のバーチャルイベント。仮想空間内にある会場で、さまざまな商品(洋服・デジタル機器・飲食物など)を売買したり映画や音楽ライブを楽しんだりできるイベントで、2022年夏の開催では約2週間で世界中から100万人以上が参加しました。

そんなバーチャルマーケットに、セレクトショップ「BEAMS」が出店。実店舗で働く50名もの店員がアバターとなって登場し、洋服や雑貨などのリアル商品を多くの人に販売しました。期間中は専用のSNSも開設し、スタッフが交代で情報発信も行ったそうです。

タレントを招いてイベントを行ったり、イベントの参加者に向けてお土産を用意したりするなどさまざまな工夫の結果、多くの動員を成功させました。2023年も開催が予定され、大きな盛り上がりが期待されています。

「BALENCIAGA」:ビデオゲーム内でのバーチャル展示会

出典:BALENCIAGA

人気ハイブランド「BALENCIAGA(バレンシアガ)」は、2021年秋、新作コレクションの展示会をオリジナルのビデオゲーム内で開催。ゲーム内ではモデルが新作を身にまとって登場し、顧客はゲームをする感覚で展示会を楽しみました。

通常の通販サイトでも新作コレクションを見ることができますが、バーチャル展示会ではよりリアルに、実際に服を着ているモデルをさまざまな角度から見ることが可能です。実際の質感や着用したときのバランス、歩いた際のなびき方まで見ることができるため、顧客の満足度は高まることが考えられます。

「VRoid WEAR」:アバターを用いた新プロジェクト

出典:VRoid

自身で自由に作り上げたアバターに向けて、ファッションを提案するプロジェクト「VRoid WEAR」。アバターに洋服を始めとしたアイテムを着せ替えて写真撮影をしたり、連携しているVR/ARサービスにて着せ替え後のアバターを使用することも可能です。

そんな「VRoid WEAR」は、人気ファッションブランド『ユニクロ』とコラボしたりモデルにVTuberを起用したりするなど、さまざまな工夫により話題となりました。

既に時代はただのアバター作りには留まらず、創作や自己表現の場としてバーチャルファッションが活用されています。今後も、リアルなファッション業界がこれまで作り上げてきたデザイン性を活かした、新たな市場が発展していくことでしょう。

「Voyage」:VRChat向けの新作ファッションショー

出典:MoguLive

2023年5月、ライブストリーミング配信プラットフォーム「Twitch」にて、VRChat向けアバター衣装が登場するバーチャルファッションショー「”Voyage” 2023 Spring/Summer」が開催されました。

イベント内で紹介されたのは、VRChat向けのアバターやアバター衣装。衣装を身にまとったアバターがランウェイ上を歩き、7つのブランドの新作商品の魅力を発信しました。イベントの前半ではバーチャルシンガーやダンサーが登場し、イベントは大いに盛り上がりを見せました。

このように、リアル商品以外に焦点を当てたバーチャルファッションショーも多く開催されています。VRが生活の一部となってきている今、その需要はますます広がっていくでしょう。

「Nike Fit」:アプリを用いた足のサイズ計測

スポーツ関連の靴、アパレル、機器、アクセサリーなどを扱う「Nike(ナイキ)」では、公式アプリ上で自分の足のサイズを測定できるサービス「Nike Fit」を提供しています。

写真を撮るとVR機能がデータを収集し、足の長さや幅などさまざまなサイズを計測。ユーザー一人ひとりに適した商品がおすすめされ、ユーザーはサイズ違いによる返品の手間を防げます。さらに、アプリ内に保存された足のサイズはQRコードとして保存でき、リアル店舗に行った際も手軽に店員に共有することが可能です。

「Nike Fit」のように、オンラインとオフラインを組み合わせて活用できるのも、VRの特徴です。仮想空間だけに留まらずリアルと融合させることで、顧客体験の向上を実現できます。

【番外編】アルティメットゆい氏

出典:Real Sound

VRは、ファッションブランドだけでなく、アパレル業界で働く個人としての活用方法もあります。今回紹介するのは、VRファッションデザイナー・アルティメットゆい氏

アルティメットゆい氏は、VRゲームにハマったものの、アバター用に欲しい服がなかったことをきっかけに、バーチャル衣装ブランド「EXTENSION CLOTHING」を設立。「自分が欲しいアイテム」を中心に、さまざまなアイテムを作り出しています。

ブランドの中では自身もモデルとして登場し、洋服の魅力を伝えています。

アパレル業界のVR活用法はさまざま!今後も目が離せない!

本記事では、アパレル業界がVRを導入するメリットを解説しながら、実際にVRを導入しているファッションブランドを紹介しました。

さまざまな業界でVRが話題となる中、アパレル業界でも、バーチャルファッションショーやバーチャル展示会、バーチャル店舗など、さまざまな取り組みが行われています。どれもユーザーの利便性や顧客ロイヤルティを上げるのに効果的で、今後もますます広がっていくでしょう。

今後もさまざまな企業やブランドが発信する「バーチャルファッション」から、目が離せません。

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