キャッシュレスと合わせて政府が推進するレシートレス。このレシートレスに関心がある人が知りたいのは、主に以下のような点でしょう。
この記事では上記の内容に加え、アプリ「スマートレシート」の詳細や、各地域での実験事例を合わせて解説します。これらの内容を読むことで、レシートレスや電子レシートの全体像を、スムーズに理解できるでしょう。
目次
レシートレス(電子レシート)とは
レシートレスとは電子レシートを導入すること、あるいは導入した状態です。そのため、レシートレスの意味を説明するには「電子レシートの意味」を説明する必要があります。
電子レシートの意味と概要をまとめると、下記のとおりです。
以下、それぞれ詳しく説明していきます。
紙のレシートを電子化したもの
出典:11月オープン新生「渋谷パルコ」 そのカオスな全容とは? | 日経クロストレンド
電子レシートは、紙のレシートを電子化したものです。実際に電子化された画面は上のようなものです。
買い物の情報をアプリに送る
電子化する仕組みは簡単で、レジのデータをアプリに送るということです。つまり、電子レシートを使うには「アプリが必須」となります。
この点はキャッシュレス決済と同じく、国が進める政策であるものの「国民側にもスマホが必要」という状況です。新技術を国内で広める以上、国民の側にも新しい機械に適応してもらう必要がある、ということです。
現在は「スマートレシート」一択(東芝テック)
出典:スマートレシート
2020年時点で、電子レシートのサービスを日本で提供しているのは東芝テックのみです。同社が提供するスマートレシート(略称:スマレシ)というサービスで、経済産業省・内閣府などと連携して事業を進めています。
参考東芝テックが進める電子レシート「スマレシ」 | 内閣府・国家戦略特区
現時点では電子レシートはスマートレシート一択であり、レシートレスを実現したい場合は、このサービスの導入が必要です。アプリの詳細はこちらの段落でまとめています。
電子レシートの仕組み(店舗側/利用者側/よくある疑問)
電子レシートの仕組みは、店舗側・利用者側でそれぞれ知りたい部分が異なります。また、双方からの「よくある疑問」も共通します。ここでは、それらの内容を下記の段落で、それぞれ解説していきます。
以下、それぞれの詳しい説明です。
電子レシートの仕組み・店舗側
電子レシートの仕組みを、店舗側でまとめると下のようになります。
それぞれの手順を詳しく解説していきます。
①:顧客のアプリのバーコードを読み取る
まず、レジでのお勘定の最初に、顧客のアプリのバーコードを読み取ります。
顧客が先にアプリを開き、バーコードの画面を用意していることが必要です(そうでないと時間がかかります)。
そのため、レジの並ぶ位置などにPOPで「スマートレシートをご利用の方は、先にバーコード画面をご用意ください」などの注意書きをするといいでしょう。
②:後はいつも通りPOSレジを使う
その後はいつものようにPOSレジで決済をします。会計前に「従業員が自分のバーコードを読み取る」ような作業が、一つ追加されただけだと考えるとわかりやすいでしょう。
(バーコードは顧客が提示したときだけ読み取ればいいため「忘れていてできなかった」ということもありません)
③:そのデータを「スマートレシート」のサーバーに送る
読み取ったデータは「スマートレシート」のサーバーに自動送信されます。上の図のとおりです。
スマートレシートサーバーに直接送らず、自社の本部に先に送る方法もあります。上の図の左下「スマートレシート中継サーバ」と書かれているものです。
どちらにしても、最終的にはスマートレシートのサーバーで処理されます。このサーバーは東芝テックが管理しています。
④:スマートレシートが顧客のスマホにデータを送る
スマートレシートセンターに届いた情報は、顧客のスマホに届けられます。情報が届くタイミングは「即時」です。ただし、店舗のポイントカードなどと連携を行う場合は、初回のみ「翌日」となります。
電子レシートの仕組み・利用者側
利用者(お客さんの側)は、以下の手順で電子レシートを使えます。
それぞれ詳しく説明します。
①:アプリをダウンロードする
まず、上のGoogle Playのページや、Apple Storeのページで、スマートレシートのアプリをダウンロードします。
②:アプリ画面を支払い時に見せる
出典:東芝テック、電子レシート「スマートレシート」の利用料を無料に | ダイヤモンド・チェーンストア
上の画像の「バーコード画面」をレジで見せます。
③:後はいつも通り(やることなし)
その他はいつも通りで、やることはありません。店舗によっては会員カード(会員アプリ含む)を同時に見せる必要があります。
④:アプリに買い物データが反映されている
支払いが終わったら、アプリの中で買い物のデータが反映されています。下のような画面です。
出典:みやぎ生協、初の電子レシート「スマートレシート」登録者が1万件突破 | 日本食糧新聞
反映のタイミングはほぼ即時です。公式アプリのページでも「すぐにレシートが届きます」と書かれています。
仕組みでよくある疑問と答え
電子レシートの仕組みについて、よくある疑問は以下のものです。
それぞれの答えをまとめていきます。
店舗の会員登録は必要?(利用者側)
出典:サンプラザカードの提示で、スマホで電子レシートを管理できます! | サンプラザ
電子レシートの仕組みとしては、店舗ごとの会員登録はなしでも利用できます。しかし、店舗ごとのルールとして「会員登録が必須」ということも多くあります。
たとえば、上の「スーパーマーケット・サンプラザ」の場合、サンプラザカードが必要です。初回のみ一緒に提示し、連携処理をする必要があります。
こうした条件はありますが、普段買い物する店舗なら、会員カードを作っておく方がお得なものです。そのため、この手間がデメリットになることはないでしょう。
会員カード・ポイントカードと連携できる?(店舗側)
店舗側としては、会員カードやポイントカードとの連携を当然したいでしょう。これは上の画像のとおり問題なく可能です。
会員カードと連携させる場合、初回のみ反映に時間がかかります。通常はデータが即時アプリで反映されますが、初回のみ翌日以降となります。
何があれば導入できる?(店舗側)
導入にはPOSレジが必要です。スマートレシート・公式サイトの説明図でも、下の画像のように「店舗にPOSレジがあること」が条件となっています。
出典:電子レシートサービス スマートレシート | 東芝テック
POSレジが行うのは、下の3つの作業です。
- バーコードの読み取り
- 連携カードの読み取り(ポイントカードなど)
- 電子レシートの送信
もともとPOSレジはこれらの読み取り・送信の作業をしている機械です。その作業の延長として、POSレジがあれば電子レシートを導入できます。
レシートレスのメリット・デメリット(店舗側/利用者側)
レシートレスには店舗側・利用者側で、それぞれのメリットとデメリットがあります。
上記のように、それぞれの段落に分けて説明していきます。
メリット
メリットは店舗側と顧客側で、下のようになります。
店舗側 | 印刷コストと人件費の削減、レジ混雑解消 |
顧客側 | 無駄な紙をなくせる、記録が残る、待たされない |
それぞれ詳しく説明していきます。
店舗側:印刷コストと人件費の削減、レジ混雑解消
店舗側には、下のようなメリットがあります。
- 印刷コスト削減
- 人件費削減
- レジ混雑解消
特に大きいのは印刷コスト・人件費の削減です。印刷コストについては、北雄ラッキーが1店舗のみで年間20万円を削減できる見込み、という試算を出しています。
参考北雄ラッキー、電子レシート導入 年間20万円削減 | 日本経済新聞
同社の合計27店舗では、紙のレシートにかかる費用が年間約800万円に上ります。この削減の手段として、電子レシートが期待されています。
顧客側:無駄な紙をなくせる、記録が残る、待たされない
顧客側のメリットは下のとおりです。
- 無駄な紙をなくせる
- 記録を自動的に残せる
- レジで待たされない
東芝テックの調査によれば、69.2%のユーザーは紙のレシートに不満を抱えており、最も多い不満が「レシートで財布が膨らむこと」です。電子レシートはその不満を解消できます。
記録を残せる期間は400日となっています。そのため、1年程度でデータを別の場所にまとめる必要がありますが、1年あれば期間としては十分でしょう。
レジでの待ち時間については、店舗や通信の状況によっては、逆に時間がかかることもあります(この点はクレジットカードでの支払いと同じです)。
そのため、すぐに待ち時間が改善されるわけではありません。しかし、長期的には電子レシートの方が待ち時間が短くなるのは明らかです。
デメリット
レシートレスのデメリットは、店舗側・顧客側でそれぞれ下のようになります。
店舗側 | 対応レジの導入、初期の操作訓練が必要 |
顧客側 | 個人情報漏洩のリスクがある、スマホが必要 |
それぞれ詳しく説明していきます。
店舗側:対応レジの導入、初期の操作訓練が必要
店舗側では、対応するPOSレジを導入する必要があります。また、初期はスタッフに対する操作訓練も必要となります。
これまでPOSレジを導入していた店舗であれば、通常業務の延長で導入できます。しかし、POSでない従来のレジスターを導入していた場合、POSレジの操作訓練も必要です。
顧客側:個人情報漏洩のリスクがある、スマホが必要
顧客側には、個人情報漏洩のリスクがわずかにあります。ただ、これはクレジットカードやキャッシュレス決済も同じであるため、レシートレスだけの問題ではないといえます。
また、利用の条件としてスマホが必要です。スマホがない人にとってはこの点がデメリットですが、政府がこういった動きを国策として進めている以上「そろそろスマホを持つ方がいい」ともいえるでしょう。
レシートレス実験事例3選(町田市・沖縄県・みやぎ生協)
レシートレスの実験は、すでに2014年から始まっています。ここでは、下の3つの地域・自治体で行われた実験の事例を紹介します。
町田市 | 経産省とNEDOが27店舗2700名で実験 |
沖縄県 | 2018年に47店舗で6カ月間、3万人で実験 |
宮城県 | 2014年にみやぎ生協組合の店舗で、博報堂などが実験 |
町田市:経産省とNEDOが27店舗2700名で実験
出典:電子レシート実証実験、東芝テックやミニストップ | 日本経済新聞
東京都町田市では、以下の内容で実験が行われました。
主催 | 経済産業省、NEDO |
時期 | 2018年2月13日~2月28日 |
店舗数 | 27店舗 |
実験人数 | 2,700名 |
参考東京・町田市で「電子レシート」の実証実験、複数社の27店舗でデータを連携 | デジタルクロス
この実験に参加したのは、以下の企業の町田市内の店舗です。
- ミニストップ
- 東急ハンズ
- ココカラファイン
- ウエルシア薬局
- 銀座コージーコーナー
- 三徳
この実験の後、経産省が参加した815名に対してアンケートを取りました。結果「今後も電子レシートを受け取りたいか?」という質問に対して、下のような回答割合となりました。
■質問:あなたは、今後も買物のレシートを「電子レシート」で受け取りたいと思いますか?
出典:電子レシートの標準仕様を検証する実験を行いました | 経産省
電子レシートだけで受け取りたい | 37.4% |
できれば電子レシートで受け取りたい | 38.7% |
電子レシートと紙のレシートの両方を受け取りたい | 9.7% |
どちらでもない | 9.7% |
できれば紙のレシートで受け取りたい | 2.5% |
紙のレシートで受け取りたい | 1.4% |
電子レシートも紙のレシートもいらない | 0.6% |
上から3つの数値を合計すると、「電子レシートを受け取りたい」と答えた人が85.8%ということです。そして「電子レシートを受け取れるお店で買い物したいと思うか」という質問に対しては、下のような回答となりました。
出典:同上
ぜひ電子レシートを受け取れるお店で買物したい | 21.2% |
せっかくなら電子レシートを受け取れるお店で買物したい | 46.1% |
電子レシートでも紙のレシートでも気にならない | 26.1% |
電子レシートしか受け取れないお店では買物したくない | 1.8% |
わからない | 4.9% |
上から2段の数値を合計すると67.3%となります。電子レシートが受け取れるならその店舗で優先的に買物したいという人が、約7割いるということです。
最終的には、アクセスや価格の安さ、品物の良さなどで店舗を決めるでしょう。ただ、少なくとも「電子レシートを導入してマイナスになることはない」といえます。
沖縄県:2018年に47店舗で6カ月間、3万人で実験
出典:東芝テック、沖縄で電子レシート実証 小売店と連携 | 日刊工業新聞
沖縄県では、下のような内容で実験が行われました。
主催 | 東芝テック・コープおきなわなど |
時期 | 2018年9月12日~2019年3月11日(6カ月間) |
店舗数 | 47店舗 |
実験人数 | 3万人(目標値) |
下の図のように、沖縄県で大きなシェアを持つ生協・スーパー・ドラッグストア・飲食店などが連携して実験に取り組みました。
企業名を文字で書き出すと下のとおりです。
この実験では、先ほどの図に書かれているように、お得なクーポンなども発行しました。当初の予定は6カ月間でしたが、1カ月延長して合計7カ月実施されています。
この実験の結果は、内閣府のサイトでも報告されています。それによれば、電子レシートの利用客は、利用しない一般の顧客と比較して、下のようなデータが出たということです。
- 毎月の購買金額が5,000円高い
- 来店回数は2倍(多い)
これは「もともとよく来店するお客さんだったから、電子レシートにも興味を示した」という可能性もあるでしょう。そのため「電子レシートの導入によって、これだけ数字が増えた」とは限りません。
しかし、「元からの常連さん」が好んで電子レシートを使ったのであれば、電子レシートの導入は常連客にも待ち望まれているといえます。つまり、常連客に長く利用してもらうためにも、積極的に導入する方がいいわけです。
参考国内初、沖縄県全域での電子レシートを活用した販売促進連携 | 東芝テック
東北4県:14~15年、みやぎ生協・いわて生協など82店舗で導入
出典:人と店とを情報でつなぐ「スマートレシート」| 日経BP
レシートレスの最初期の実験事例は、宮城県を中心とした東北4県のものです。以下の概要で実験が行われました。
主催 | コープ東北サンネット・東芝テック・博報堂 |
時期 | 2014年1月22日~3月25日 |
店舗数 | 当初・29店舗/2015年5月時点・82店舗 |
実験人数 | 累計約1万人(2015年5月時点) |
主にみやぎ生活協同組合の29店舗で実施された実験ですが、利用者の92%が継続を希望するなど好評でした。このため、翌年2015年5月時点で下記4社の計82店舗にも電子レシートが導入されています。
- みやぎ生協
- いわて生協
- 生協共立社
- コープふくしま
この実験での成功が、後の町田市や沖縄県での事例につながったといえるでしょう。
参考博報堂など、スマホx電子レシート実証実験スタート | マーケジン
電子レシートアプリ「スマートレシート」とは
電子レシートのアプリは、現在「スマートレシート」一択です。同アプリの概要をまとめると、下のようになります。
それぞれの内容を詳しく解説していきます。
東芝テック提供、対象店舗で使える無料アプリ
スマートレシートを提供するのは東芝テックで、アプリの利用は無料です。アプリ内課金もありません(2020年7月時点)。
スマートレシートを使える店舗は、公式サイトの下のページで一覧になっています。
家計簿アプリ「レシーピ!」と連携可能
出典:レシーピ!
TSVデータとして出力、PC・エクセルでの管理が可能
スマートレシートのデータは、PC用に出力できます。公式サイトの説明は下のとおりです。
「その他」画面の「レシートデータ出力」より行えます。 指定のメールアドレス宛にTSV形式のファイルを送信します。
使い方について | スマートレシート
TSVファイルは、わかりやすく言うと「テキストファイル」です。テキストとの違いは「データがタブで区切られている」ことです。
8月1日 | 歯ブラシ | 100円 |
8月2日 | おにぎり | 120円 |
8月3日 | 焼きそば | 400円 |
たとえば上のデータをTSVにすると、下のようになります。
8月1日 歯ブラシ 100円
8月2日 おにぎり 120円
8月3日 焼きそば 400円
このデータをエクセルで読み込むと、先程の表のようになります。こうしたデータに出力できるので、パソコンでの編集も可能です。
まとめ:レシートレス時代にはPOSレジの導入が必須
レシートレスはキャッシュレスに次ぐ国策であり、今後確実に普及していきます。そして、レシートレスに適応するためにはPOSレジの導入が欠かせません。
POSレジのサービスは多く存在しますが、アパレルの店舗に導入するのであれば、アパレル業務に特化したPOSレジを選ぶのがベストです。そして、そのようにアパレル業務に特化したPOSレジが、弊社の提供する『アパレル管理自動くんPOSレジ』です。
アパレル管理自動くんPOSレジは、同じくアパレル事業に特化した高機能クラウドシステム『アパレル管理自動くん』と連携することで、さらなる業務の効率化を図れます。
それぞれの詳細は下記のボタンで紹介しています。レシートレスやキャッシュレスへの対応を強化したいと考えている店舗経営者の方は、ぜひ弊社のアパレル管理自動くんPOSレジ・アパレル管理自動くんの詳しい機能をご確認ください。御社の経営にとって、きっと有意義なヒントとしていただけるでしょう。
アパレル企業のためのクラウドPOSレジ