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不況に強いアパレルECとは?市場動向にみる越境EC・SNS活用術

2022/5/2

市場動向

外資系ブランドの日本撤退や国内のアパレル大手の店舗一斉閉店のニュースも相次ぎ、アパレル不況と言われるなか、新型コロナウイルスの拡大が市場に追い打ちをかけました。

その一方で、アパレルのEC市場は成長を続けており、EC事業を強化することでコロナ禍でも業績を伸ばしている企業も多くあります。

この記事では、アパレル不況の要因と不況に強いECとそうでないECの違い、アパレル業界の今後の動向について考えていきます。

アパレル不況の要因とは

アパレルのセール

アパレル業界が不況に陥ったのは、バブル崩壊の後。

1990年に約15兆円だった国内のアパレル市場は2010年には10兆円までに減少し、それ以降は横ばいの状況が続いています。

国内アパレル供給量・市場規模の推移
出典:日本繊維産業連盟新春講演会 繊維産業の現状と経済産業省の取組 | 経済産業省 生活製品課

そして、2020年には新型コロナウイルスの拡大によりアパレル業界は追い打ちをかけられることとなりました。

ここからは、アパレル不況の要因となった下記の3つについて解説していきます。

  • 新型コロナウイルスの影響
  • 景気低迷による消費者ニーズの変化
  • ファッションの多様化

新型コロナウイルスの影響

新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や営業時間の短縮は、実店舗から客足が遠のく要因となりました。また、リモートワークの普及でビジネス・フォーマル系の需要が減少したことも、不況のアパレル市場にとって大きな打撃でした。

今後は、消費者の節約思考が高まり、ファッションのカジュアル化が加速すると見られています。

景気低迷による消費者ニーズの変化

景気が消費者の購買意欲にどのような影響を与えるのか、下図の「衣料品の購入単価の推移」で見てみましょう。

衣料品購入単価・輸入単価の推移
出典:日本繊維産業連盟新春講演会 繊維産業の現状と経済産業省の取組 | 経済産業省 生活製品課

1991年から2017年までに、衣料品の購入単価は6割ほどに減少しています。このことから、バブル崩壊後の景気低迷により消費者がファッションにお金をかけなくなったことが読み取れます。

そんな消費者ニーズに応えるように、90年代に紳士服のAOKIやユニクロが台頭し「低価格で実用的なもの」が消費者に受け入れられるようになりました。さらに2000年代に入ると、中国よりも生産コストの安い東南アジアへ工場を移す動きがアパレル業界に広まり、低価格競争に拍車をかけました。

そして、スマートフォンが普及すると消費者が「似た商品の中でより安いもの」を探しやすくなり、プロパー(正規価格)で商品が売れにくくなったこともアパレル不況の要因の一つと言えるでしょう。

ファッションの多様化

昨今の多様な価値観や個性を認める風潮、SNSの普及により、ファッションの多様化が進み、アパレル業界にも大きな影響を与えていますが、その多様化の波で苦戦しているのがファッション誌です。

SNSが普及する前の2000年代初めは、最新のファッショントレンドは雑誌から入手するのが一般的で、雑誌の表紙を飾るモデルやタレントがファッションのお手本として憧れを集めた時代でした。

ところが、スマートフォンを一人一台持つことが当たり前の時代になると、自己表現の場としてSNSが発展し、誰でも自分の日常や個性を発信できるようになりました。多くのフォロワーに支持されている「お洒落な一般人」が「インフルエンサー」と呼ばれるようになり、ファッションのお手本に取って代わったのです。

SNSの台頭でファッションが多様化したことによりファッション誌の求心力は衰え、売れ行きが伸び悩み、休刊ラッシュが続いています。長年、女子中高生に支持されてきたファッション誌『セブンティーン』が2021年の10月に終了したことは記憶に新しいのではないでしょうか。

ファッション誌がSNSに、モデルがインフルエンサーに置き換わったことで、消費者は自分の好みに近いお手本をSNSで検索し簡単に見つけられるようになった一方で、アパレル業界は以前よりもトレンドを発信することが難しくなったとも言えます。

不況でも成長を続けるアパレルEC市場、今後の動向は?

タブレットで売上を分析する男性

アパレルの市場は2010年以降、横ばいが続いている状況でも、EC市場は拡大を続けていて今後も拡大し続けると予想されます。

ここからは、EC市場拡大の要因と今後の市場動向、アパレル業界の動向について解説します。

コロナ禍でのアパレルEC市場動向は?

コロナ禍以前の2019年のアパレルBtoC-EC市場規模は1兆9,100億円、コロナ禍の2020年の市場規模は2兆2,203億円で前年比は16.25%となっており、アパレル不況下でも市場は拡大しています。

コロナ禍の巣ごもり需要が市場拡大の一因と考えられますが、近年注目すべき動向の一つとして、個人間EC(CtoC-EC)の急速な発展があります。

個人間EC(CtoC-EC)とは、個人間で商品を売買するECを意味し、メルカリやラクマなどのフリマアプリやヤフオク!などネットオークションなどが該当します。

CtoC-EC市場拡大の背景には、コロナ禍の巣ごもり需要もありますが、スマートフォンの普及とアプリの発展、匿名配送サービスができるようになったりなど、個人間でものを売買するハードルが下がったことも挙げられます。

CtoC-ECの伸び率出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました | 経済産業省

「景気低迷による消費者ニーズの変化」で、「消費者がファッションにお金をかけなくなった」と解説しましたが、これに伴ってフリマアプリで売ることを前提に商品を買う消費者も増えていますフリマアプリのおかげで、個人でものを売買することに対する抵抗感が薄れ、「高額な商品であってもフリマアプリで売れそうなら買う」という消費者が増えたことがCtoC-ECの拡大に一役買っているのです。

また、メルカリは2021年10月から ECプラットフォーム『メルカリShops』を開設しました。『Shopify』や『BASE』など先行している同種のサービスに対抗すべく、メルカリはメルカリShopsをアプリに併設する形でリリース。これによって、メルカリShopsに出店した事業者は独自で集客をしなくても、2000万人以上のメルカリユーザーに商品を訴求できるようになりました。

ECのネックとも言える集客をプラットフォーム側でカバーするという新しい手法で、誰でも簡単に参入し収益を上げられるように工夫されています。

この動きからも見てとれるように、今後はEC出店のハードルが下がり、多くの個人や企業が参入することが予想されます。市場が拡大する一方で、集客に成功し売れるECとそうでないECの二極化が顕著になるでしょう。

アパレル市場動向とEC化率

次に、アパレル市場の動向とEC化率の関係について見ていきましょう。

EC化率とは経済産業省のサイトで下記のように定義されています。

全ての商取引金額(商取引市場規模)に対する、電子商取引市場規模の割合を指します。

参考電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました | 経済産業省

2020年のアパレルのEC市場規模は2兆2,203億円で生活家電・AV機器・PC・周辺機器等(2兆3,489億円)に次いで割合が大きい市場となっており、EC化率も2019年の13.87%から2020年は19.44%へと拡大していることが見てとれます。

業界別のEC化率出典:電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました | 経済産業省

ここで、2020年コロナ禍の真っ只中でEC事業を展開した「しまむら」に注目したいと思います。

しまむらは、2018年から2020年2月期まで3期連続で減収減益となっていましたが、2021年2月期には大幅な増益に転じ、2022年2月期のEC売上高は目標には届かなかったものの、前期比64.7%増の28億円だったことを発表しています。

また、しまむらは注文商品のうち店舗での受け取りが9割という特徴があり、店舗受け取りを選択した消費者のうち5割は店舗でも買い物をして帰るという、ECと実店舗を掛け合わせたビジネスモデルを展開しています。

コロナ禍の影響で業界全体が実店舗の売り上げが減少する中で、2021年に増益に転じたしまむらは、ECと実店舗の合わせ買い戦略が功を奏していると言えます。

参考しまむらの2年目のEC売上は28億円、店舗受け取りは9割を維持 | Yahoo!ニュース ,財務業績情報 | しまむらグループ

また、この動きに追随するように、ワークマンはECでの宅配を廃止し、店舗での受け取りのみに移行することを公表しました。

このことから、しまむらやワークマンのように実店舗を多く持つ企業では、ECから実店舗へ消費者を呼び込む動きが加速すると予想され、業界の今後の動向が気になるところです。

参考ワークマン、ECの宅配やめ店頭受け取りのみへ 今後5年で移行 | ITmedia NEWSしまむらの2年目のEC

越境EC・SNS活用こそアパレル不況に打ち勝つポイント!

SNSのアイコンが映ったスマホ画面

「コロナ禍でのアパレルEC市場動向は?」でも解説しましたが、今後もアパレルEC市場は拡大を続け、多くの個人や企業が参入し、不況下でも業績を伸ばせるECとそうでないECの二極化が顕著になると予想されます。

それでは、不況に負けないECを作るポイントは何でしょうか?

答えは、下記の3つです。

  • EC事業の効率化
  • 海外需要の取込み
  • SNS、ライブコマースを活用した集客

それぞれ詳しく見てみましょう。

EC事業の効率化は必須!

ECサイト運用では商品の情報だけでなく、顧客情報、受注情報、仕入情報、在庫管理、支払い管理など多くの情報を管理する必要があり、店舗数が増えれば増えるほど管理が複雑になります。

以下の3つのチェックポイントで、自社のEC事業が効率化されているか確認しましょう。

  • 適切なシステムを導入しているか
  • システム同士の連携はできているか
  • 店舗間で商品情報や在庫がスムーズに共有できているか

EC向けの販売管理システムやECプラットフォームなどECサイトを運営するのに役立つ便利なツールはたくさんありますが、適切なシステムを導入していますか?

使わない機能がついていたり、自社の業態や事業規模に合っていないシステムでは効率が悪くなることもあります。

自社の業種に特化したシステムを導入すると、業界特有の悩みやルールに適応できるため、業務効率化への近道になります。

次に、複数のシステムを使い分けている場合、システム同士の連携ができているかも重要なポイントです。

例えば、在庫や取引などの管理は基幹システム(ERP)、会計や顧客管理などは販売管理システムのように使い分けているケースです。

このケースでは2つのシステムを連携させると、社内の情報と事業に関する情報を一元管理できるため、経営分析や戦略の面で大きなメリットがあります。

そして、EC事業強化のためには複数の販売チャネルを確保して販路を広げる必要があるので、複雑な管理を一元化できるシステムを導入することで作業の効率は大幅に改善され、限られたリソースを有効に活用できるようになります。

実店舗とECモールの店舗、自社ECサイトなど複数の販売チャネル間で商品情報や在庫をリアルタイムで共有できると、機会損失を防げるだけでなく、仕入れを適切に管理できるようになるため余剰在庫の削減にもつながります。

越境ECで世界へ!海外需要取り込みの重要性

越境ECとは海外の消費者へECサイトを通じて商品を販売することを指します。

『Amazon』をご存知の方は多いかと思いますが、Amazonはアメリカをはじめ世界中に2億人以上の有料会員を持ち、190万店舗が出店している越境ECサイトの最たる例です。

越境ECのメリットとしては、海外の需要を取り込めること、拠点を日本に置いたままでも始められることなどがあります。訪日した観光客が日本の製品を大量に購入していくことからもわかるように、日本の製品を買いたいと思っている人々は世界中に多くます。人口が多く地理的に近い中国や、経済が急速に発展している東南アジアなど世界には魅力的な市場がたくさんあるのです。

経済産業省が公開している資料によると、越境ECの市場規模が大きいアメリカ・中国の消費者が日本事業者から購入した商品の市場規模は下記の通りです。

令和2年において、日本・米国・中国の3か国間における越境ECの市場規模は、いずれの国の間でも増加しました。なお、中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆9,499億円(前年比17.8%増)、米国事業者からの越境EC購入額は2兆3,119億円(前年比15.1%増)であり、昨年に引き続き増加しています。

参考電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました | 経済産業省

次に、越境 EC で購入経験のある商品に関するアンケート結果である下記グラフを見てみましょう。「衣服、靴、アクセサリー」が 68%と最も高くなっています。(世界31ヵ国、約 34,000人を対象に、2018 年 3-5 月に実施された調査)

越境ECの商品別購入経験
出典:令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)報告書 | 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課

このグラフからアパレルECは海外において人気のカテゴリであることがわかります。

海外からの需要があることは予想されているのに、日本の越境EC市場はまだまだ発展途上でアメリカや中国と比べると参入している企業が少ないのが現状です。競合が少ない今だからこそ、越境ECを始めることで大きな利益を上げることができるのです。

SNS、ライブコマースの活用で集客UP!

「ファッションの多様化」でも触れましたが、SNSの普及でインフルエンサーが誕生すると、インフルエンサーの影響力をビジネスに活かそうとする動きが生まれ、企業がインフルエンサーに商品のPRを依頼するインフルエンサーマーケティングが活発になりました。

企業側が消費者に商品の魅力を発信する従来のマーケティングに比べ、インフルエンサーマーケティングはより消費者に近い目線で、共感力の高い商品PRが可能になるため、大きな注目を集めている販売手法です。

近年ではインフルエンサーに商品をPRしてもらうだけでなく、インフルエンサーと共同開発した商品を販売するコラボ企画を展開する企業も増えています。

また、自社のSNSアカウント運用も集客の大きな鍵となります。自社アカウントのフォロワー数が少ないと、後述するライブコマースでの集客効果も薄くなります。そのため、フォロワーにとって有益な情報を配信したり、社員や店舗の販売員自身がファンを増やしたりと、消費者から信用や共感を得られるよう工夫をする必要があります。

従来のインターネットショッピングは実店舗での接客のような購買意欲を高めるコミュニケーションをとることができない上に、サイズ感や生地の質感を写真やテキストだけで表現することの難しさが課題となっていました。

そこで、その課題を解決するツールとして注目されているのが「ライブコマース」です。

ライブコマースとは、SNSのライブ配信機能を使って商品を紹介し販促する販売手法で、店員が店頭で接客をしているかのような双方向のコミュニケーションができる点が大きな特徴です。

ライブコマースでは、ライブ配信者が配信を観ている複数のユーザーから投稿されたメッセージをリアルタイムで確認できるため、その場ですぐに回答したり、視聴者側に質問を投げかけ回答してもらうこともできます。サイズ感や着用感など商品ページ上では伝えづらい情報やコーディネートの提案などを発信することで、視聴者からの信頼を得て購買意欲を高めることができます。

ライブ配信に有名人をゲスト出演させたり、出演する社員をインフルエンサー化することでコンテンツを強化したり、視聴者限定のクーポンを発行し配信に付加価値を付けたりと、どの企業も工夫を凝らした配信をしています。

EC大国の中国ではインフルエンサーがライブコマースで商品を紹介する、KOL(Key Opinion Leader)という販売手法が確立されています。

日本でもインフルエンサーマーケティングとライブコマースは今後も発展していくことが予想され、SNS集客を活用することが不況下でも業績を伸ばす鍵になることは言うまでもありません。

最新の業界動向を意識し、不況に負けないEC展開を

業界の動向を予測する人間

今回はアパレル不況の要因と不況に強いECとそうでないECの違い、アパレル業界の今後の動向について解説しました。

この記事で紹介した不況下でも業績を伸ばせるECサイトの秘訣は以下の4つです。

  • 常に業界の動向を注視し、新しいサービスやビジネスモデルに乗り遅れないようにする
  • SNSやライブコマースを使った集客に力を入れる
  • 業務を効率化し、販路を広げる
  • 越境ECは日本ではまだ競合が少ないため成功するチャンスがある

アパレル不況下でも成長を続けているEC市場では、日々新しい販売手法やサービス、ビジネスモデルが生まれています。

目まぐるしく変化する時代に合った戦略を立てられるかどうかが、不況に負けないEC事業づくりの鍵となるのです。

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