「アップサイクル」という言葉を聞いたことがありますか?
これはサステイナブル(持続可能)なモノづくりを可能にする新たな方法論を表す言葉で、省資源・環境保全に寄与し商品に新たな価値をもたらす取り組みとして、今世界的に注目度が高まりつつあります。
具体的にはどのような活動なのでしょうか。ファッション業界における具体例と合わせて詳しくご紹介いたします。
「リサイクル」「リユース」「アップサイクル」って何が違うの?
「アップサイクル」とは、「リサイクル」や「リユース」と同様、廃棄物を再利用して循環させる活動のひとつですが、これらの活動にはそれぞれ特徴があります。まずはその違いを見てみましょう。
「リサイクル」とは?
一般的にリサイクルとは、あるモノを物質レベルで分解・変形させて、再び資源として活用することを指します。
例えばペットボトルを溶かしてフリースの原料にする取り組みは、リサイクルの代表例といって良いでしょう。
「リユース」とは?
中古住宅・中古車・古本・古着など、モノの形や性質を変えることなくそのまま再利用することをリユースといいます。
古くから社会に根付いている文化ですが、近年はメルカリに代表されるフリマアプリの隆盛もあり、リユースマーケットはかつてないほどの盛り上がりを見せています。
「アップサイクル」とは?
アップサイクルとは、廃棄物や使わなくなったモノを新しいプロダクトをつくるための素材・材料として使用し、元の形やデザインを活かしてより魅力あるプロダクトへとアップデートする活動です。
デザインやアイデアが重要な要素となるため、ファッションとの親和性が高いのも大きな特徴です。
ファッション業界におけるアップサイクルの事例
上述の通り、アップサイクルはあるモノをより魅力的で価値のあるモノへと生まれ変わらせる取り組みであり、特にファッション業界においては大きく飛躍を遂げる例も増えてきています。
今注目すべきアップサイクルの事例を、いくつかピックアップしてご紹介します。
【FREITAG(フライターグ)】アップサイクルの先駆け的存在
アップサイクルのパイオニア的存在として名高い、スイス・チューリッヒ発のブランド「FREITAG」。トラックの幌として使われていたターポリン素材を使い、1点1点ハンドメイドでバッグをつくっています。
モノづくりに込められた哲学はもとより、デザイン性と機能性の高さに注目が集まり、2003年にはMoMAのコレクション入りを果たすなど、ビジネス面においても世界的に成功を収めています。
【commpost(アーバンリサーチ)】デッドストックを再利用
デッドストック衣料をアップサイクルしたサスティナブルプロダクトブランド「commpost」をリリースしたのは、大手セレクトショップのURBAN RESERCH。
これからの地球環境や人の働き方・暮らし方に対して、新しい常識を示していきたいという思いのもと、同ブランドの素材・製品の生産過程における就労困難者や地域住民との協働にも取り組んでいます。
【Max Mara(マックスマーラ)】余った生地から新しい素材を開発
イタリア発のラグジュアリーファッションブランドMaxMraは、余った生地をアップサイクルして新たな素材をつくる「CameLuxe」プロジェクトを始動しました。
素材をカットする際に出るはぎれを集めて選別し、リサイクルしたポリエステルと混ぜることにより、ハイレベルな保温性をもつ中綿素材を開発。
新たな資源を一切消費することなく、ブランドにふさわしいクオリティを実現しています。
【MALION vintage(マリオンヴィンテージ)】古着に新しい命を宿す
MALION vintageは、2017年にスタートした古着のリメイクブランドです。
ヴィンテージ生地ならではの風合いを活かしつつ、女性らしさを意識したデザインをプラスして、古着に新しい命を吹き込んでいます。
インスタグラムでの発信力も相まって、着々と支持を広げています。
まとめ
「エシカル」「サステイナブル」といったキーワードとともに、今後ますます注目を集めることが予想される「アップサイクル」。
今回ご紹介したさまざまな取り組みは、時代のニーズを映し出すとともに、これからのモノづくりが目指すべき方法性を明示しているといえるのではないでしょうか。