ファッションが好きな人やアパレル業界の関係者にとって、自分のブランドを立ち上げることは、一つの夢や目標になっていることが多いでしょう。しかし「立ち上げはかなり難しそうだ」と感じている人がほとんどかと思います。
従来の立ち上げ方だと、自分のブランドを持つことは難しいものです。しかし、現代ではブランドの立ち上げを後押しするサービスやツールが増えています。
それらを活用すれば、アパレルブランドを立ち上げることは決して難しくありません。今回は、そのようにハードルが下がっているブランドの立ち上げについて、下記の目次のとおりの内容を解説します。
この記事を読むことで、人によっては今日からでもブランドの立ち上げができるでしょう。
アパレルブランドの立ち上げ方・3通りの方法
アパレルブランドの立ち上げ方は、主に下の3通りに分かれます。
オンデマンド | デザインは自分/製造・販売は業者 |
OEM | 販売は自分/デザイン・製造は業者 |
ハンドメイド | デザイン・製造・販売の全てが自分/業者は原則なし |
それぞれの方法について、詳しく解説していきます。
オンデマンド:デザインのみ、製造・発送は業者に任せる
出典:UT-me
オンデマンドは「必要量だけ供給する」という意味です。アパレルのオンデマンド制作のサービスは、下のようなものです。
- 自分はデザインだけする
- それをサイト上にアップする
- 費用はかからない
- 売れたら、その売上の一部をもらえる
オンデマンドで、自分がやることは「デザイン」だけです。あとは「自分のアカウントのページを賑やかに」します。
- 注文が入ったら、運営会社が製造をする
- たとえば、Tシャツやパーカーのプリントをする
- 発送作業も運営会社が行う
このようにデザインだけアップしたら、あとはすべて運営会社がやってくれるのです。このため、アパレルブランドの立ち上げが非常に簡単にできます。
国内の主要オンデマンド・アパレルサービス
国内の主なオンデマンドサービスを一覧にすると、下のとおりです。
サービス名 | 特徴Tシャツ |
---|---|
UT-me | ユニクロ運営のサービス。スマホだけでデザインできる |
Tシャツトリニティ | Tシャツで特に強い。ネタ系も売りやすい |
SnapTee | カメラアプリだけでTシャツデザインをできる。中国企業のベンチャー企業によるサービス。 |
Oh Yeah! | 全Tシャツが44色・16サイズに対応。色とサイズにこだわる人に。 |
Hoimi | 海外販路が強く、世界向けに売り出しやすい。 |
SKIYAKI GOODS | Hoimiと同じく海外に売りやすい。 |
SUZURI | 服だけなくスマホケースなどのアイテムも多い。トータルでブランドを売りたい人に。 |
ClubT | Tシャツトリニティに近い。おしゃれ系よりネタ系向き。 |
Up-T | 基本は「自分で使う用」のサービス。販売にも使える。 |
Zazzle | メインはアクセサリーとアート。これらと絡めたブランド構築に。 |
特に上位3つのUT-me・Tシャツトリニティ・SnapTeeは、ブランド立ち上げの新しい選択肢を考えるために、チェックしておくといいでしょう。
OEM:デザイン・縫製を業者に依頼、販売は自力
出典:アジェラ
OEMの定義は、業界の中でも人や会社によって異なります。一般的には、下のような内容です。
- デザインや縫製は、業者に依頼する
- 販売は自力でする(ネットや店舗で)
つまり、製作は業者、販売は自分ということです。各社のアパレルOEMのサービスを紹介していきます。
LOOK MODE(ルックモード)
アパレルOEM・DMとパターン作成をメイン事業とするLOOK MODE(ルックモード)。同社のOEM・ODMの特徴は下のとおりです。
- 自社工場「ラボ・オーフナト」を国内(岩手県)に持っている
- 中国・ベトナムを拠点とした海外生産も可能
- 布帛・ニット・カットソー全般に対応
- フォーマルからカジュアルまで、幅広いテイストに対応
特に自社工場は、一般社団法人・日本ファッション産業協議会による「J∞QUALITY」の認証を取得しています。こうした第三者機関の認証もあるため、OEM企業としての信頼性は特に高いといえます。
FLAT WORLD(フラットワールド)
アパレルOEMを専門分野とするFLAT WORLD。同社のOEMサービスの特徴は主に下の4点です。
- レディスから子供服、小物まであらゆるジャンルに対応
- 生地の手配から量産までトータルサポート
- 小ロット・短納期も対応可能
- 展示ルームでサンプルや生地を見ながら相談できる
特に展示ルームで生地などの実物を確認できる点が、素材にこだわる人にとっても安心といえます。製造だけでなく企画の段階からすべて依頼できる点もメリットです。
アパレルOEMのサービスを提供する企業は、LOOK MODEとFLAT WORLD以外にも多数あります。主な企業を一覧にすると下のとおりです(それぞれのOEMサービスのページにジャンプします)。
各社のOEMサービスを比較した上で、数社に絞り込んで初回の相談・問い合わせをしてみるのがいいでしょう。
ハンドメイド:デザイン・縫製・販売のすべてが自力
出典:Creema
ハンドメイドは、すべての作業を自分でこなします。自分でデザインして縫製し、主にネットで売るというやり方です。
ハンドメイド商品を販売できるサイトは、主に下の4つです(それぞれのファッションカテゴリのページに跳びます)。
Creema | 10周年を迎えるサービス。主要カテゴリがアクセ・ファッション。 |
minne | GMOペパボ運営のサービス。作家さんのメディア紹介が多数。 |
iichi | 工房が多く「職人こだわりのア製品」が他サイトより多い印象。アパレルはCreema・minneの方が強い。 |
ハンズ・ギャラリー・マーケット | 東急ハンズが運営。家具・文具が強くファッションは4番手ほどのカテゴリ。 |
基本的には、Creemaかminneを使うのがおすすめです。ファッション以外のアイテムとトータルでブランドを売り出したいときには、iichiやハンズ・ギャラリー・マーケットも利用するのがいいでしょう。
アパレルブランド立ち上げの資金・方法別4パターン
アパレルブランドの立ち上げで資金がいくら必要になるかは、立ち上げの方法によって異なります。4つの方法別の目安費用は、下のとおりです。
方法 | 目安費用 |
---|---|
オンデマンド | 0円~ |
OEM | 150万円~ |
ハンドメイド | 0円~ |
自分の店舗を持つ場合 | 1000万円~ |
それぞれ詳しく説明していきます。
オンデマンド:0円から
オンデマンドサービスの場合、費用は基本的にかかりません。有料プランを利用するなどのこだわりを持てば別ですが、無料プランでデザインだけアップロードしている分には、すべて無料でできます。
最初は「どのようなデザインが売れるのか」を確認するためにも、無料でオンデマンドサービスから試してみるのが、有力な選択肢の1つといえます。
OEM:150万円から
あくまで目安ではありますが、テラオエフでの小ロットの価格が、下のようになっています。
アイテム | 1着あたり | 10着 |
---|---|---|
カットソー | 6000~ | 6万~ |
スカート | 8000~ | 8万~ |
ブラウス | 9000~ | 9万~ |
シャツ | 1万~ | 10万~ |
パンツ | 1万~ | 10万~ |
パーカー | 1万1000~ | 11万~ |
ワンピース | 1万2000~ | 12万~ |
ジャケット | 1万5000~ | 15万~ |
コート | 2万~ | 20万~ |
「30枚以下」という条件のみ書かれており「何枚以上」という条件は書かれていません(サンプルだけの場合は、価格が2倍になりますが)。
情報を拝見する限り、一般的なアイテムなら10枚程度からでも依頼できると思われます。ブランドとして一般的な体裁を整えるなら、上記のアイテムを最低限10枚ずつは依頼した方がいいでしょう。
(あるいは、それと同等の量・バリエーションを揃えるべきでしょう)
その前提で、上記のアイテムを10着ずつ作ったとしたら、101万円になります。サンプル制作などの諸費用も含めると150万円は必要です。
現実には他のコストも発生しますが、単純に「服を調達する」費用だけでいえば、OEMは最低150万円からが目安(あくまで目安の1つ)ということです。
ハンドメイド:0円から
ハンドメイドも、すべて自分でやるため初期費用は0円からとなります。正確には、発注を受けた時点で材料費は必要になります。
また、発注前に先に制作して販売する場合も、材料費はやはり必要です。ただ、一点物ということでそれほど高額にはなりません。そのため「資金ゼロでスタート可能」と言っていいでしょう。
自分の店舗を持つ場合:1000万円から
自分で実店舗をかまえる場合、1000万円以上の費用が必要になります。下記は、ブラザーが公式サイトで紹介している試算です。
店舗賃貸契約費用 | 220万円(敷金、保証金、仲介手数料) |
家賃 | 180万円(30万円×6ヶ月) |
店舗改装費 | 200万円 |
設備購入費 | 130万円 |
商品仕入資金 | 300万円 |
会社設立費用 | 30万円 |
開店時の広告宣伝費 | 50万円 |
生活費 | 180万円(30万円×6ヶ月) |
合計金額 | 1,290万円 |
参考準備できてる?小売店開業に必要な「モノ」「費用」を徹底解説!| ブラザー
実際の金額がどうなるかは、当然店舗の規模・立地・内装のレベルなどで異なります。上記の金額はあくまで「非常に大雑把な目安」です。
また、項目の中には広告宣伝費・会社設立費用など「削れるもの」も多くあります(たとえば、会社は設立手続きを自分ですれば6万円から設立可能です)。
こうした「削れる金額」も考慮すると、およそ1000万円以上というのが、金額の目安になります。
アパレルブランドの立ち上げに役立つサービス一覧
アパレルブランドの立ち上げで役立つサービスには、下のようなものがあります。
簡易ネットショップ作成サービス | BASEなど |
クラウドファンディング | READY FORなど |
縫製マッチングサービス | nutte |
ブランド立ち上げ支援サービス | テラオエフなど |
それぞれのサービスについて解説していきます。
簡易ネットショップ作成サービス:BASEなど
簡易ネットショップの作成サービスでは「BASE」や「MakeShop」などのサービスがあります。ここでは、この2つのサービスについて解説します。
BASE(ベイス)
出典:BASE
BASEは「ネットショップが無料で簡単に作れる」サービスです。ネットショップの開設実績で、3年連続No.1の数字を誇ります(2020年7月時点)。
上の画像のとおり、タレントの香取慎吾さんが出演するCMも話題になっています。中身はおしゃれなページのカスタマイズを簡単にできるものと思ってください。
「サイトを簡単に作れる」というサービスは他にもありますが「そのネットショップ特化版」がBASEです。同サービスの詳細は、下の記事で解説しています。
MakeShop(メイクショップ)
出典:MakeShop
MakeShopは、GMOグループが運営する「ネットショップ・ECサイト構築サービス」です。この分野で8年連続業界No.1の実績を誇ります。
BASEとの違いは、企業が運営する大規模なECサイトにも対応しているという点です。個人がアパレルブランドを立ち上げる場合、規模としてはBASEの方が適しているともいえます。
MakeShopについては、下の記事でも詳しく紹介しているため、ぜひこちらもご参照ください。
クラウドファンディング:READY FORなど
出典:READY FOR
資金調達で役立つサービスとしては、クラウドファンディングが挙げられます。クラウドファンディングは現在無数にありますが、特に規模が大きい5つのサービスは、下のものです。
- Readyfor(レディーフォー)
- CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
- 未来ショッピング(日本経済新聞)
- Makuake(マクアケ)
- ENjiNE(エンジン)
もしアイドルに関わる分野でブランドを立ち上げるなら「アイドル特化型クラウドファンディング」のサービスもあります。下記の2サービスです。
- PigooFactory(ピゴーファクトリー)
- ドメスチック!
クラウドファンディングで資金を集める場合、コンセプトが何よりも重要となります。「こういう服があると多くの人が喜ぶ」「地域や特定の業界の活性化につながる」などのビジョンが見えている場合、クラウドファンディングで資金調達をするのもいいでしょう。
縫製マッチングサービス:nutte
出典:nutte
nutte(ヌッテ)は、縫製のクラウドソーシングです(このフレーズは公式サイトでも使用されており、最もわかりやすい表現といえます)。
- 1500名以上のプロが在籍
- 販売用商品から、自分用の一点物まで依頼可能
- 支払いはnutteが仲介するので安心
- 職人さんを公開で募集(公募)することもできる
すでにランサーズ・クラウドワークスなどのサービスを知っている人は「それの縫製版」と考えると、すぐにイメージが湧くでしょう。「個人用の一点物でもOK」ということで、一般の縫製工場に依頼するより格段に気軽に依頼できるのがメリットです。
まず「職人さんに縫製を依頼するとはどういうことか」を体験する上でも、役立つサービスといえるでしょう。
ブランド立ち上げ支援サービス:テラオエフなど
アパレルブランドの立ち上げを支援するサービスもあります。上記の「テラオエフ」や「STARted」(現在は終了)などのサービスが代表的なものです。
ここでは、それぞれのサービスの概要をご紹介します。
テラオエフ
テラオエフでは「アパレルブランド立ち上げ支援」というサービスを提供しています。同サービスでは、下記の6つのプランが用意されています。
ディレクタープラン | 0円 |
生産サポートプラン | お見積り |
個別相談申し込み | 1万円(1時間~) |
ベーシックプラン | 25万円~ |
アウタープラン | 35万円~ |
カスタムプラン | お見積り |
特にディレクタープラン・生産サポートプランは「インフルエンサー様対象」と明記されています。InstagramやTwitterなどで活躍している方で、自分のブランドを立ち上げたいという場合は、この2つのプランから相談するといいでしょう。
STARted
2018年末日にサービスが終了してしまいましたが、以前はSTARted(スターテッド)というサービスもありました。2014年9月にスタートし、2016年にはCAMPFIREに事業譲渡されたことでも話題になりました。
- デザインをアップすれば、自分のブランドを販売できる
- 販売にかかる費用は数万円~10万円程度
- 服が売れると、半分が自分の取り分になる
という仕組みのサービスでした。STARtedについては下の記事でも詳しく紹介しています。
まとめ:ブランドの立ち上げは今すぐでもできる
まとめると、オンデマンドのサービスを使い、スマホでできる簡単なデザインをアップロードすれば、ブランドの立ち上げは今日にでもできます。ブランドを立ち上げるだけなら誰でもすぐにできる時代であり、SNSなどでの影響力がある人なら「簡単なデザイン」でも、高値で服を売ることが可能です。
(オリエンタルラジオの中田敦彦さんが「幸福洗脳」と書かれたTシャツを1万円で販売されているのが、その好例です)
参考オリラジ中田敦彦がTシャツを1万円で売る理由 | ニッポン放送
このような変化の中で「アパレルのブランドとは何か」という本質的なテーマも、あらためて考える必要があるでしょう。
- 売れればいいのか
- それとも、良いものを作るのが大事なのか
- そもそも、良いものとは何か
このような問いかけは、自分のブランドを立ち上げなくとも、アパレル業界の関係者でなくとも、社会人なら全員に必要となる問いかけです。ブランドをいつ立ち上げるにしても、こうした「仕事の本質」については、常に考えておくのがいいでしょう。
ブランドを立ち上げた後のデータ管理の手法
ブランドを立ち上げて無事に売れるようになると、今度はデータ管理の問題が生じます。
- エクセルデータが膨大になりすぎ、頻繁にフリーズする
- 手作業の処理のため、随所でミスが起きる
などの問題が多発するのです。このような問題を解決するため、ブランドを立ち上げた直後から、早めにクラウドシステムを導入しておくことをおすすめします。
早めに導入するほどデータ移行に伴う手間やトラブルが少なくなるためです。ブランド立ち上げ初期から使えるクラウドシステムについては、下の記事で詳しく解説しているため、こちらを参考にしていただけたらと思います。