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アパレル無人店舗の事例3選~システムと仕組み、今後の課題を解説~

2018/9/14

アパレル店舗

2016年12月に登場したAmazon Goをきっかけに、各国から注目されるようになった無人店舗。顧客として興味を持っている人もいれば、自身が運営・経営することに興味を持っている人もいるでしょう。

特にアパレル関係者の方であれば「アパレル業界での事例」や「導入に向けた課題」などに興味があるかと思います。この記事では、これらのポイントに加えて、無人店舗のメリットデメリットなどを、総合的にまとめていきます。

アパレル業界での無人店舗経営について知りたい方には、きっと役立てていただけるでしょう。

アパレルにおける無人店舗とは

無人店舗とは、フロアに人員が全くいない状態で経営されている店舗を指す、非対面型接客のあり方の1つです。

日本で本格的に展開された初の事例は、2018年の「ホテル コエ トーキョー」によるもの。以後、2020年の「FABRIC TOKYO STAMP・新宿マルイ店」のオープンなど、大手ブランドによる導入が進んでいます。

実験的な店舗として、一般的な服飾店を単純に無人化した、東京都中野区の「ムジンノフクヤ」のようにユニークな事例も存在。リモート接客を取り入れた「半有人」での営業形態も、実験が各所で進行しています。

Tシャツ自販機などはすでに一般的な技術であり、自販機のみを並べた店舗などの営業形態も考えられます(リモート接客については下の記事で詳しく解説しています)。

アパレルにおける無人店舗の形態3つ

アパレル店舗

アパレル業界での無人店舗の3形態をまとめると、下のようになります。

完全自動型通常店舗をシステムで無人化する
採寸特化型服は置かず「採寸だけ」をする
単純無人型通常の服屋を単純に無人化する

それぞれ詳しく説明していきます。

完全自動型:通常店舗をシステムで無人化する

無人店舗と聞いて、多くの人が連想するのはこの形でしょう。決済から在庫管理まで、すべてをシステム化します。代表的な例は「ホテル コエ トーキョー」です。

全業界で先駆けとなったのはAmazon Goであり、他にもJR山手線の「高輪ゲートウェイ駅」など、各地の店舗で実用化されています。

参考高輪ゲートウェイ/商品スキャン不要「キャッシュレス無人店舗」| 流通ニュース

採寸特化型:服は置かず「採寸だけ」をする

店内に3Dスキャナなどの機械を置き、採寸だけをする店舗です。採寸データは本部に送られ、服は後日自宅に郵送されます。

小スペースで運用でき、セキュリティ関連のコストも低いのが魅力です。代表的な事例は、ファブリックトーキョーの「STAMP」によるものです。

単純無人型:通常の服屋を単純に無人化する

通常の洋服店をそのまま無人化するものです。野菜の直売所と同じシステムであり、いわば「性善説」によって運営されるスタイルといえます。

現実に始まっている「ムジンノフクヤ」では防犯カメラもありますが、カメラだけでは盗難防止に限界があるため、少なくともセキュリティ面では性善説によって運用されていると言っていいでしょう。

シンプルなアイディアですが、今後さらに新しい発想と融合すれば「きわめて低コストで運用できる無人店舗」の形が生まれる可能性があります。

アパレルにおける無人店舗の事例3選

アパレル店舗

アパレルの無人店舗では、下の3つの事例が特に有名です。

それぞれの事例を簡単にご紹介します。

ホテル コエ トーキョー(hotel koe tokyo)

KOE出典:新しい価値と文化の発信基地 ホテル併設型グローバル旗艦店「hotel koe tokyo」2月9日(金)オープン | ストライプインターナショナル

ホテル コエ トーキョーは「アース ミュージック&エコロジー」などのブランドで知られる、ストライプインターナショナルのホテル併設型旗艦店です。2Fがファッションフロアとなっており、21時までの通常の営業時間は有人で運営、21時~23時が無人店舗となります。

KOE出典:夜間無人でキャッシュレスな“新しいアパレルショップ” 2月オープンの「ホテル コエ トウキョウ」に導入 | WWD

無人店舗の時間帯はセルフショッピング形式で営業。スマートレジを利用して、クレジットカードや電子マネー、ApplePayなどで支払いをします。

営業時間のすべてを無人にするのではなく、最後の2時間だけを無人にするということで、完全に無人化する場合の問題点が発生しにくいといえます(決済とセキュリティのシステムが整えるコストは必要です)。

STAMP by FABRIC TOKYO

STAMP出典:FABRIC TOKYOが無人店舗型の新テックアパレルブランド「STAMP」のリリースを発表。明日26日(木)に行われる記者会見イベントにて正式発表へ。 | PR TIMES

FABRIC TOKYOは、もともと、

  • 店舗でスタッフさんが採寸のみを行う
  • 商品は後日、お客さんがネットで注文する

というスタイルでした。この採寸を無人化した新ブランドがSTAMP(スタンプ)です。取り組みの要点をまとめると、下のようになります。

  • 採寸は3Dスキャナにより3分で可能
  • アプリの指示にしたがって3回スキャンを行う
  • 当面は有人で運用し、将来的に完全無人化を目指す

現状はまだ試験的な段階であり、完全招待制のポップストアとなっています。店舗は新宿マルイ本館1Fにあり、2020年9月29日まで、その様子を実際に見ることができます。

「店舗で採寸のみを行う」というスタイルをすでに定着させているFABRIC TOKYOだけに、今後の無人化の成功率も高いと期待できる取り組みです。

STAMP出典:無人採寸のオーダーメイドジーンズ「STAMP」。3Dスキャン(4/9)| Impress Watch

ムジンノフクヤ

ムジンノフクヤ出典:野方に店員のいない洋品店「ムジンノフクヤ」 試着室完備、「連絡帳」に要望記入も | 中野経済新聞

2020年8月5日にオープンした「ムジンノフクヤ」。24時間オープンの無人洋品店として話題になっています。

  • 古着約200点とサンダル・パンプスを揃える
  • 監視カメラを数台設置
  • 試着ルーム2室を完備
  • 要望を書き込める連絡帳を常設

上記のようなルールとなっています。商品の金額はハンガーの色でわかるようになっており、下のような金額帯に分かれています。

500円チケット
グレー1,000円チケット
1,500円チケット
2,000円チケット
ピンク3,000円(2,000円チケット+1,000円チケット)
黄緑4,000円(2,000円チケット×2枚)
5,000円(2,000円チケット×2枚+1,000円チケット)

チケットは食券と同じ要領で券売機で購入します。必要分のチケットを買ってそれを置き、商品を持ち帰るという仕組みです。

導入コストが低いやり方である分、セキュリティ面には不安があるため、企業が本格的に導入する上ではまだ課題があります。しかし、他の発想や新しい技術と融合すれば、大きく発展する可能性があるといえるでしょう。

無人店舗経営のメリット

アパレル店舗

無人店舗経営のメリットをまとめると、下のようになります。

それぞれ詳しく解説していきます。

人手不足の解消

少子高齢化の影響で、あらゆる業界が人手不足に陥っています。2019年の「人手不足倒産」は、過去最多を記録しました。

参考2019年の「人手不足倒産」、過去最多 過去7年で最も倒産が多かった業種は? | ITmediaビジネス

無人店舗であれば、オペレーション関連以外のスタッフが必要なくなるため、人手不足問題の解消につながる可能性があります。

人件費の削減

スタッフがいなければ、当然人件費も削減できます。人が減ることで、スタッフを管理する人事や管理職などの人数も減らせます。

システムの維持費が増えますが、人件費の削減幅の方が大きければ、コスト面では有利になります。

前述した、ホテル コエ トーキョーで単純計算した場合、夜間3時間分のスタッフ(時給1,000円のアルバイト)2人の人件費が月30日で180,000円かかります。POSシステムなどシステムにかかる月額費用が180.000円以下に収まれば、コスト面で有利ということになります。

経営の完全データ化

無人店舗では、顧客の決済や在庫の状況など、すべてが自動的にデータ化されます。逆にいえば「データ化しないと管理ができない」のですが、体制さえ構築すれば、非常に効率的なデータ活用をできます。

データを効率的に活用する方法論を「データドリブン」といいます。データドリブンについては、下の記事で詳しくまとめています。

省スペース化(採寸だけの店舗の場合)

STAMPのように採寸だけを行う店舗の場合、スペースを大幅に削減できます。STAMPはやや広めのスペースを確保していますが、リッチさを求めなければ、もっと小型にすることも可能です。

  • あちこちの出張所でサイズだけ測る
  • 自動的に出荷手続きがされ、後日自宅に届く

このような新しい通販のスタイルは、コロナを機に多くの人がリモート生活に慣れたことで、今後浸透していく可能性があります。

無人店舗経営のデメリット

アパレル店舗

無人店舗経営のデメリットは、主に下の3点が挙げられます。

それぞれのデメリットについて、詳しく解説していきます。

多額のコストと実験期間が必要

無人店舗の営業をスタートさせるまでには、多額のコストと実験期間が必要になります。FABRIC TOKYOの「STAMP」も当面は有人で実験する流れで、ある程度資金力のある企業でも、短期間での導入は難しいことがわかります。

温もりやライブ感が失われる(セブンの撤退理由)

無人店舗と聞いて多くの人が連想するデメリットといえますが、やはり温もりやライブ感は失われます。セブン-イレブンはこれを大きな理由の1つとして、無人店舗事業から撤退しました。

開店直後は多くの客が訪れたものの、しばらくすると近隣の有人店舗が混雑することが常態化したことで、消費者は温かみのあるサービスを求めていることが分かったと説明した。
セブン-イレブン、無人店舗計画を中止 | ワイズコンサルティング

そもそも、保温や身だしなみなどの最低限の機能を満たす服なら、現代では通販で買えます。わざわざ店舗に服を買いにくる人は、おしゃれをし、それを人に見てもらうことを楽しむ人が多いものです。

ということは、他の業種と比べて「人がいる場所が好き」な人が多いといえます。そうなると、アパレルという業種と無人店舗は「果たして相性がいいのだろうか」ということも考える必要があります。

(もちろん、一見相性が悪そうな場所に大きなアイディアの種が転がっていることも多いものです)

ユーザー側に機械・スマホの操作スキルが必要

無人店舗は、ユーザーがある程度機械やスマホを操作できなければなりません。どのような形態でユーザーを出迎えるにしても、ユーザー側に下のようなスキルや準備が必要です。

  • スマホを持っている
  • 特定のアプリを持っている(○○ペイなど)
  • クレジットカードを持っている
  • 電子マネーを持っている
  • 暗証番号や金額の入力など、最低限の端末操作をできる

他にも多くの要素が考えられますが、何にしても「必ずユーザーが何か準備をしなければいけない」のです。

たとえば、オンラインバンキングは便利なサービスですが「まだ使っていない」という人は多くいます。「最初の登録」が手間だからです。

無人店舗を使うための準備は、オンラインバンキングの利用よりも難しいといえます。このユーザー側の抵抗をどれだけ超えるかが鍵になります。

無人店舗経営の問題点

アパレル店舗

無人店舗経営には、以下のような問題点があります。

それぞれ詳しく解説していきます。

万引き被害に遭いやすい

無人店舗で多くの人が想像する問題として、万引きや窃盗の被害が挙げられます。実は、ここまで実験されている無人店舗は中国を始め、総じて窃盗被害がゼロに近い状態です。

参考中国無人コンビニでほぼ盗難ゼロのその秘密、「盗難したら損」の状況を見事に構築 | GloTechTrend

ただ、これはいずれの店舗も「大きなコストをかけてセキュリティを徹底したため」といえます。同じ投資を今後どれだけの店舗ができるかを考えると、やはりセキュリティは大きな問題です。

ただ、これは警備会社などが格安かつ高度なセキュリティシステムを開発することで、解決される可能性があります。

停電・システムダウンの被害が大きい

無人店舗はシステムのみで管理されています。そのため、システムダウンや停電によるダメージが、通常の店舗よりも大きくなります。

通常の店舗は、例えば決済システムがダウンしても、支払いを現金のみで受け付けるなどの方法で対応できます。多少の機会損失はあっても、その時間の売上がゼロになることはありません。

しかし、無人店舗ではおそらくゼロになります。カバーシステムが今後開発されるかもしれませんが、人間によるカバーに比べるとやはりリスクが高くなります。このため、

  • 停電時は臨時で人員を用意する
  • 停電時の予備電源を十分に確保する
  • システムを最低でも二重に用意する
  • 自動検知と自動切り替えの機能も用意する

などの対策をとる必要があります。

データは取れるが顧客の顔が見えなくなる

無人店舗では顧客のデータを飛躍的に取りやすくなります。しかし、逆に顧客がデータだけの存在になってしまう恐れがあります。

「顧客の顔が見えなくなる」というのは、ただのポエムではなく、実際の経営に大きく影響するものです。カリスマ経営者として一世を風靡したダイエー創業者の中内功氏は「消費者の顔が見えなくなった」という有名な言葉を残しています。

バブル崩壊のあたりから「消費者が見えんようになった」と中内は言うようになり、ダイエーは凋落を始める。
9月19日。 中内功「若い会社というのは、たいがい、いかがわしいもんや。それでええんや。…」久恒啓一氏 note

無人店舗はこの状況を「自ら作り出す」ものといえます。その分データは取れるのですが、データを補うための「人間的な直感」を、顧客や従業員との間で交わす機会を、意識的に確保することが必要です。

無人店舗経営の課題と今後

アパレル店舗

無人店舗経営における今後の課題では、以下の内容が挙げられます。

「無人」の選択肢自体をさらに考える

そもそも「無人店舗」の形態や選択肢自体が、まだ多く見つかるはずです。ムジンノフクヤの発想も野菜の直売所などでは昔からあったものですが「東京23区の服屋でやるとは」と驚いた人も多いでしょう。

現状すぐに展開できる方法としては「自販機を並べる」という選択肢があります。アパレルでいえば、Tシャツの自動販売機は各地ですでに「普通に」設置されています。

参考Tシャツ販売用自動販売機 | 自動販売機JP

コインランドリーなどはある意味「自販機をひたすら並べた店舗」であり、自販機と相性のいい業界なら、このやり方で比較的容易に無人店舗を実現できる可能性があります。

有人サービスとの共存・使い分けを考える

そもそも「無人店舗ありき」というのは、言うまでもなく間違いです。無人店舗はあくまで「より良いサービス」のための手段であり、有人サービスとの共存や使い分けは、常に考える必要があります。

無人店舗の実験を積極的に進めるローソンの事業でも、以下のように指摘されています。

人と人とのコミュニケーションをどう打ち出していくか、IoTをどう適用していくのか、全体をどうデザインしていくかが今後の課題だろう。
「無人コンビニ」目指さないローソン 未来店舗で何を仕掛ける | 日経クロストレンド

音楽業界でいえば、2013年にCDとライブの売上が逆転し、以後ライブの市場が伸び続けています。今も昔も「ライブな刺激を求める人間の本質は変わらない」ということを意識しつつ、無人店舗のメリットを追求するべきといえるでしょう。

参考音楽業界に春到来、注目を集めるワケとは? | Quick Money World

技術革新(顧客のアプリ操作などの手間を極力減らす)

無人店舗のデメリットは「顧客の機器操作の負担が大きい」こと。しかし、これは技術革新によってある程度解決できる可能性があります。

たとえば、昔のパソコンはあらゆる操作で「コマンド」を打つ必要がありました。現代では「アイコンをクリックしてファイルを開く」のが当たり前ですが、これを「コマンド入力」で行う必要があったのです。

パソコンの仕組みがそのままだったら、現代のように普及することはなかったでしょう。同じように、無人店舗のシステムについても技術革新が進めば「ユーザーが簡単に利用できる」ようになるはずです。

そのような技術をいかに開発するかというイノベーションも、今後の課題といえます。

まとめ:無人の業務を増やすには、ビジネス全体のIT化が必須

アパレル店舗

自店を無人店舗にすることまでは考えていなくとも「無人でできる業務を増やしたい」と思っている経営者の方は多いでしょう。その場合、まずはビジネス全体をIT化する必要があります。

無人店舗は顧客のあらゆる行動を自動的にデータ化できますが、逆に「データ中心で事業を回せる体制」を先に整えることが必要です。そのために、まずは現状の有人店舗のビジネスを、IT化する必要があります。

そのための第一歩として、弊社が提供するアパレル特化型の高機能クラウド『アパレル管理自動くん』を導入していただくことは、大いに役立つでしょう。同じくアパレルに特化したPOSシステムの『アパレル管理自動くんPOSレジ』と連携させることで、事業のIT化が格段に進めやすくなります。

自社で無人やリモートの業務を増やすためにも、そもそも「増やすことが必要なのか」を判断する上でも、事業のIT化を進めていただくことには大きな意義があります。無人やリモートでの店舗経営に関心のある経営者の方には、ぜひ一度下記のボタンから、アパレル管理自動くん・アパレル管理自動くんPOSレジの詳細をご確認いただけたらと思います。

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