まとめ

IoTでアパレル業界はどう変わる?5つ事例を用いて徹底解説

2016/4/30

近年、IoT(Internet of Things)技術がさまざまな業界において急速に普及しています。IoTとはモノのインターネット化を指す言葉で、商品や体験をインターネットに接続することで、私たちの生活をより便利にする仕組みです。

IoTの導入が進んでいるのは、アパレル業界も例外ではありません。服を試着しなくても自分のサイズを図れたり、マネキンの前を通るだけで商品情報を取得できたり、さまざまな技術がすでに開発されているのです。

本記事では、アパレル業界におけるIoTについて、以下の内容を詳しく解説します。

  • アパレル業界ではIoTはどのように活用されているのか
  • アパレルブランドがIoTを導入することでどんな良い変化があるのか
  • 効率的にIoTを導入するために、アパレル店舗が意識すべき点

「IoTの導入を検討している」「IoTによって効率的な店舗運営をしたい」というアパレル店舗の方は、ぜひ参考にしてみてください。

 

そもそも「IoT」とは?モノのインターネット化をおさらい

アパレル業界でのIoTを説明する前に、そもそも「IoT」とは何なのか、おさらいしておきましょう。

「IoT」とは「Internet of Things」の略で、直訳すると「モノのインターネット」という意味になります。具体的には、サービスやビジネスの価値を生み出すことを目的に、物理的なデバイスや機器をインターネットに接続して相互にデータをやりとりすることです。

「〇〇、カーテンを開けて」「〇〇、電気を消して」などと声をかけて家電を操作できるIoT製品を見たことがある方も多いでしょう。このように、家電製品をネットワークに接続して遠隔で操作する「スマートホーム」も、IoT技術を活用した例の1つです。

IoTは今後ますます普及していくことが予想されており、家庭用電化製品や自動車などには既に標準搭載されることが一般的になりつつあります。また、IoTによって新たなビジネスモデルが生まれることも珍しくなく、今後はさまざまな業種において、多くの企業がIoTを取り入れた製品を開発・販売していくでしょう。

アパレル業界におけるIoTの活用事例5選

さまざまな業界に変化をもたらすといわれているIoTですが、アパレル業界も例外ではありません。服を試着しなくても自分のサイズを図れたり、マネキンの前を通るだけで商品情報を取得できたり、さまざまな技術がすでに開発されているのです。

では、アパレル業界におけるIoTの活用事例を詳しく見ていきましょう。

スマートクローズハンガー

IoTの活用によって、質の高い購買体験を演出できるようになるといわれています。

スマートクローズハンガーはその1つ。お客様がタグ付きのハンガーを手に取ると、店頭内のモニターにその商品の値段・モデルの着用写真・おすすめのコーディネートなどの情報が表示されます。

アパレル店舗では、お客様が気になった服やアクセサリーを手に取った際にスタッフが声をかけるのが一般的です。しかし、お客様の中にはスタッフに声をかけられるのが苦手、1人でじっくりと吟味したいという方もいるでしょう。スタッフ側から見ても、「せっかく興味を持ってもらったのに、他のお客様の対応中で接客できなかった」なんて後悔をしたことがある方も多いのではないでしょうか。

スマートクローズハンガーはお客様が気になったときに気になった情報を得ることができるため、上記のデメリットを払拭しながらお客様の購買意欲を高めることが可能です。

また、スマートクローズハンガーはデータ活用の観点でもメリットがあります。商品の店頭での状況やどれくらい興味を持ってもらえたかを本部と共有できるので、より細かい情報を得ることができ、的確な分析や在庫管理が可能になるのです。

マネキンによる接客

出典:iconeme

ロンドンのiconemeが開発した「VM Beacon」という端末を使った事例です。マネキンに商品を着せVM Beaconデバイスを装着しておくと、ユーザが近くを通ったときに、登録済の商品に関する情報がプッシュ通知で届くという仕組みです。

マネキンが着ている商品を探して店内を歩き回ったり店員に声をかけたりする手間がいらないため、購入のハードルがグンと下がります。通販サイトなどと連携すれば、「店舗で商品を見て、その場で購入したものが自宅に届く」なんてことも可能です。

日本国内でこのサービスを導入している店舗はまだありませんが、Beacon(Bluetoothを発信する端末)を導入している店舗は少なくありません。お店の近くを通った人にセール情報を通知したり来店者のデータを可視化したりすることができる便利な技術のため、気になる方はぜひ以下のコラムもチェックしてみてください。

スマートマネキン

「スマートマネキン」も、店舗での新しい購買体験を演出している事例です。店内で自分の身体をスキャンするとマネキンが自分の身体のサイズに変わるという仕組みで、実際に着たときの印象を確かめることができます。

服を購入する際、試着が面倒だと感じているお客様は珍しくありません。しかし服はブランドによってサイズ感が異なるため、試着をせずに買いたくないという方も多いでしょう。スマートマネキンは、そんなわずらわしさを解決するサービスなのです。

デジタル採寸技術

出典:ZOZO

デジタル採寸技術とは、IoT技術を応用して、顧客の体型やサイズを正確に測定する技術のこと。通常、アパレル業界では試着を行うことで顧客のサイズを測定しますが、デジタル採寸技術を導入することで、顧客が試着せずに正確なサイズの商品を選択できるようになります。

デジタル採寸技術の代表例といえば、大手アパレルEC「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」が展開している「ZOZO SUIT」が挙げられるでしょう。これはスーツを着用すると自分のサイズを正確に計測してくれるという製品で、計測データから自分に合うブランドや製品を選べるというもの。その画期的なアイデアは、登場当時は大きな話題を呼びました。

ECサイトで起こりがちなサイズ違いによる返品を減らすだけでなく、取得したデータと購入履歴の分析から、アパレル業界の販売効率化や在庫管理の改善などにも役立ちます。顧客の負担を軽減して購入意欲を高めるだけでなく、マーケティングにも効果的なのです。

店舗のIoT化

店舗のIoT化とは、店舗内にIoTデバイスやセンサーを導入すること。顧客の行動や商品の状態をリアルタイムに把握し、店舗運営の効率化や顧客サービスの向上を図ることを目的としています。

IoT化と似た言葉に「DX化」というものがあり、混乱してしまう方も多いでしょう。しかし、DXとはデジタル技術を活用して人々の生活やビジネスモデルを改革することで、モノをインターネットにつなげること自体を指すIoTとは、そもそもの概念が異なります。簡単に言えば、DX化を実現するための手段の1つがIoT化ということです。

IoT化について、ユニクロなどで導入されている「RFIDタグ」を例に詳しく解説しましょう。RFIDタグは、電波を用いることで接触せずにデータを読み取れる、いわゆる電子タグのこと。これを用いることで商品の読み込みが一瞬で完了し、レジ作業を効率化することができます。棚卸しや在庫管理も効率的に行えるようになるため、スタッフの作業効率は一気に向上するでしょう。

アパレル業界がIoTを導入するメリット

「IoTが便利なのはわかるけど、具体的にはどんな良いことがあるの?」と感じている方も多いでしょう。アパレル業界におけるIoTの導入には、以下のようなメリットがあります。

  • ユーザーの利便性が向上する
  • データを活かした接客ができるようになる
  • 店舗の業務効率化・コスト削減につながる

それぞれ詳しく解説していきましょう。

購入時のユーザーの心理的ハードルが下がる

IoTを用いたアパレル業界の取り組みにより、ユーザーの利便性が向上します。

例えば、従来は店舗での採寸に時間がかかり、また、店員にサイズを図ってもらうこと自体に恥ずかしさを感じる人も少なくありません。スマートマネキンやデジタル採寸技術を活用することで、こうした手間や恥ずかしさを取り除くことができます。また、IoT技術を活用すればECサイトで服を購入する際の不安要素(サイズが合うか、似合うかなど)を取り除くことも可能です。

ユーザーの利便性が向上すれば購入ハードルも下がり、店舗側にとっては売上アップやリピーターの獲得につながるでしょう。

お客様1人1人にカスタマイズされた接客ができるようになる

IoTを導入したアパレル店舗では、店舗内に設置されたセンサーやあらゆるサービスによって、お客様のデータを取得します。これまではスタッフ1人1人の接客で得ていたお客様情報を、より効率的に集められるのです。

例えば、お客様が店内で試着した商品、好みのカラーやデザインなどの情報を収集し、その情報を活かした接客を提供することができます。また、これまでの購買履歴や嗜好データを分析することで、お客様により適した商品の提案もできるようになるでしょう。

IoTを活用してよりカスタマイズされた接客が実現できれば、顧客満足度の向上につながります

店舗の業務効率化・コスト削減につながる

IoTを活用することにより、店舗の業務効率化やコスト削減を実現することも可能です。

例えば、電子タグによって商品の在庫管理が自動化されれば、従来それにかかる時間や労力を削減することができます。人的ミスを減らすことで在庫管理の精度が向上し、在庫過剰や在庫不足によるロスを減らすことにもつながるでしょう。また、スマートクローズハンガーでは顧客が知りたい情報を接客なしで提示できるため、店内のスタッフ配置を抑えることが可能です。

これらの効果によって店舗のコスト削減や利益向上につながるだけでなく、コア業務に時間を割くことができるようになります

アパレル店舗がIoTを導入する際の注意点

IoTでアパレル業界が便利になることは間違いありませんが、ただ単にIoT製品を導入すればいいわけではありません。効率的にIoTを導入するためには、以下を意識することが大切です。

  • セキュリティ対策に気をつける
  • 現場の理解を得ずに導入しない
  • すべてをインターネットに頼ろうとしない

これらの注意点に気をつけることで、失敗のリスクを最小限に抑えながらIoTを導入することができます。では、それぞれ詳しく見ていきましょう。

セキュリティ対策に気をつける

アパレル店舗がIoTを導入する際には、セキュリティ対策に気をつけることが大切です。IoT導入店舗ではセキュリティ対策をしっかりと行わなければならないことが総務省でも義務付けられているため、必ず確認しておきましょう。

今後、IoTが今よりも普及し、顔認証や個人のスマートフォンを介して個人情報がより手軽に取得できるようになると考えられています。店舗の入り口で個人を特定し、1人1人に合ったサービスを提供できるようになる時代が訪れるのです。すると、今よりも多くの個人情報を扱うことになります。中にはお客様個人を特定できるものもあるため、情報漏洩は絶対に避けなければいけません

「NeoFace」を活用すれば、大まかな属性のみならず、個人を特定することが可能になります。この情報を店舗で活用するためには、個人情報への配慮が必要になるため本人の同意が前提になりますが、入り口で顧客を特定したら、その個人に適した対応を心掛ける、あるいは店頭のサイネージを個人の好みに合わせたコンテンツに切り替えるといったサービスができるようになります。

アパレル業界におけるAI、IoT活用のすすめ ~店舗における顧客の行動把握を実現~|ERP NAVI

データの暗号化やセキュリティシステムの導入、アクセス制御などを活用し、セキュリティ対策は徹底的に行いましょう。自社でのセキュリティ対策に自信がない場合には、専門家に依頼するのもおすすめです。

現場の理解を得ずに導入しない

IoTを導入する際、現場のスタッフが理解していないまま導入すると、生産性が低下することがあります。特に新しいシステムを導入する場合は現場のスタッフの負担になることもあるため、注意しましょう。

混乱を招かないためにも、導入前にスタッフに説明を行い、その上で質問や意見を聞くことが重要です。本部と現場での認識のズレが生じないよう、導入するシステム自体の説明や使い方だけでなく、IoTの重要性や導入の目的なども共有する必要があります。

IoTの導入は決して経営陣のみで判断せず、現場の理解を得た上で決定してください。

すべてをインターネットに頼ろうとしない

IoTを導入することで業務の効率化を図ることは重要ですが、すべてをインターネットに頼ろうとすることは避けるべきです。

特にアパレル業界の場合、スタッフとの会話を楽しみに来店するお客様も珍しくありません。インターネットに依存しすぎてしまうと本来大事にすべきものを見失い、お客様が離れてしまう可能性があります。すべてをインターネットによる効率化に頼らず、頼るところは頼りながら浮いたリソースをコア業務に割き、多くの人に愛される店舗を目指しましょう。

また、IoTの意味や目的を理解しきれていなければ、インターネットにつなげたところで、課題の解決にならなかったり、思うような効果があげられなかったりします。目的に応じて、どこをシステム化するべきか、どこをアナログでカバーすべきかを決めておくべきです。

IoTの導入で効率的な店舗運営が可能に

本記事では、アパレル業界におけるIoTの事例を紹介しながら、IoTの普及によってアパレル業界がどう変化していくのかを解説しました。

アパレル業界のIoTには、ユーザーの利便性が向上する、データを活かした接客ができるようになる、店舗の業務効率化・コスト削減につながるなどのメリットがあります。さまざまな業界でIoT化が進む中、さまざまなシステムやIoTサービスを導入するアパレル店舗もどんどん増えていくでしょう。

ただし、IoTといってもただ単にいろいろなものをインターネットにつなげれば良いわけではありません。導入による効果や目的をはっきり理解した上で、導入を進めることが重要です。セキュリティ対策を行うことや現場の理解を得ることも欠かさないようにしましょう。

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