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マーチャンダイジング(MD)の5適とは?定義やアパレルにおける成功事例を解説!

2020/11/27

マーケティング

マーケティングにおける必須の考え方の1つとされる「5適」。5適について多くの人が知りたいのは、以下のような点でしょう。

この記事では、上記4つのポイントを中心に5適とは何かを解説していきます。5適だけでなく、マーチャンダイジング(商品制作)について知りたいという方にも、きっと役立てていただけるでしょう。

(マーチャンダイジングについては、下の記事で詳しくまとめています)

5適とは?マーチャンダイジング(MD)の基本5要素

マーケティング

5適とは「適品・適時・適所・適価・適量」のことです。それぞれの意味を表でまとめると、下のようになります。

5適意味
敵品最適な商品を、
適時最適な時期に、
適所最適な場所で、
適価最適な価格で、
適量最適な量で売る

上記の5適は、マーチャンダイジング(商品政策)の基本です。そのため、マーチャンダイジングの5適(MDの5適)と呼ばれます。

また、5適は時に、サービス展開 / 提供戦略が効果的かどうかを図るフレームワークとしても利用されます。

英語版の5適

英語で5適は「five rights」といいます。各単語を一覧にすると下のとおりです。

5適英語日本語
敵品Right Productプロダクト
適時Right Timeタイム
適所Right Placeプレイス
適価Right Priceプライス
適量Right Quantityクオンティティ(量)

参考Five Rights to Merchandising | biz fluent

なお、5適に「適サービス」を加えて「MDの6適」とすることもあります。ただ、サービスを「商品=適品」と分類する場合は5適です。

5適の順番は?販売計画を立てる5つのステップ

マーケティング

5適をどのような順番で考えるべきかはケースバイケースです。特に多いパターンとしては、下記の順番で考えます。

5適この順番になる理由
①適時計画なので「いつ」が最初に来る
②適所販売は、必ずどこかの場所=販路で行う
③適品「いつ、どこで」が決まれば、売れる物も自ずと決まる
④適価ここまでで値段も自動的に決まる(価格破壊を起こす場合は例外)
⑤適量ここまでで、売り切れる適量も目安がつく

「なぜこの順番なのか」を説明していきます。

適時

計画なので「いつ」が最初に来ます。

  • 最速で、いつからできるのか
  • 最遅で、いつまでにやらなければいけないのか
  • そもそも、イベントなどで時期が最初から固定されているのか

上記のような要素を考慮して、最初に時期を決めます。

適所

販売は、必ずどこかの「場所」で行われる。たとえば下記のような場所です。

  • 小売店
  • ECサイト
  • 露店
  • 個人のネットワーク

「個人のネットワーク」が好例ですが、場所とは特定のスペースとは限らず、販路を指すこともあります。今では減っていますが、昔のマルチ商法は個人のネットワークを中心として、商品を売っていました。

適品

売り場

「いつ・どこで」売るかが決まれば、商品が自動的に決まります。「いつ」の典型例は夏物・冬物です。他にも、ギフトやイベントの時期であれば、それに合わせた商品が売れます。

「どこで」は、特に商品の高級度を左右します。ショッピングセンターで売るなら、廉価品になり、デパートで売るなら高級品になります。学生街で売るなら若者向けの商品、ビジネス街で売るならビジネスマン向けの商品、という具合です。

このように、適品は「適時・適所」が決まったら、自動的に決まるものです。

適価

「いつ、どこで、何を」売るかが決まれば、おおよその値段も自動的に決まります。「この場所で、この時期に、このクオリティなら、この値段だろう」という相場から価格を考えるのが、わかりやすい1つのやり方です。

原理は簡単ですが、この相場を出すにも、データの収集が必要となるケースがあります。上記の「場所・時期・クオリティ」が共通する事例を集める必要があるためです。

リサーチが不要なケース

お祭りの屋台などは、何十年にも渡る「事例」が積み重なっているため、リサーチをする必要はほぼありません。同じように「ごく当たり前の相場」がすでにできあがっているケースでは、リサーチは不要になります。

基本的に、上記のリサーチが不要になるほど旧態依然とした業界は、新規参入が難しいとされます。このような分野で「常識を覆す」には、マーケティングからアプローチするより、技術や製品といった「プロダクト」からアプローチするべきです。

(ただし、そのプロダクトも「今は見えていない5適」を実現する必要があります。ゴッホや石川啄木のような芸術家になるわけではないため、「いいもの」の定義は、あくまで5適から考えるべきです)

相場を無視するべき場面

一般的に適価とされる、相場を無視するべき場面もあります。いわゆる価格破壊です。適価には、下記の2種類があります。

周りに合わせる適価前述の相場から考える
周りに合わせない適価「自社が利益を出せる価格」で考える

周りに合わせない価格破壊は、一般的には「格安・激安」を実現しますが、真逆もあります。「驚くような高級品」が、逆に売れることもあるわけです。あるいは、売れなくとも話題を呼び「広告宣伝費」として回収できるケースもあります。

適量

「いつ、どこで、何を、いくらで」売るかが決まれば、量も自動的に決まります。特に「いくらで」は、大量の仕入れや生産によって価格が変わるため、量と密接に関わる部分です。

「いつ」は、ギフトやイベントの商品であれば、その時期で売りきらなければいけません。これも量と密接に関わります。

ただ「表面だけ変えて、来年のイベントに使える」という作り方をする場合など、融通を効かせる方法もあります。「今まで毎年廃棄せざるを得なかった」ものを廃棄せずに済んだら、革新的な技術となる可能性もあるでしょう。

「どこで」が適量と関わるのは、店舗や倉庫のスペースです。当然ながら、店舗や倉庫の限界を超える量は売れません。ハイスピードで回転させるにしても「いつまで」という期間が決まっているため「○○回転」という限界があります。特に、露天商や屋台などは、毎日の販売の適量が最初から決まっています。

アパレル業界におけるMDの5適とは?具体例のまとめ

マーケティング

アパレル業界では、MDの5適で以下のようなことを考えます。

5適考える内容
適時シーズンやイベント
適所販路選択、店舗選択、陳列位置など
適品カテゴリ、ブランド、商品自体(色・サイズなど)
適価収益性、競合との比較など
適量メーカーへの発注、倉庫や店舗間の在庫移動など

それぞれ詳しく解説していきます。

参考詳細データから消費トレンドを読むアパレルのシステム | @IT

適時

アパレルの適時は、主にシーズン・イベントの2通りで考えます。

シーズン春・夏・秋・冬・梅雨
イベント成人式、卒業、入学、父の日、母の日など

昨今は、気候変動の影響で「シーズン」の部分の予測を立てにくくなっています。夏日や冬日にあるのが早い、あるいは遅いということです。このような変動があるとき、

  • 「消費者は、実際に気温が変わるまで買わない」と考えるか、
  • 「気温に関係なく、月が変わった時点で買う」と考えるか

は企業や店舗によって分かれます。「気温が変わっても、売れるピークや売れ終わりは変わらない」という専門家の指摘もあります。

参考MD戦略の見直しは簡単ではない! | MSMD&Co.Ltd

適所

適所について考えるのは、以下のような内容です。

販路店舗、インターネット、カタログなど
店舗自社内のどの店舗か、他社のどんな店舗か(デパートやショッピングセンターなど)
陳列どのフロア、どの棚、どの位置など

先ずは、販売を行うチャネルを考えるとよいでしょう。ECで出品するのか、路面店で販売するのかその2つによっても販売戦略はおおきく異なります。

最後の「陳列」の段階になると、マーチャンダイジングの中でもビジュアル・マーチャンダイジング(VMD)というジャンルになります。VMDについては、当サイトのマーチャンダイジングの記事こちらの段落で解説しています。

適品

適品では以下のようなことを考えます。

カテゴリレディース、メンズ、ヤング、シニア、スポーツ、作業着など
ブランド有名ブランド、新興ブランド、自社ブランド(PB)など
商品自体素材、柄、色、サイズなど

店舗を構えるときには、この部分を最初に考えることが多いでしょう。先に適価や適所から入り、上記を考えて開業することもあります(この値段やこの場所で売るから、こういうお店にするという考え方)。

順番はともあれ、開業では上記の「適品」の大枠を決めた時点で、店舗が誕生するといえます。一方、すでに店舗や企業があって、何らかの企画を行うときには「適時」が最初に来ます。

適価

適価では、以下のようなことを考えます。

  • 粗利を十分に確保できるか
  • 粗利は低くても、多売によって成功できるか
  • 競合の売価と比較して適切か

上記は一例であり、最終的には顧客の立場に立って考えます。価格設定の成功事例は、アパレルでいうとディスカウント路線のしまむらや、高級路線の海外ブランドなどが、わかりやすい例です。

逆に「中途半端で大きな成功を収めにくい」あるいは「成功例があってもわかりにくい」のが中間の価格帯(中価格帯)です。中価格帯の販売や商品開発の事例については、下の記事で詳しく解説しています。

適量

適量では、以下のようなことを考え行動します。

  • メーカーへの発注
  • 倉庫からの在庫移動
  • 店舗間の在庫移動

上記の作業は、一言でいうと「在庫管理」です。在庫管理を的確に行うために役立つ指標にSKU(ストック・キーピング・ユニット)があります。SKUについては下の記事で詳しく解説しています。

5適の成功事例3選(ZARA・ユニクロ・トヨタ)

マーチャンダイジングの5適を工夫して成功した事例では、下記の3例が有名です。

社名事例概要
ZARA企画デザインから店頭投入まで最速2~3週間
ユニクロSPA(製造小売)でコスト削減だけでなく5適を実現
トヨタジャストインタイム制で「必要な時に、必要な物を供給」

以下、それぞれ詳しく紹介していきます。

ZARA:企画デザインから店頭投入まで最速2~3週間

ZARA出典:ZARA

世界有数のファッションブランドであるZARAは、特に「適時・適品・適量」を極めています。現場で店舗スタッフが売れ筋を把握し、その情報を元にデザイナーがすぐに新しい服を生み出すのです。

このデザインから店頭投入までのサイクルは、最短で2~3週間。たとえば7月1日の時点で「この夏の売れ筋」を現場で把握したら、それに合わせてデザインした新商品が、7月15日には店頭に並んでいるのです。

これは「適時」であることはもちろん「適品」でもあります。何が良い品かを「現場の顧客の反応」から導き出しているためです。

ZARAの製品は毎回少数しか作らないため、すぐに売り切れます。在庫を抱えないという点で、適量といえます。

「少量しか作らないなら、売り切れるのは当たり前なので、適量というほど考え抜いたわけではないのでは?」と思うかもしれません。しかし、ZARAでも大量の売れ残りが発生した事例が各国であるとされ、適量についてもある程度考えられているといえます。

「適価」については、ZARAは値決めで勝負しているわけではなく、「適所」についてはZARAの店舗で売るのが基本です。これらも全体の経営計画の中では考えられていますが、他社との決定的な違いではありません。決定的な違いは「適時・適品・適用」です。

ユニクロ:SPA(製造小売)でコスト削減だけでなく5適を実現

ユニクロ出典:ユニクロ

ユニクロの業態はSPA(製造小売業)です。従来別々だった製造業と小売業を合わせたもので「自ら作って自ら売る」という業態です。小さな飲食店は皆そのようにしていますが、同じことを大企業がやったことが特徴といえます。

ユニクロがSPAで達成したこととして、多くの人が連想するのは「コスト削減」です。しかし、ユニクロはSPAによって5適も実現しています。

これはZARAも同じですが「自ら作って自ら売る」ことで、

  • 5適がわかりやすくなった
  • わかった後、それを満たしやすくなった

のです。まず「満たしやすくなった」の方が、わかりやすいでしょう。自分で作っているので、消費者の動向に合わせた生産体制を整えやすいのです。ZARAほど早くなくても、たとえば今年は暖冬になるから、セーターの適量が少なめになるなどの予想ができ、生産体制も合わせやすくなります。

これを他社(工場)に発注していると、工場側の需要も考えなくてはなりません。そのため、シビアな適量での注文ができないのです。SPAだとそのような複雑な「事情」が減り、5適をシンプルに追求できます。

そして、5適を考えた結果がすぐに現場でわかるため、仮説検証のサイクルを回しやすいのです。これが「5適がわかりやすくなった」ということです。つまり、

  • 自分で作るから「5適のテスト」をどんどんできる
  • 結果、5適がよくわかる
  • また次の(精度が高い)テストをできる

という好循環が生まれます。もちろん、SPAの体制を整えることは決して楽ではありません。業界によっては「そもそも不可能に近い」ということもあります。

たとえば、おもちゃメーカーでSPAを実践しているところはありません。タカラトミーやバンダイなど、すべて製造業に徹しています。アンテナショップを数店舗持っている程度です。

ユニクロやZARA以前には、アパレルでもSPAがありませんでした。そのため、おもちゃでもSPAができる可能性はあります。確かなことはSPAにすれば5適は実現しやすくなるが、SPAに乗り出すこと自体が難しいということです。

(ただし、冒頭にあげた個人の飲食店などは別です。こうした店舗でしっかりしたところが「意外に成功している」のは、5適を無意識に実践できているから、という可能性があります)

参考ユニクロとZARAに学ぶ「情報」を軸にしたビジネスモデル構築 | 宣伝会議

トヨタ:ジャストインタイム制で「必要な時に、必要な物を供給」

トヨタ出典:トヨタ自動車75年史

5適を世界の中でも早い時期に徹底したのがトヨタです。「必要なものを、必要なときに、必要な数だけつくる」というジャストインタイム(JIT)を掲げ、無駄のない生産管理を実現しました。この考えはまさに「適品・適時・適量」です。

トヨタは製造業ですが「適所」はあります。「どこで売るか」ではなく「どこで作るか」を考えるわけです。

戦後のトヨタは、当時の常識を破る大規模な工場の建設を進めました(元町工場など)。大規模な工場をつくるには広い土地が必要です。広い土地は必然的に田舎になります。

このとき、トヨタは「うちの商品は自分で走るからいい」と、田舎であることを何ら問題視しなかったといいます(昔の車は今のようなキャリアカーがなかったため、自走で店舗に並べていました)。車がほとんどない時代「商品が自分で走る」ということは、画期的なことだったのです。

製造業に5適の発想がないと、ガラパゴス化する

日本の製造業が、ここ10年ほどで世界に後れをとってしまったのは周知のとおりです。その中で世界でのトップ争いを続けているのがトヨタです。

衰退してしまった製造業の各社とトヨタの違いは「5適」の視点があったかどうかといえます。特に日本の家電メーカーには「適所」の発想が欠けていました。

「売る場所=国内」という発想を抜け出せず、新興国も含めて全世界に売るサムスンやファーウェイなどに後れをとってしまったわけです。これは「廉価品を売らなかった」という点で「適価」の見誤りでもあり、日本人もそもそもガラケーの高機能を必要としていたか不明という点で「適品」の見誤りでもあります。

まとめ:5適を考えるには高機能なクラウドシステムが不可欠

マーケティング

5適はある意味「当たり前」のことです。「最適な時に、最適な物を…」という考えが大切なことは、誰もがわかっているでしょう。しかし「実際に行うのが難しい」というのが5適です。

5適を実現するには、緻密なデータ管理・データ分析が不可欠。その管理と分析は、高機能なクラウドシステムを導入することで、格段に実行しやすくなります。

高機能なクラウドの中でも、アパレル店舗の運営であれば「アパレル特化型」のシステムを使うことで、業務がよりスムーズになります。アパレル特化型の高機能クラウドシステムでは、当社が提供している『アパレル管理自動くん』が代表的なサービスの1つです。

同じくアパレルに特化したPOSである『アパレル管理自動くんPOSレジ』と合わせてお使いいただくことで、5適のデータをリアルタイムで収集・管理・分析できます。アパレル事業で5適を実現する上で、どちらのサービスもお客さまの事情に対して、大きなプラスとなれるでしょう。

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